転職の応募書類でいちばん手が止まるのが志望動機です。
職務経歴は事実を並べれば形になりますが、志望動機は書くことを自分で決めなければなりません。
この記事が扱うのは、履歴書の志望動機欄や職務経歴書に文章として書く志望動機です。
面接で口頭で聞かれたときの答え方は転職面接の準備で扱っており、そちらは質問への受け答えの型を整理しています。
書類は読まれるもの、面接は聞かれるものなので、必要な長さも組み立ても変わります。
志望動機は「なぜこの会社なのか」に答える欄
転職理由と志望動機は別の質問
書類でも面接でも、この2つは混ざりやすい項目です。
転職理由はいまの職場を離れる理由、つまり過去の話です。
志望動機は応募先を選んだ理由、つまりこれからの話になります。
同じ出来事が両方の材料になることはあります。
ただし、書く欄が分かれていれば内容も分ける必要があります。
志望動機の欄に前職の事情だけを書くと、応募先を選んだ理由が空欄のまま提出することになります。
転職理由の側をどう整理するかは、面接での伝え方とあわせて転職面接の準備にまとめています。
書類は短い時間で読まれる前提で書く
職務経歴書はA4サイズで2〜3枚が目安とされており、志望動機はその中の一角にすぎません。
分量の考え方は履歴書と職務経歴書の違いとは?で扱っています。
読み手は複数の応募書類を続けて読みます。
最初の一文で結論が分からない文章は、後半まで読まれない可能性があります。
先に結論を置き、理由を後に回すという順番は、書類ではとくに効きます。
応募先ごとに全面的に書き直す必要はない
志望動機を1社ごとに白紙から書くと、応募数が増えたところで手が止まります。
骨格は共通のまま、応募先ごとに前面に出す経験と、選んだ理由の部分だけを入れ替える形にすると続きます。
この進め方は職務経歴書の作り方と同じです。
求人を見ながら少しずつ足していく順序は職務経歴書はいつ作ればよいかで整理しています。
文字数に正解はなく、書く欄の大きさで決まる
適切な文字数を示す出典は確認できていない
「志望動機は300字」「400字が目安」といった数字は各所で見かけますが、当サイトで調べた範囲では、その根拠となる調査の実施主体や対象件数が明示されているものは確認できませんでした。
そのため、この記事では文字数の目安を数字で示しません。
代わりに確認できるのは、書く場所の大きさは最初から決まっているという事実です。
市販の履歴書様式や公的機関が示している様式例では、志望動機欄の行数があらかじめ決まっています。
手元の様式を見れば、そこに収まる分量がそのまま答えになります。
欄が小さいときは要素を減らす
欄が数行しかない場合、後述する3つのブロックをすべて同じ密度で入れることはできません。
この場合は、応募先を選んだ理由と、対応する自分の経験の2つに絞ります。
入社後の話は面接に回せます。
小さい文字で欄を埋めると読みにくくなります。
欄からはみ出さない範囲で要素を削るほうが、読み手にとっては扱いやすい書類になります。
志望動機欄がない場合の置き場所
応募先によっては、履歴書に志望動機欄がなく、職務経歴書のフォーマットも自由という場合があります。
この場合は、職務経歴書の冒頭に数行の要約として置くか、末尾の自己PRに続けて書く形になります。
冒頭に置くと、読み手は経歴を読む前に「この人が何を目的に応募したか」を把握できます。
経歴の内容と志望動機がつながっていれば、読み進める間ずっと照合が働きます。
構成は3つのブロックに分ける
1つ目に、選んだ理由を言い切る
最初の一文には、応募先を選んだ理由を結論の形で置きます。
「貴社の◯◯という事業に、これまで担当してきた△△の経験を活かせると考えたため」という形です。
ここで理由を言い切ってしまうと、後の文がすべてその補足になります。
逆に、書き出しを業界の説明や自分の経歴の紹介から始めると、結論にたどり着く前に紙面が終わります。
書き出しの一文だけは最後に書き直すつもりで進めると、全体が締まります。
2つ目に、自分の経験を接続する
2つ目のブロックでは、1つ目で挙げた理由を裏づける経験を書きます。
担当した業務の範囲、扱った規模、自分が受け持った工程を具体的に書きます。
ここが最も長くなります。
このとき、求人票に書かれている言葉を使うと照合されやすくなります。
求人票が「進捗管理」と書いているのに自分の書類が「スケジュールの取りまとめ」となっていれば、同じ業務でも対応関係が読み取りにくくなります。
求人票のどこを読むかは求人票のどこを読むかにまとめています。
3つ目に、入社後に何をするかを書く
最後のブロックは、入社してから何をするつもりかです。
「貢献したい」「成長したい」という言葉だけでは中身がないため、担当したい業務や、任されたら取り組みたいことを1つ挙げます。
ここに書く内容は、求人票の業務内容の欄から選べます。
募集している業務のうち、自分の経験が最も近いものを名指しすると、書類全体の筋が通ります。
ブロックの配分は真ん中を厚くする
3つのブロックを均等に書く必要はありません。
読み手が判断に使うのは2つ目の経験の部分なので、そこを最も厚くします。
1つ目は1〜2文、3つ目は2〜3文で足ります。
配分を意識せずに書くと、1つ目と3つ目の抽象的な部分が長くなり、経験の記述が最後に少しだけ残るという形になりがちです。
書き終えたら、経験を書いた行数が最も多いかを確認します。
読み手に情報が残らない書き方の型
条件だけで終わっている
「安定した企業で長く働きたい」「福利厚生が整っている」という理由は、応募先を選ぶ基準として自然なものです。
