「経理の転職は繁忙期が終わった直後がよい」という説明を目にすることがあります。
決算や年度末の業務が一段落したタイミングなら引き継ぎもしやすい、という理屈です。
ただし、この説に数字の裏づけがあるのかを調べると、材料は見当たりませんでした。
ここでは確認できていないことを確認できていないと示したうえで、代わりに何を見れば時期を判断できるのかを整理します。
「繁忙期直後が適している」という説の出典は確認できていない
月別の求人動向を示す調査が見つからない
当サイトで調べた範囲では、経理の求人数が特定の月に増減することを示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
「決算後が動きやすい」「年度替わりに求人が増える」といった説明を掲げた記事は多く存在しますが、集計の対象期間や件数が明示されていないものが大半で、根拠として扱える状態ではありませんでした。
そのため、この記事では特定の月を勧めることをしません。
時期に関する情報を読むときは、根拠が集計データなのか書き手の見立てなのかを区別しておくと迷いにくくなります。
集計であれば対象期間と件数が示されているはずで、示されていない場合は見立てとして扱うほうが安全です。
決算月の分布についても数字を確認できていない
「繁忙期直後」という言い方が成り立つには、まず経理の繁忙期がいつなのかが定まっている必要があります。
決算月は企業によって異なるため、繁忙期も一律ではありません。
国内企業の決算月がどう分布しているかについても、当サイトで根拠を確認できる集計は用意できていません。
したがって「◯月が繁忙期だから、その直後が狙い目」という組み立て自体が、確認できない前提の上に乗っています。
自分の勤務先の決算期と引き継ぎの都合は、自分にしか分からない条件です。
時期を一般論から借りてくるより、自分の業務暦から決めるほうが確実になります。
断定できないことを判断の前提に置かない
「この時期を逃すと不利になる」という言い方は、動く理由がないときにも動く判断を促してしまいます。
逆に「いまは時期が悪い」という言い方は、条件の合う求人が出ているときに見送る理由になりかねません。
どちらも根拠を確認できない以上、判断の軸には置かないほうが安全です。
時期の話が意味を持つのは、求人側の事情と自分側の事情のどちらかに具体的な理由があるときです。
求人側の事情については確認できる材料がないため、この記事では自分側の条件から組み立てます。
年単位であれば確認できるデータがある
経理担当者の半数が人手不足を感じている
Sansan株式会社が経理担当者1000名を対象に行った調査(2024年3月18〜21日実施)では、人手不足を感じている割合は50.1%で、そのうち85.2%が「深刻」と回答しています。
要因として挙げられたのは「新たな経理人材を採用できないため」が48.1%、「業務の自動化・システム導入が進んでおらず生産性が低いため」が32.1%でした(出典: Sansan株式会社)。
同じ調査では、人手不足を感じている人の約3割が「担当者の高齢化による担い手不足」を挙げており、この傾向は特に地方で顕著とされています。
採用が追いつかないことが不足の主因になっているという点は、応募する側から見れば、募集の状況が月単位で急に切り替わるものではないことを示しています。
管理職の層でも人材の確保が課題になっている
経理管理職165人への2025年8月調査では、6割以上が人材面に不安を感じており、DXが進まない要因として「人材不足」を挙げた回答が51.9%で最多でした(出典: インボイス社)。
これらは月別の動きではなく、年単位で続いている状況を示す数字です。
特定の月を待つ理由は確認できない一方で、需要の側が短期間で消える兆候も確認できないというのが、いま数字で言える範囲になります。
一般事務と専門職では市場の向きが違う
厚生労働省の令和6年9月分データでは、一般事務従事者の有効求人倍率は0.32倍、事務従事者全体の平均は0.42倍でした(出典: エン・ジャパン)。
一方、経理・財務、人事・総務、法務といった専門性の高い管理部門は売り手市場が続く見込みとされ、法務の平均年収は650万円で求人倍率がさらに上がる見込みと分析されています(出典: MS-Japan)。
