「転職するなら何月がよいのか」は、動き出す前に一度は出てくる問いです。
求人が増える時期に合わせたほうが選択肢が広がるのではないか、という考え方からきています。
この記事は、職種を問わない総合転職の立場から時期を扱います。
当サイトには薬剤師の転職に適した時期はある?、経理の転職に適した時期はある?、就活・転職はいつ動けばよいかという職種別の記事がありますが、いずれもその職種の求人が特定の月に増えることを示す調査を確認できず、自分側の条件から時期を決める話に切り替えています。
ここでは全職種を対象にした公的統計で何が言えるのかを先に確認し、そのうえで退職日によって扱いが変わる住民税を整理します。
後半は職種に関係なく、給与から住民税が天引きされている人すべてに関わる内容です。
求人数の季節の傾向は、あるが一定ではない
1〜3月は新規求人が多くなりやすい
厚生労働省の「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」は、ハローワークで受け付けた求人と求職の状況を毎月公表している統計です。
この統計を月ごとに並べると、1〜3月は他の時期と比べて新規求人数が多くなりやすい傾向が見られます(出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」)。
年度の区切りに合わせて採用の計画が動くこと、4月入社に向けた募集が出ることが、背景として説明されます。
ただし、この統計は職種も地域も合算した全国の集計です。
自分が探している職種で同じ動きが起きているかどうかまでは、この数字からは分かりません。
「毎年必ず増える」とは言えない
同じ統計を前年同月と比べると、傾向どおりに動かない月があります。
令和8年3月の新規求人数は前年同月比で2.6%減、令和7年9月は前年同月比で3.2%減でした(出典: 同統計)。
1〜3月が多くなりやすいという傾向はあっても、前の年より増えるとは限りません。
景気や業種ごとの採用計画によって、同じ月でも年ごとに向きが変わります。
「3月まで待てば求人が増えるはず」と考えて動き出しを遅らせると、待った先で前年を下回っていることもありえます。
傾向は幅を持った話であり、約束ではありません。
「9〜10月にも増える」については確認できていない
求人が増える時期として、1〜3月と9〜10月という2つの山が挙げられることがあります。
このうち1〜3月については上記の傾向が確認できますが、9〜10月については、当サイトで調べた範囲で出典の確認できる集計が見つかりませんでした。
下半期の始まりや人事異動と結びつけた説明は見かけますが、根拠となる集計の実施主体や対象期間が示されていないものが大半でした。
そのため、この記事では9〜10月について有利とも不利とも書きません。
確認できていないことを、確認できたことと同じ強さで扱わないほうが、判断を誤りにくくなります。
季節の傾向は判断の主軸にならない
全国の集計と自分が見る求人は別のもの
一般職業紹介状況は、ハローワークを経由した全国・全職種の集計です。
実際に自分が応募するのは、特定の職種、特定の勤務地、特定の経験年数の枠に限られます。
全体が増えている月に自分の条件の求人も増えているとは限らず、逆も同じです。
自分の条件での増減は、自分で数えれば分かります。
勤務地の範囲と職種、経験年数の条件を固定し、同じ検索条件で件数を月に1回だけ記録します。
掲載の更新頻度はサービスごとに違うため、比較は同じサービスの中で行います。
3か月も続ければ、全国の傾向より自分にとって正確な材料になります。
求人が増えても、応募できる状態でなければ選べない
求人が多い月に当たっても、書類が用意できていなければ比較の対象を増やせません。
応募のたびに一から書類を作る状態だと、良い求人が出た月に手が回らず、結局は見送ることになります。
先に済ませておけるのは、求人票の読み方を身につけることと、職務経歴の材料を箇条書きにしておくことです。
求人票のどこを見るかは求人票のどこを読むか、書類を作る順番は職務経歴書はいつ作ればよいかにまとめています。
どちらも在職中に進められ、月を選びません。
