会社を辞めたいと考えたとき、検索結果には転職エージェントと退職代行の両方が並びます。
名前は似た場所に出てきますが、この2つは目的も、やり取りする相手も、費用の出どころも違います。

混同したまま申し込むと、期待していたことが起きません。
ここでは、それぞれが何をする仕組みなのかを分けたうえで、どう使い分けるかを整理します。

2つは向き合う相手が違う

転職エージェントは次の勤務先を探す仕組み

転職エージェントは、求職者と採用したい企業の間に立ち、求人の紹介や選考の調整を行います。
やり取りする相手は、これから応募する企業です。

いま在籍している会社との交渉は、この仕組みの外にあります。
担当者が退職日の調整について助言することはありますが、勤務先に代わって連絡するわけではありません。
転職エージェントが動くのは、次の勤務先の側だけです。
サービスの型と使い分けは登録型と面談型の転職サービス、どちらを選ぶ?にまとめています。

退職代行は今の勤務先とのやり取りを引き受ける

退職代行は、退職の意思を勤務先に伝えるところを代わりに行うサービスです。
やり取りする相手は、いま在籍している会社です。

次の勤務先を探す機能は、ここには含まれません。
退職の手続きが終わった時点で役割が終わるため、その後の求人探しは別に進めることになります。
当サイトのデータでも、退職代行は総合転職とは別の区分として整理されています。

費用の出どころが違う

もう1つの違いは、誰が費用を負担するかです。
転職サービスでは、求職者から手数料を取ることが職業安定法で原則として禁止されています(出典: マイナビ転職)。
紹介した人が入社したときに、企業側から報酬を受け取る形で運営されています。

退職代行は、この仕組みの外にあります。
依頼するのは求人の紹介ではなく退職の手続きであり、費用は利用者が負担する形が一般的です。
無料で使えるサービスと有料のサービスがなぜ並んでいるのかは転職支援はすべて無料?で扱っています。

1年で700万人以上が仕事を離れている

離職そのものはめずらしい行動ではない

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、2024年の離職者数は約719.5万人、離職率は14.2%でした(出典: 厚生労働省「令和6年雇用動向調査」)。

率で見れば、1年間に職場を離れる人は7人に1人程度です。
多いとも少ないとも言えますが、少なくとも例外的な出来事ではありません。
辞めること自体を特別視しすぎると、手続きの話が感情の話にすり替わります。

辞める理由には条件面と関係性が混ざる

同じ調査で、転職入職者が前職を辞めた理由(個人的理由・その他の理由を除く)を見ると、男性は「定年・契約期間の満了」14.1%が最多、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%が最多でした(出典: 同調査)。
上位には「職場の人間関係が好ましくなかった」も入っています。

理由が条件面にある場合、次の勤務先の条件を比べれば解決の方向が見えます。
理由が関係性にある場合、退職の意思を伝える場面そのものが負担になることがあります。
退職代行が検討されるのは主に後者です。

辞めると決めた後にも作業は残る

退職の意思を伝えれば終わり、ということはありません。
引き継ぎの範囲を決める、貸与物を返す、離職票や源泉徴収票を受け取る、社会保険の切り替えを確認する。
こうした作業が残ります。

どこまでを代行が引き受け、どこからを自分でやるのかは、依頼する前に確認する項目です。
退職の伝え方と引き止めへの対応は退職はどう伝える?にまとめています。

退職代行を検討する前に確認すること

就業規則の退職に関する定めを読む

まず見るのは、いま在籍している会社の就業規則です。
退職を申し出る時期や手続きの流れが定められていることがあります。

就業規則は、労働者が見られる状態にしておくことが求められています。
どこで閲覧できるかが分からない場合、人事部門に確認できます。
定めを読まずに動くと、判断の材料が足りないまま進むことになります。

運営主体と対応できる範囲を確認する

退職代行と呼ばれるサービスは、運営している主体によって対応できる範囲が異なるとされています。
退職の意思を伝えるところまでを行うものと、条件面のやり取りまで扱えるものがあります。

依頼する前に、運営主体と、どこまでを引き受けるのかを書面で確認します。
個別の事情によって扱いは変わるため、依頼先の説明と公的な窓口で確認してください。
判断に迷う場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署といった窓口で相談できます。

費用と、含まれる範囲を確認する

費用の金額そのものはサービスごとに違うため、ここでは触れません。
確認すべきなのは、その費用にどこまでが含まれているかです。

退職の意思を伝えるところまでなのか、書類の受け取りに関する連絡まで含むのか、追加の連絡が発生した場合に別料金になるのか。
この3点を申し込み前に確認しておくと、後から金額が動く事態を避けられます。

退職後に受け取る書類を確認する

離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、年金手帳や基礎年金番号が分かるもの。
退職後に前の勤務先から受け取る書類はいくつかあります。

