税理士事務所で働いていて「辞めたい」と思ったとき、次に何を調べるかで話が変わります。
求人サイトを開くのか、退職の伝え方を調べるのか、それとも試験の日程を見るのか。
同じ「辞めたい」でも、背景にあるものが違えば、対応する手段が変わります。
この記事は辞めるかどうかを決める記事ではありません。
辞めたいと感じた段階で確認できる選択肢を並べ、自分の理由がどれに当たるかを仕分けるための入口として書いています。
それぞれの詳しい中身は個別の記事にまとめてあるので、該当するものから読み進められる形にしました。
税理士事務所の退職理由を示すデータは確認できていない
退職理由の内訳を示す出典が見つからない
当サイトで調べた範囲では、税理士事務所(個人事務所・税理士法人を含む)に勤務する人が何を理由に辞めているかを、集計の対象と件数を明示して示した調査データは見つかっていません。
「繁忙期がつらい」「給与が上がりにくい」といった説明は各所に見られますが、実施主体や回答者数が確認できるものはありませんでした。
そのため、この記事では「辞める人が多い」とも「辞める人は少ない」とも書きません。
確認できない見通しを判断の前提に置かないという方針で進めます。
数字が添えられた説明のほうが読んでいて納得しやすくなりますが、出所が確かめられないものを根拠に職を変えると、後から前提が崩れます。
公認会計士を対象にした調査は母集団が違う
会計・税務の領域には、公認会計士および試験合格者を対象にした調査があり、転職意向や離職のきっかけの内訳が公表されています(出典: アカウントエージェント株式会社「公認会計士及び試験合格者の転職に関する実態調査」n=312、2026年5月)。
会計領域の数字として引用されることが多いものです。
ただし、この調査の対象は公認会計士と試験合格者であり、税理士事務所に勤務する人と同じ母集団ではありません。
監査法人と税理士事務所では、勤務先の規模も、業務の周期も、担当する相手も違います。
数字が存在するからといって別の集団の理由に転用すると、根拠のない前提を置くことになります。
監査法人の側の話は、その対象に限って監査法人を離れるタイミングはいつかで扱っています。
確認できるのは資格者側の人員構成
税理士の登録者数は2026年6月末時点で82,297人です。
年齢構成は60代以上が53.6%(70代以上は27.9%)を占める一方、20代は0.6%、30代は10.3%にとどまります(出典: career-adv.jp)。
これは登録している税理士の構成であり、事務所で働く人全体の構成ではありません。
それでも、資格を持つ若手が人数として少ないという事実は、事務所の人員の動きや、担当を引き継ぐ相手がいるかどうかという日常の運用に関わります。
資格別の市場の状況は士業・会計の転職市場はいま?にまとめています。
「辞めたい」を先に分解する
事務所を辞めることと、税務の仕事をやめることは別
いまの事務所を離れることと、会計・税務の仕事から離れることは、別の判断です。
ところが、どちらも同じ「辞めたい」という言葉で頭に浮かぶため、区別されないまま結論に進みやすくなります。
先に分けておくと、選べる範囲が変わります。
分けたうえで並べると、選択肢は少なくとも4つに整理できます。
繁忙期の負荷か、通年の状態か
税務の仕事には、申告期限に沿った周期があります。
特定の時期に集中する負荷と、時期に関係なく続いている状態では、性質が違います。
前者であれば、事務所の規模や顧問先の構成が変わることで状況が変わる可能性があります。
後者であれば、事務所を変えても同じ状態が別の場所で再現します。
どちらなのかは、繁忙期を外れた時期に振り返ると判別しやすくなります。
資格の進捗と勤務が絡んでいることがある
税理士試験は科目ごとに合格が積み上がる方式です。
全科目を取り終える前の段階が数年続くため、勉強と勤務の両立が前提になります。
受験者数は令和6年度に4年連続で増加し、合格率は16.6%で前年の21.7%から低下しました(出典: 日税ジャーナルオンライン)。
受験者数自体は2015年度の約3.8万人から2020年度に約2.6万人へ減った後、受験資格の緩和を経て回復基調にあります(出典: マイナビ税理士)。
取り終える前の段階にいる人が一定数いるという構造は、辞めたいという気持ちの中身にも関わります。