期間から逆算すると、決めるのは「始める月」になる
転職活動の期間は3〜6ヶ月が目安とされています(出典: マイナビ転職)。
入社したい時期が決まっているなら、そこから3〜6ヶ月をさかのぼった時点が動き出しの目安です。
この逆算をすると、時期の問いは形を変えます。
待つ月を決める話ではなく、始める月を決める話になります。
仮に1〜3月に出る求人を見たいのであれば、動き出すのはその前の年の後半です。
求人が増えるとされる月にゼロから始めると、選考が進むころには募集が締め切られていることもあります。
退職日は住民税の手続きに関係する
住民税は前年の所得に対して翌年に納める
給与所得者の住民税は、前年1年間の所得をもとに税額が決まり、その年の6月から翌年5月までの12回に分けて給与から差し引かれます。
これを特別徴収といい、給与を支払う勤務先が本人に代わって納める仕組みです(出典: 総務省および各市区町村が公表している個人住民税の特別徴収に関する案内。
以下この章で同じ)。
押さえておきたいのは、天引きされている住民税が前の年の所得に対するものという点です。
退職して収入が下がっても、前年分として決まった税額は変わりません。
転職の日程を考えるとき、この時間差が効いてきます。
退職日が1月1日〜4月30日なら一括徴収が原則
退職すると給与からの天引きが止まるため、まだ徴収されていない分の扱いを決める必要があります。
退職日が1月1日から4月30日までの場合、退職する月から5月分までの住民税は、最後の給与または退職金から一括徴収されるのが原則です。
本人が分割を選ぶ余地は基本的にありません。
年度の終わりに近いほど残りの月数は少なくなりますが、1月に退職する場合は1月分から5月分までがまとめて差し引かれることになります。
最後の給与の手取りが想定より小さくなることがあるため、退職日をこの期間に置くなら先に見込んでおきます。
退職日が6月1日〜12月31日なら選べる
退職日が6月1日から12月31日までの場合は、2つのうちどちらかを本人が選びます。
1つは一括徴収で、退職する月から翌年5月分までを最後の給与などからまとめて天引きしてもらう形です。
もう1つは普通徴収で、市区町村から届く納付書を使って自分で納めます。
普通徴収の納期は通常、6月・8月・10月・翌年1月の年4回です。
| 退職日 | 未徴収分の住民税の扱い |
|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 退職月から5月分までを、最後の給与または退職金から一括徴収(原則) |
| 6月1日〜12月31日 | 一括徴収か、普通徴収(納付書で年4回)かを本人が選択 |
総務省および各市区町村が公表している個人住民税の特別徴収に関する案内をもとに作成。
区分の境目にあたる時期の扱いや、納期の具体的な日程は市区町村によって異なることがあります。
選び方で変わるのは、納める総額ではなく出ていく時期
一括徴収を選べば納め忘れは起きませんが、最後の給与の手取りは減ります。
普通徴収を選べば手取りは減らない代わりに、納付の管理が自分の作業になります。
どちらを選んでも納める総額は変わりません。
違うのは、いつ手元から出ていくかです。
退職から次の入社まで間が空く場合、普通徴収の納付書は収入のない時期に届きます。
前年の所得に対する税額であるため、いま収入が減っていることは反映されていません。
空白期間を作る予定なら、この支払いを生活費の見込みに入れておきます。
転職先で継続できる場合もある
退職後すぐに次の勤務先へ移る場合、勤務先を通じて特別徴収を続けられることがあります。
手続きは前後の勤務先の間で行われる届出によるため、扱いは会社と市区町村の対応によって変わります。
希望するなら、退職の手続きを進める段階で両方に確認します。
住民税の扱いは、居住する市区町村や個別の事情によって変わります。
この記事では区分と流れまでを扱い、自分の場合にどうなるかは、市区町村の担当窓口や勤務先の給与担当に確認してください。
退職の時期で変わるのは手続きであって可否ではない
「悪い時期」に辞められないわけではない
ここまで見たとおり、退職日によって変わるのは住民税の徴収の形です。
