書類に書く志望動機と、面接でその場で答える内容は、準備の仕方が違います。
書類は提出前に推敲できますが、面接では答えたあとに担当した案件の中身を掘られます。
この記事が扱うのは後者、口頭で聞かれたときの答え方です。
書類として書く志望動機の組み立て方は税理士法人と個人事務所で志望動機はどう違う?にまとめており、この2つは対になります。

職種を問わない面接の型は転職面接の準備で扱っています。
ここでは、士業事務所と会計事務所の面接で実際に出てくる、実務と資格に関する質問に絞ります。

士業・会計の面接が実務の話になりやすい理由

面接官が所長やパートナー本人になることが多い

所属人数の少ない事務所では、採用の面接に所長が直接出てきます。
人事部門を通さずに現場の責任者が話す形になるため、質問は入所後に任せる業務の話へ早い段階で移ります。

一般的な選考のように、志望動機を長く述べる時間が取られないこともあります。
担当できる範囲を答えられるかどうかが、面接の大半を占めます。

経験の単位が「担当した顧問先の件数」になる

同じ「税理士事務所で3年」でも、担当していた顧問先の数と業種が違えば、扱ってきた業務は変わります。
年商規模が小さい法人を多く持っていた場合と、数社を深く担当していた場合では、身についている作業も別です。

そのため面接では、件数、業種の構成、法人と個人の比率が確認されます。
この3点は答えの材料として最も再利用しやすく、多くの質問に使い回せます。

資格者の年齢構成が、任される範囲の背景になる

税理士の登録者数は2026年6月末時点で82,297人で、年齢構成は60代以上が53.6%を占める一方、20代は0.6%、30代は10.3%にとどまります(出典: career-adv.jp)。

若い層が薄い構成であることは、早い段階から幅広い業務を任される事務所がある背景として読めます。
ただし、これは業界全体の数字であり、個々の事務所の方針を示すものではありません。
面接で「若手が少ないから任せてもらえるはず」という前提で話すと、実態とずれます。

守秘義務の中で経験を説明する

顧問先を特定できる情報は口頭でも出さない

面接で担当案件を説明するとき、顧問先の名称、取引の詳細、申告の具体的な数字は出せません。
これは書類でも面接でも同じです。

代わりに使うのは、業種、法人か個人か、おおよその規模、担当した工程という単位です。
特定できない形に置き換えたうえで、自分が何をしたかを話すという組み立てにします。
この線引きができているかどうか自体が、面接で見られる部分でもあります。

前の事務所の内情も話す対象にしない

事務所の運営方針や所長の判断について評価を述べると、次の事務所でも同じことをすると受け取られます。
同じ地域の士業事務所は互いに顔見知りであることもあり、扱いにくい情報になります。

退職の理由を聞かれた場合も、事実を1文で述べ、そこから何を考えたかに話を移します。
理由の組み立て方は税理士事務所を辞めたいと感じたらで扱っています。

事例は業務手順の説明にとどめる

判断に迷った案件について聞かれることがあります。
ここで求められているのは処理の正解ではなく、誰に確認し、どの順序で進め、記録をどう残したかという手順です。

税務や法律の解釈そのものを面接の場で断定する必要はありません。
確認した相手と手順を答えられるほうが、事務所としては扱いやすいと映ります。

よく聞かれる質問と、質問の意図

6つの質問と、それぞれの確認事項

士業事務所の面接で出やすい質問を、何を確かめようとしているかとあわせて並べます。
裏側にある目的が分かると、答える方向がぶれなくなります。

質問 確認されていること 答えの軸
担当していた顧問先は何件か 業務量の感覚が合うか 件数と業種の構成を数字で
使っていたソフトは何か 入所後どこから任せられるか 会計・税務・給与の各ソフト名
決算や申告はどこまで担当したか 工程のどこを引き渡せるか 単独で完了させた範囲の線引き
資格の進捗はどうなっているか 学習と実務の両立の見通し 合格科目と、次の受験予定
繁忙期はどう働いていたか 時期による業務量への対応 担当件数と、進め方の工夫
独立の予定はあるか 在籍の見通し 現在の考えを事実として