勉強が進まないことが理由なのか、業務そのものが理由なのかで、対応する手段が変わるためです。
辞める前に確認する4つの選択肢
①事務所を変える
税理士事務所と一口に言っても、個人事務所、少人数の事務所、税理士法人では、担当する顧問先の数も、業務の分担も、繁忙の出方も変わります。
人数の多い法人では特定の分野を深く担当する形になりやすく、少人数の事務所では一人が広い範囲を見る形になりやすい構造です。
担当量や人間関係が理由であれば、この範囲で状況が変わる可能性があります。
事務所側の入口の条件は未経験から士業事務所に入れる?、規模による書き分けは税理士法人と個人事務所で志望動機はどう違う?にまとめています。
②資格取得のペースを見直す
「資格を取り終えてから動く」と決めている場合、その前提自体を検討の対象にできます。
科目合格の段階を対象条件に含むサービスは実際に存在し、資格ではなく実務経験を条件に置くサービスもあります。
資格が途中だから動けない、という前提は、条件の文面を読むまでは確定しません。
確定していない前提のために、辞めたい状態を延長していないかを一度確かめる価値があります。
対象条件の読み方は資格取得前でも転職エージェントは使える?で扱っています。
③行き先の選択肢を知る
事務所の外にどんな行き先があるかを知らないまま辞めると、選べたはずの候補が視界から外れます。
会計・税務の職歴からつながる行き先は、事業会社の経理・財務・経営企画、コンサルティング、投資領域、他の事務所、独立の5つに整理できます。
行き先によって、求められる材料も、探す場所も変わります。
5つの内訳は監査法人・税理士事務所を出た後のキャリアパスを5つに整理にまとめています。
企業側の経理に移る場合の見方は資格なしで経理として転職できる?で扱っています。
④資格そのものの範囲を確認する
税理士・公認会計士・弁護士・司法書士は、それぞれ独占業務の範囲が違います。
いま進めている資格が、自分がやりたい業務に対応しているかを確認しないまま勉強を続けている場合があります。
資格ごとの業務範囲は税理士・会計士・弁護士・司法書士の違いは?で整理しています。
ここを確認すると、②で出した結論が変わることもあります。
自分の理由をどの選択肢に対応させるか
「別の事務所なら変わりうるか」で仕分ける
4つを並べても、自分がどれに当たるかが決まらなければ進みません。
仕分けは、いまの不満を書き出し、それぞれについて「別の事務所なら変わりうるか」を可否で判断する形で行います。
所長の方針、担当している顧問先の数、繁忙期の勤務、受験への配慮の有無は、事務所が変われば変わりうる項目です。
一方で、顧問先とのやり取りそのものが負担、申告書を作る業務自体が合わないといった項目は、事務所を変えても残ります。
可否で分けると、①で足りるのか③まで含めるのかが決まります。
理由が複数あるときは順位をつける
書き出すと、たいてい理由は一つではありません。
給与も勤務時間も人間関係も、という状態が普通です。
すべてを同時に解決しようとすると条件が絞り込めず、求人を見ても判断ができなくなります。
1番目に変えたい項目を一つ決めると、求人を見る基準が固定されます。
給与が1番なら提示額と賞与の記載を、勤務時間が1番なら残業の記載と繁忙期の扱いを先に読む、という形です。
求人票のどこに何が書かれているかは求人票のどこを読むかにまとめています。
繁忙期の最中に結論を出さない
負荷が高い時期に判断すると、①で足りる話を③や④として処理してしまうことがあります。
逆に、落ち着いた時期に振り返って同じ結論になるなら、時期による揺れではないという確認が取れます。
これは判断を先送りにするという意味ではありません。
動く準備は進めながら、結論だけを時期をずらして確かめるという進め方ができます。
辞めると決めていなくても進められること
求人を見て条件の相場を知る
決めていない段階でも、求人を見ることはできます。
自分の地域、自分の経験年数、自分の科目合格の状況で10件ほど開き、提示されている給与、残業の記載、担当する顧問先の規模、受験への配慮の有無を並べます。
この作業をすると、いまの事務所の条件が相場と比べてどうなのかが分かります。
辞めたいという気持ちの何割が条件の問題なのかが、数字で見えるようになります。
応募も面談も必要ない段階なので、在職中でも進められます。