退職できるかどうかや、転職先が決まるかどうかが月によって変わるという話ではありません。
「いまは時期が悪い」という言い方は、条件の合う求人が出ているときに見送る理由になりかねません。
逆に「この時期を逃すと不利になる」という言い方は、動く理由がないときにも動く判断を促します。
どちらも確認できる根拠がないため、判断の軸には置かないほうが安全です。
賞与や有給休暇の日程と重なる
退職日の前後には、賞与の支給日や有給休暇の消化といった日程が並びます。
これらは住民税と違って企業ごとの規定や残日数によるため、扱いは自分の勤務先を確認しないと分かりません。
退職を伝える手順と、伝える前に確認しておく項目は退職はどう伝える?にまとめています。
就業規則の定めと法律上の期間を並べて退職日を決める部分まで扱っているため、日程を組む前に読んでおくと確認の漏れが減ります。
引き継ぎに必要な期間は自分の業務で決まる
引き継ぎにどれだけかかるかは、担当している業務の内容によって変わります。
年に1回しか発生しない業務を持っているなら、その時期をまたぐかどうかで必要な日数が変わります。
ここは求人側の事情ではなく、自分の業務から見積もれる数字です。
一般論としての「動きやすい月」より、この見積もりのほうが退職日に直結します。
入社したい時期に希望があるなら、その条件は最初に伝えておきます。
決めていないのであれば、決めていないと伝えるほうが正確です。
在職中か退職後かで判断の余裕が変わる
在職中に進めるか、辞めてから始めるかで、使える時間と判断の余裕が変わります。
収入が続いている間は条件が合わなければ見送れますが、退職後は期限が判断を左右しやすくなります。
進め方は在職中の転職活動はどう進める?で扱っています。
前述のとおり、退職後には前年の所得に対する住民税の納付が残ります。
空白期間の長さを決めるときは、その間に入る支出も一緒に数えておきます。
サービスを使い始める時期の考え方
相場を見る段階なら登録型
当サイトで整理している総合型のサービスは、会員登録から利用が始まる登録型と、面談の実施を前提とする面談型に分かれます。
登録型にはリクナビNEXT、リクルートエージェント、ミイダス、ハタラクティブ、ランスタッドなどが当たり、いずれも対応地域は全国です。
JAC Recruitmentの無料転職サポートも登録型ですが、こちらは対象地域が定められています。
登録型は、登録の時点で面談を予約する必要がありません。
求人や条件を見るところまでで、いったん止めることもできます。
時期を決める前に相場を知っておきたい段階では、この形が目的に合います。
登録だけで進める使い方は転職は登録だけでもできる?で扱っています。
日程が固まってから面談型
面談型は、登録がキャリア面談の申し込みを兼ねる形です。
総合型ではランスタッドのキャリアアップ転職や、JAIC就職カレッジがこれに当たります。
日程を合わせる工程が入るため、動ける時間帯が決まってから使うほうがやり取りが短く済みます。
面談型では、求人票に書かれていない事情を口頭で伝えられます。
引き継ぎの都合で入社日を動かせない、賞与の支給日まで在籍したいといった条件は、検索条件では表せません。
2つの型の違いは登録型と面談型は何が違う?、市場全体の数字は転職エージェントはどう選ぶ?にまとめています。
まとめ
- 1〜3月は新規求人数が多くなりやすい傾向があるが、前年同月比で減る月もあり毎年同じ動きにはならない(厚生労働省「一般職業紹介状況」)
- 「9〜10月にも増える」という説については、出典の確認できる集計が見つかっていない
- 統計は全国・全職種の集計であり、自分の条件での増減は同じ検索条件で数えるほうが正確
- 期間から逆算すると、決めるのは待つ月ではなく始める月になる
- 退職日が1月1日〜4月30日なら、住民税の未徴収分は一括徴収が原則
- 退職日が6月1日〜12月31日なら、一括徴収か普通徴収かを本人が選べる
- どちらを選んでも納める総額は変わらず、変わるのは手元から出ていく時期
- 個別の扱いは市区町村や事情によって変わるため、担当窓口と勤務先の給与担当に確認する