軸を決めておくと、質問の順番が入れ替わっても答えが崩れません。
事務所ごとに聞き方は変わるため、一問一答で覚える形の準備は続きません。

使用ソフトの質問は経験の一致度を測っている

会計ソフト、税務申告のソフト、給与計算のソフトは、事務所ごとに採用しているものが違います。
同じものを使っていれば入所直後から作業に入れるため、実務的な確認として聞かれます。

使ったことがないソフトについては、使っていないと答えます。
そのうえで、同じ工程を別のソフトでどこまで担当していたかを添えると、置き換えの見通しが伝わります。
触ったことのないソフトを触れると答えると、入所後の割り振りで食い違いが起きます。

資格の進捗は「続けるかどうか」まで聞かれる

科目合格の段階にある場合、合格した科目と次の受験予定を分けて答えます。
「勉強中」だけでは現在地が伝わりません。

税理士試験の受験者数は令和6年度に4年連続で増加した一方、合格率は16.6%と前年の21.7%から低下しています(出典: 日税ジャーナルオンライン)。
科目合格の段階にいる人は業界内に一定数いるため、合格科目を挙げるだけでは他の応募者と区別がつきません。

受験を続けるのか、いったん実務に専念するのかも確認の対象になります。
試験前に休みを取る前提であれば、その希望を面接の段階で伝えておくほうが、後の調整が減ります。
資格取得前の動き方は資格取得前でも転職エージェントは使える?で扱っています。

独立の意向を聞かれたときの答え方

司法書士や税理士のように、開業という選択肢が一定の比重を持つ資格では、独立の予定を確認されることがあります。
司法書士の全国会員数は2026年4月時点で23,505人で、毎年約1,000人が新規登録し約700人が抹消しています(出典: サムライマガジン)。

独立を考えていること自体が不利になるとは限りません。
将来的な独立を前提に人を採る事務所もあります。
事実として現在の考えを述べ、当面どう働きたいかを続ける形にします。
出た後の進み方は監査法人・税理士事務所を出た後のキャリアパスにまとめています。

事務所の規模で想定される質問が入れ替わる

税理士法人は分野と分業への理解を聞かれる

複数の税理士が所属する法人では、法人税、相続・資産税、組織再編、国際税務といった分野ごとに担当が分かれていることがあります。
面接では、関心のある分野と、その分野で何を担当してきたかが中心になります。

あわせて、レビューを受けながら案件の一部を担当する進め方をどう捉えているかが確認されます。
1人で完結させる働き方に慣れている場合、この点に関する質問が入ります。

個人事務所は業務の幅と顧問先との距離を聞かれる

所長と数名で運営している事務所では、記帳の確認から申告、相談対応まで1人が扱う範囲が広くなります。
そのため、複数の工程をまたいで担当した場面を聞かれます。

顧問先の経営者と直接やり取りする機会も多いため、税務以外の相談を受けたときにどう対応したかが質問の対象になります。
「何でもやります」ではなく、実際にまたいだ工程を挙げるほうが答えとして成立します。
規模による違いは未経験から士業事務所に入れる?でも扱っています。

監査法人からの転職は離れる時期の説明を求められる

監査法人の退所想定時期は4〜5年目が最多で31%という調査があり、離れること自体は珍しい判断ではありません(出典: アカウントエージェント)。

同じ調査では、転職のきっかけとして「年収・待遇への不満」44.9%、「仕事内容・やりがいへの不満」43.6%、「キャリアアップ・スキルアップをしたい」40.4%が拮抗しています。
上位3つが接近しているということは、分類を答えても他の応募者と重なるということです。
分類ではなく、そう考えるに至った担当業務の状況を答えます。
時期の考え方は監査法人を離れるタイミングはいつかで扱っています。