手順は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。
担当した業務を工程と規模で書き出す
「法人税の申告を担当」とだけ書くと、どの行き先にも判断材料になりません。
関与先の業種と規模、月次と年次のどちらに深く関わったか、記帳から申告までのどの工程を担当したか、レビューを受ける側だったのか確認する側だったのかまで分けて書き出します。
この書き出しは①③のどちらを選んでも使えます。
順序は職務経歴書はいつ作ればよいかに、税理士側で見られる経験の読み方は税理士の転職で見られる経験は何かにまとめています。
退職を伝える段取りは別に考える
辞めると決めた場合でも、伝える順序と時期は別の検討事項になります。
担当している顧問先の引き継ぎがあるため、時期の調整が必要になる場面もあります。
伝え方と、引き止めにあったときの対応は退職はどう伝える?にまとめています。
在職中に活動を進める場合の時間の作り方は在職中の転職活動はどう進める?で扱っています。
選択肢によって使うサービスの範囲が変わる
4つの選択肢は、探す場所も変わります。
①は会計業界向けサービスの守備範囲に収まりますが、③はその外側に出ることがあります。
当サイトが扱う士業・会計向けサービスは13件で、対象としている職務がそれぞれ違います。
会計業界に留まる場合
①を選ぶ場合、税理士・会計業界に特化したサービスが候補になります。
ミスマッチの無い税理士・会計業界の転職ならミツプロは登録型で、対象ユーザーは24歳〜49歳、かつ税理士・税務スタッフ・会計士としての実務経験が1年以上ある方と示されています。
ゼイキャリは面談実施型で、対象年齢は24歳〜45歳、勤務希望地は東京・神奈川・埼玉・千葉・京都です。
対象年齢と地域は文面のまま読める条件なので、最初に片付けられます。
地域の内訳は地方で税理士・公認会計士・経理の転職はできる?にまとめています。
事業会社の経理に移る場合
③のうち事業会社を選ぶ場合、経理・財務を対象に含むサービスが候補になります。
経理特化の転職エージェントなら経理Jobsは申込型で対応地域は全国、対象ユーザーは55歳以下・経理経験半年以上・正社員勤務を希望する方と示されています。
経理・財務が評価される企業への転職なら/BEET-AGEは登録型で、対応地域は埼玉・千葉・東京・神奈川、対象は20代〜40代です。
条件に置かれているのは資格の保有ではなく、実務経験と年齢の範囲です。
ただし、書かれていないことは「不要」を意味しません。
管理部門としての職務の切り分けは経理・人事・総務、転職の探し方は違う?で扱っています。
まだ決めきれていない段階
①か③かを決めきれていない段階では、会計領域を横断して対象にするサービスが候補の幅を保ちます。
ツインプロは面談実施型で対応地域は全国、対象年齢は24〜49歳です。
対象として会計士・経理・財務・税理士・税理士スタッフ・会計士スタッフ・監査法人スタッフが挙げられています。
ヒュープロも面談実施型で、対応地域は全国です。
まず登録型で求人の傾向を見て、比較の基準ができてから面談型に進むという順番であれば、繁忙期と面談が重なる負担を避けやすくなります。
ジャスネットキャリアとBEET-AGENTはいずれも登録型で、対応地域は全国です。
方式ごとの違いは士業・会計の転職は登録型が中心?にまとめています。
なお、ハイスタ会計士とハイスタ税理士は当サイトのデータでは購入型に分類されており、求人紹介型のサービスとは進み方が異なります。
費用が発生するものは求人紹介とは別の仕組みとして分けて考えます。
違いは転職支援はすべて無料?で扱っています。
まとめ
- 税理士事務所勤務者の退職理由を示す、出典の確認できる調査データは見つかっていない
- 公認会計士を対象にした調査は母集団が違うため、税理士事務所の理由として転用しない
- 確認できるのは、税理士登録者の**60代以上53.6%**という人員構成と、受験者数の推移
- 「事務所を辞める」と「税務の仕事をやめる」は別の判断で、選択肢は事務所を変える・資格のペースを見直す・行き先を知る・資格の範囲を確認するの4つ
- 不満を書き出し、「別の事務所なら変わりうるか」を可否で判断すると、どの選択肢に当たるかが決まる
- ①は会計業界向けサービスの範囲、③は範囲の外に出ることがある



