「業界未経験でも税理士事務所や司法書士事務所に入れるのか」という問いは、他業種から士業を目指す段階でよく出てきます。
ただし、この問いに数字で答えられる材料は限られています。
ここでは確認できていないことを確認できていないと明示したうえで、代わりに何を見れば判断できるのかを整理します。
未経験採用の実態を示す調査データは確認できていない
割合を示す出典が見つからない
当サイトで調べた範囲では、士業事務所が未経験者をどの程度採用しているかを示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
「未経験歓迎の求人は増えている」といった記述は各所に見られますが、調査の実施主体や対象件数が明示されているものは確認できませんでした。
そのため、この記事では「未経験でも入れる」「未経験では難しい」のどちらの立場も取りません。
根拠のない数字を並べるより、確認できる事実だけを示すほうが判断の役に立つと考えています。
断定された情報のほうが読んでいて安心できますが、出所が確かめられないものを前提にして職を変えると、後から前提が崩れます。
断定を避け、確認できることだけを扱う
一方で、確認できるものが二つあります。
一つは資格者側の人員構成に関する統計、もう一つは転職サービスが公開している対象条件です。
前者は業界がどういう状態にあるかを示し、後者はサービス側が誰を対象にしているかを示します。
どちらも「未経験者が採用されるかどうか」を直接答えるものではありません。
ただし推測を重ねるより、事実として確認できる範囲を先に押さえるほうが判断を誤りにくくなります。
以下では、この二つと、自分で確かめられる方法に絞って整理します。
確認できるのは資格者側の人員構成
税理士は60代以上が過半数を占める
税理士の登録者数は2026年6月末時点で82,297人です。
年齢構成は60代以上が53.6%(70代以上27.9%)を占める一方、20代は0.6%、30代は10.3%にとどまります(出典: career-adv.jp)。
資格者のうち若手層が薄いという構成は事実として確認できます。
ただし、これが未経験者の採用にどう結びつくかを示したデータはありません。
人員構成から採用方針を推測することはできるものの、それは推測にとどまります。
事務所ごとに規模も取扱分野も違うため、業界全体の数字がそのまま個々の募集に反映されるわけではありません。
司法書士は新規登録と抹消がほぼ均衡している
司法書士の全国会員数は2026年4月時点で23,505人です。
毎年約1,000人が新規登録する一方、約700人が登録を抹消しています(出典: サムライマガジン)。
自宅を事務所として開業する司法書士は約3割です(出典: studying.jp)。
新規登録と抹消の差は年間300人程度で、総数は緩やかにしか増えていません。
開業という選択肢が一定の比重を占める資格でもあるため、勤務先としての事務所の数がどう推移しているかは、この数字だけでは判断できません。
資格別の違いは弁護士と司法書士、転職市場はどう違う?で扱っています。
サービスの対象条件から未経験の扱いを読む
実務経験の年数を条件に置くサービスがある
当サイトで整理しているデータでは、ミツプロは登録型のサービスで、対象ユーザーが24歳〜49歳、かつ税理士・税務スタッフ・会計士としての実務経験が1年以上ある方と示されています。
経理Jobsは申込型で対応地域は全国、対象は55歳以下で経理経験が半年以上ある正社員勤務希望の方です。
年数が明示されているサービスでは、その年数に届かない段階では対象外になります。
条件に書かれた経験年数は、自己判断ではなく文面で確認できる情報です。
登録前に読んでおくと、対象になるかどうかで迷わずに済みます。
半年、1年といった年数の違いも、業界に入る順序を考えるうえでは意味を持ちます。
補助者を対象に含むサービスがある
リーガルジョブボードには司法書士・司法書士補助者向けの形があり、登録型で対応地域は全国です。
サービス名の時点で司法書士補助者が対象に含まれていることが示されています。
補助者は資格を持たない立場で事務所の実務に携わる職種です。
資格取得前の段階を対象に含むサービスが存在するという事実は、条件の文面から確認できます。
ただし、補助者としての採用で何が求められるかを示すデータは確認できていないため、そこから先は求人票で確かめる領域です。
資格取得前の使い方は資格取得前でも転職エージェントは使える?にまとめています。
条件が公開されていないサービスもある
一方で、NO-LIMIT、BEET-AGENT、ジャスネットキャリアは、いずれも登録型で対応地域は全国と示されていますが、経験の有無に関する条件は当サイトのデータでは確認できていません。
条件が書かれていないことは「未経験でも対象」を意味するわけではなく、単に情報が確認できていない状態です。
この場合は、サービス側の公式な案内で確認することになります。
条件が分からないまま「対象だろう」と判断して進めると、後の段階で食い違いが出ます。
書かれていないことを都合よく解釈しないという点だけ守れば、確認の手間はそれほど大きくありません。
自分で確かめる方法
求人票の必須要件と歓迎要件を数える
求人票の応募要件は、多くの場合「必須」と「歓迎」に分かれています。
「業界経験」がどちらに書かれているかで、その事務所における位置づけが読み取れます。
必須要件であれば選考に進む条件ですが、歓迎要件であれば加点材料という扱いです。
自分が応募したい地域と資格領域で求人を20件ほど集め、業界経験が必須要件に何件、歓迎要件に何件、記載がないものが何件あるかを数えてみます。
この作業で得られる数字は、どこかの記事に書かれた一般論より、自分にとって正確な材料になります。
地域や資格領域を変えると結果も変わるため、自分の希望条件で数えることに意味があります。
面談型のサービスで直接聞く
面談を伴うサービスであれば、担当者に「この地域で未経験者を対象にした求人があるか」と直接尋ねられます。
当サイトのデータでは、ヒュープロとツインプロがいずれも面談実施型で、対応地域は全国です。
ツインプロは対象年齢が24歳〜49歳で、対象に税理士スタッフ・会計士スタッフ・監査法人スタッフが含まれています。
面談型は時間の確保が必要になる一方で、求人票に書かれていない部分を聞ける点が利点です。
求人を日常的に扱っている相手から得られる回答は、一般論より具体的になります。
登録型と面談型の使い分けは士業・会計の転職は登録型が中心?で整理しています。
未経験で応募する場合に書ける材料
学習の進捗を具体的に書く
簿記や資格試験の学習を進めている場合、合格した級や科目、次に受ける予定まで書けます。
学習中であることそのものが評価されるかどうかは確認できませんが、現在地と方向を伝える情報にはなります。
「勉強中」とだけ書くより、何をどこまで終えているかが分かる形のほうが読み手は判断できます。
前職の経験のうち共通する部分を書く
数字を扱う業務、納期のある書類作成、顧客とのやり取りなど、前職の業務のうち事務所の実務と重なる部分は書き出せます。
職種名が違っても、業務を工程の単位まで分解すると共通点が見つかることがあります。
求人票に使われている言葉と自分の業務を突き合わせながら書くと、対応関係が見えやすくなります。
未経験であることを説明で埋めようとするより、確認できる事実を並べるほうが読み手にとって扱いやすい情報になります。
書ける材料が少ないと感じる場合は、求人票を先に読んで、要件に対応する経験を探すところから始めます。
まとめ
- 未経験採用の割合を示す、出典の確認できる調査データは見つかっていない
- 確認できるのは、税理士の**60代以上53.6%**という人員構成と、司法書士の登録数の推移
- サービスの対象条件には実務経験の年数が明示されているものがあり、文面で確認できる
- 司法書士補助者のように、資格取得前の立場を対象に含むサービスも存在する
- 条件が確認できないサービスは「対象」と自己判断せず、公式の案内で確かめる