このうち源泉徴収票は、退職後に交付されるものです。
次の勤務先の入社手続きで求められるため、いつ受け取れるかを把握しておく必要があります。
入社時に求められる書類は労働条件通知書の確認ポイントでも触れています。

当サイトのデータに含まれる退職代行サービス

全国対応が中心で、申し込みはWebやLINEから

当サイトが整理しているデータでは、退職代行として次のサービスが記録されています。
いずれも対応地域は全国です。

サービス 申し込みの起点
男の退職代行 Webからの依頼
わたしNEXT Webからの依頼
退職代行ネルサポ LINEまたは問い合わせフォームの送信

対応地域が全国であるのは、やり取りが電話や文書で完結する性質のためと考えられます。
求人の紹介を伴う転職サービスでは、拠点のある地域に対応範囲が限られることがありますが、退職代行ではその制約が働きにくくなります。

転職支援と退職支援を並べているサービスもある

当サイトのデータには、総合転職の区分に分類されながら退職に関する支援を掲げるサービスも含まれています。
「退職代行ヤメドキ」は全国対応、「転職×退職サポート窓口」は申込型・全国対応で、LINEでの問い合わせが起点として記録されています。

同じ窓口で両方を扱う形は、手続きが一本化される点では負担が小さくなります。
一方で、どこまでが退職の支援で、どこからが求人の紹介なのかが見えにくくなることもあります。
申し込み前に、それぞれの範囲と費用の関係を確認しておくのが確実です。

対応地域と受付の窓口を見る

前掲のとおり、当サイトのデータでは退職代行はいずれも全国が対応地域として記録されています。
受付の窓口はサービスによって違い、Webのフォームから依頼する形と、LINEの問い合わせから始まる形があります。

窓口の違いは、記録が残るかどうかにも関わります。
やり取りが後から見返せる形になっているかを、申し込む前に確認しておくと、認識の食い違いが起きたときに参照できます。

使い分けの考え方

次の勤務先を決めてから辞めるか

在職中に活動すると時間は取りにくくなりますが、収入は途切れません。
辞めてから動くと時間は作れますが、決まらない期間の負担が読みにくくなります。

厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」では、転職活動期間は「1〜3ヶ月」が最多で、62.8%が6ヶ月未満で完了しています(出典: Kotora)。
裏を返せば、4割近くは6ヶ月以上かかっています。
辞めてから探す場合は、この幅を前提に見通しを立てることになります。
進め方は在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。

退職代行を使っても、転職活動は別に必要

退職代行が扱うのは、いまの勤務先との手続きだけです。
次の勤務先が決まるわけではありません。

このため、退職代行を検討する段階でも、求人を見る作業は並行して進めておくほうが後が楽になります。
会員登録だけで求人が見られるサービスであれば、面談の日程を組まずに相場を確認できます。
使い方は転職は面談なしで求人を見られる?にまとめています。

順番として、まず自分で伝えられるかを検討する

退職代行は、自分で伝えることが難しい場合の手段です。
伝えられる状況であれば、費用をかけずに済みます。

伝える相手と順番、切り出す時期を先に決めておけば、想定より短時間で終わることもあります。
準備の手順は退職はどう伝える?にまとめています。
それでも進まない場合に、費用を負担して手続きを引き受けてもらう手段がある、という順序で考えると判断しやすくなります。

在職中に求人を見ておくと、判断の材料が増える

辞めるかどうかを決めきれない段階で退職代行を調べ始めることがあります。
この段階では、他社の求人を10件ほど見ておくと判断の材料が増えます。

いまの条件が市場のどのあたりにあるのかが分かると、辞めるという結論そのものが変わることもあります。
結果として今の職場のほうが条件が良いと分かる場合もあり、それも材料をそろえたうえでの判断です。
この段階でやることは転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。

転職回数や離職の経緯は選考で聞かれる

退職の方法にかかわらず、次の選考では前の職場を離れた理由を聞かれます。
ここで前の会社の問題を並べる説明は、次でも同じことが起きるのではないかという疑問を残します。

何があったかを短く述べ、そこから何を条件として持つようになったかへ話をつなげます。
答え方の型は転職面接の準備、転職回数がどう見られるかは転職回数が多いと選考で不利になる?にまとめています。

まとめ

  • 転職エージェントが向き合うのは次の勤務先、退職代行が向き合うのはいまの勤務先
  • 転職サービスは求職者から手数料を取らない仕組みで、退職代行は利用者が費用を負担する
  • 対応できる範囲は運営主体によって異なるとされるため、依頼前に書面で確認する
  • 当サイトのデータでは、退職代行はいずれも全国対応で、WebやLINEからの申し込みが起点
  • 退職代行を使っても次の勤務先探しは別に必要になる
  • 判断に迷う場合は、労働局や労働基準監督署の窓口で相談できる