事業会社の経理は決算の工程で聞かれる

事務所ではなく企業の経理に応募する場合、質問の単位が顧問先の件数から決算の工程に変わります。
月次決算を何営業日で締めていたか、年次決算と開示のどこまでを担当したかが中心です。

事務所と事業会社を併願する場合、この2種類の答えを別に用意しておきます。
事業会社側の探し方は資格なしで経理として転職できる?にまとめています。

入所後の体制はこちらから聞く

担当の持ち方と繁忙期の体制を確認する

入所後に何件を担当するのか、担当を単独で持つのか複数人で持つのかは、業務量に直結します。
求人票に記載がないことが多く、面接で確認する項目になります。

繁忙期の残業の実態、試験前の休暇の扱い、担当の引き継ぎ方も同じです。
募集の背景が増員か欠員かを聞いておくと、体制の実情が見えます。

資格手当と受験に関する制度は書面で確かめる

資格手当、科目合格ごとの支給、受験費用の補助といった制度は、求人票では「あり」とだけ書かれていることがあります。
金額と支給の条件は、内定後に示される書面で確認します。

面接で「制度はありますか」と聞くと、あるという答えで話が終わります。
支給の対象と時期まで踏み込んで聞くほうが、実態が分かります。
書面で見る項目は労働条件通知書の確認ポイントにまとめています。

資格ごとに入口が分かれている

士業・会計向けのサービスは、対象とする資格で細かく分かれています。
自分の資格に対応するサービスを選ばないと、求人一覧そのものが噛み合いません。

登録型は資格ごとに分かれている

当サイトのデータでは、NO-LIMIT、リーガルジョブボード、ジャスネットキャリア、BEET-AGENTなどが登録型として記録されています。
リーガルジョブボードは弁護士向けと司法書士・司法書士補助者向けが分かれており、対象資格ごとにサービスが立っている構成です。

会員登録の時点で求人を確認できるため、必須要件を読んで想定質問を作る作業にそのまま使えます。
応募したい規模の求人を10件ほど集めると、要件に並ぶ項目の傾向が見えます。
全体像は士業・会計の転職は登録型が中心?にまとめています。

面談実施型は選考の進み方を聞ける

求人票からは、面接が何回あるか、所長が直接出てくるかといった形は読み取れません。
当サイトのデータでは、ツインプロとヒュープロが全国対応の面談実施型、ゼイキャリが対応地域を限定した面談実施型として記録されています。

対象条件はサービスごとに違います。
ツインプロは対象年齢を24〜49歳とし、会計士・税理士・経理・財務および各スタッフ職を対象としています。
経理Jobsは申込型で、55歳以下かつ経理経験が半年以上ある方を対象としています。
対象に入っていないサービスに登録しても、紹介の段階には進みません。

対応地域を先に確認する

士業・会計向けには、全国を対象とするものと、特定の地域に絞ったものの両方があります。
地域を限定したサービスに登録しても、対象外の地域の求人は出てきません。

勤務地の希望が決まっている場合は、対応地域を先に読んでから登録します。
地域ごとの求人の出方は地方で税理士・公認会計士・経理の転職はできる?で扱っています。

まとめ

  • 面接の中心は資格の有無ではなく、担当した顧問先の件数と業種の構成
  • 顧問先を特定できる情報は口頭でも出さず、業種・規模・工程の単位に置き換える
  • 使用ソフトの質問は経験の一致度を測っており、使っていないものは使っていないと答える
  • 資格の進捗は合格科目と次の受験予定に加え、受験を続けるかどうかまで確認される
  • 税理士法人・個人事務所・監査法人・事業会社では、質問の中身そのものが入れ替わる
  • 求人票から質問を作るなら登録型、選考の進み方を聞くなら面談実施型と使い分ける