ただし、これだけを志望動機欄に書くと、同じ条件を満たす他社と区別がつきません。
条件そのものを書いてはいけないという話ではありません。
条件を書くのであれば、その条件のもとで自分が何をするのかまで続けます。
条件は選んだ理由の入口であって、動機そのものではありません。
社名を入れ替えても成立する
書き終えた文章の社名を、同業他社の名前に置き換えてみます。
そのまま意味が通るのであれば、その文章は応募先を選んだ理由になっていません。
置き換えて崩れる部分を作るには、応募先だけが持っている要素を1つ入れる必要があります。
扱っている事業、対象にしている顧客、公開されている取り組みのうち、自分の経験と接する点を1つ選びます。
前職の否定で埋まっている
前職への不満は転職理由の材料であり、志望動機の材料ではありません。
志望動機欄に前職の問題点を並べると、応募先について書く分量が減ります。
不満が出発点であること自体は珍しくありません。
その不満を「次の職場で何を実現したいか」に変換する作業は、面接での答え方と共通するため転職面接の準備で扱っています。
直す方向を一覧にする
| よくある書き出し | 足りていないもの | 直す方向 |
|---|---|---|
| 安定した企業で働きたい | 応募先を特定する要素 | その安定の中で自分が担う業務を1つ書く |
| 貴社の理念に共感した | 共感の根拠 | 理念のどの部分が、自分のどの経験と重なるかを書く |
| 成長できる環境だと感じた | 成長の方向 | 何を身につけたいかを業務名で書く |
| 前職では裁量がなかった | 応募先の話 | 裁量を得て何をしたいかに書き換える |
| 未経験だが頑張りたい | 現在地 | いま準備として何を進めているかを書く |
いずれも、書かれていることが間違っているのではなく、読み手が次に確かめたい情報が抜けているという点が共通しています。
材料は求人票と公開情報から集める
必須要件に出てくる語を借りる
志望動機を白紙から考えると時間がかかります。
先に求人票の必須要件を読み、そこに並んでいる語のうち自分の経験と対応するものを抜き出すと、書く材料がそろいます。
必須要件と歓迎要件は別の欄です。
必須要件に対応する経験があるなら、それを2つ目のブロックの中心に置きます。
歓迎要件にしか当たらない場合は、必須要件に近い経験のほうを先に書きます。
公開情報は2つだけ読む
応募先について調べ始めると、いくらでも時間を使えます。
書類を書くために必要なのは、事業の内容が分かるページと、直近の取り組みが分かるページの2つで足ります。
読んだ内容をそのまま書き写すと、応募先が既に知っていることを並べるだけになります。
読んだ事実に対して自分の経験がどう接するかを1文で書くところまでが作業です。
迷っている段階でも材料は集められる
応募先が決まっていなくても、自分の職種の求人を見て要件を書き出す作業は進められます。
要件に繰り返し出てくる語が分かれば、志望動機の骨格はその時点で作れます。
転職するかどうかを決めていない段階の進め方は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。
書類が形になっていると、条件の良い求人が出たときに動けます。
条件面が本音の場合の扱い
隠す必要はないが、書く順番を変える
年収や勤務地が動機の中心にあることは珍しくありません。
書類でこれを完全に伏せる必要はありませんが、志望動機欄の先頭に置くと、業務への関心が読み取れない書類になります。
順番としては、業務と経験の接続を先に書き、条件面は必要な範囲で触れるにとどめます。
年収がどういう仕組みで決まるかは転職で年収は上がる?下がる?で扱っています。
金額の話をする場面は書類ではない
提示された条件を調整したい場合、その話をする場面は書類ではなく、選考が進んだ後の交渉の場面です。
志望動機欄に希望額を書いても、判断する相手が違います。
交渉のタイミングと伝え方は転職の年収交渉はできる?にまとめています。
書類の段階では、業務の話に絞るほうが後の選択肢が広がります。
書いた文章は面接でそのまま読まない
読む文章と話す言葉は長さが違う
書類に書いた志望動機は、面接でも触れられることが多くあります。
ただし、書いた文章をそのまま暗記して話すと、口頭では長すぎて要点が伝わりません。
面接では、3つのブロックのうち1つ目と2つ目を短く話し、聞き返された部分を詳しく答える形になります。
想定される質問の種類と答え方の型は転職面接の準備で扱っています。
書類と面接で内容がずれないようにする
書類に書いた理由と、面接で話す理由が食い違うと、どちらが本当なのかを確かめる質問が続きます。
書類を提出したら、その内容を手元に残しておきます。
複数の応募先に出している場合はとくに、どこに何を書いたかが分からなくなります。
応募先ごとに提出した書類を保存しておくと、面接前に読み返せます。
まとめ
- 志望動機は応募先を選んだ理由を書く欄で、転職理由とは分けて考える
- 適切な文字数を示す出典のある基準は確認できていない。
分量は書く欄の大きさで決まる - 構成は「選んだ理由」「経験の接続」「入社後にすること」の3ブロックに分け、真ん中を厚くする
- 社名を入れ替えても成立する文、条件だけの文、前職の否定で埋まった文は情報が残らない
- 材料は求人票の必須要件と、応募先の公開情報2ページから集める
- 書類に書いた文章は、面接では短く話し直す