同じ「管理部門」でも需給の向きが逆になるため、時期を考える前に、自分がどちら側の求人に応募するのかを確かめておく必要があります。
市場全体の整理は管理部門の転職市場はどう違う?にまとめています。
月ごとの動きは自分の条件で数える
同じ検索条件で件数を記録する
一般論としての「動きやすい月」は確認できませんが、自分の希望条件に限れば求人の増減は自分で数えられます。
勤務地の範囲、企業規模、経験年数の条件を固定し、同じ検索条件での求人件数を月に1回記録していきます。
3か月も続ければ、自分の条件でどのくらいの求人が動いているかが見えてきます。
求人サービスによって掲載の更新頻度が違うため、比較は同じサービスの中で行います。
別のサービスの件数と並べると、増減の意味が変わってしまいます。
記録する項目は3つに絞る
記録するのは、件数、提示されている年収の幅、勤務条件で気になる項目の3つで足ります。
項目を増やすと続かず、続かなければ比較になりません。
始めた時点の件数を1回控えておけば、翌月から比較ができます。
同じ条件で並べていくと、条件の良い求人が出たときに相場より良いと判断できるようになります。
時期を待つのではなく、判断できる状態を先に作っておくという考え方です。
求人を見て記録するだけであれば在職中でも続けられ、条件の合う求人が出た月がそのまま動く時期になります。
時期は自分側の条件から決まる
在職中に進めるかどうかで余裕が変わる
在職中に進めるか、退職してから始めるかで、使える時間も判断の余裕も変わります。
収入が続いている間は「条件が合わなければ見送る」という選択ができますが、退職後は期限が判断を左右しやすくなります。
経理の場合、月次・四半期・年次で業務量に波があるため、面談や見学に充てられる時間は月内でも偏ります。
日程は業務の山を避けて組み、候補日を2つか3つ出せる状態にしておくとやり取りの往復が減ります。
時間が取れない時期に無理に進めると、確認が不十分なまま判断することになります。
入社したい時期から逆算する
入社したい時期に希望があるなら、その条件は最初に伝えておきます。
時期は紹介される求人の範囲に影響するため、後から伝えるほど調整が増えます。
決めていないのであれば、決めていないと伝えるほうが正確です。
引き継ぎに必要な期間は、担当している業務によって変わります。
決算業務を主担当として持っているのか、補助的な立場なのかで、退職までに必要な期間の見積もりが変わってきます。
ここは求人側の事情ではなく、自分の職務内容から算出できる数字です。
サービスを使い始める時期の考え方
相場を見る段階なら登録型から
当サイトで整理している管理部門向けのサービスは10件で、うち2件は求人を出す企業側を対象としたものです。
求職者が使う8件の内訳は、会員登録から始まる登録型がMS-JapanとBEET-AGENTの2件、無料相談の申込から始まる申込型がCORPOの1件、面談実施型が5件となっています。
相場を見るだけの段階であれば、登録型から始めるほうが手間がかかりません。
MS-JapanとBEET-AGENTはどちらも対応地域が全国です。
面談を伴わない使い方は管理部門は登録だけで転職できる?で扱っています。
方向が固まってから面談実施型へ
面談実施型は、WARC AGENT、ユメキャリ就職エージェント、ユメキャリ転職エージェント、大手企業人事が転職をサポート/ユメキャリ転職エージェント、法務部特化型の転職・求人情報なら/BEET-AGENTの5件です。
このうちWARC AGENTは希望勤務地が東京・神奈川・埼玉・千葉・兵庫・大阪・京都・愛知の場合が対象、法務部特化型のBEET-AGENTは東京・神奈川・埼玉・千葉に在住の20代〜40代が対象とされています。
面談を伴う形は時間の確保が必要になりますが、業務の波や引き継ぎの都合といった、求人票の条件だけでは扱えない事情を口頭で伝えられます。
年代ごとに問われる内容の違いは経理の転職は年代でどう変わるかで整理しています。
まとめ
- 「繁忙期直後が適している」という説を裏づける、出典の確認できる調査は見つかっていない
- 決算月の分布についても確認できる集計がなく、繁忙期の一般化そのものが難しい
- 確認できるのは年単位の状況で、経理担当者の50.1%が人手不足を感じている(うち85.2%が深刻)
- 時期は求人側の一般論ではなく、在職中かどうかと引き継ぎの都合から決めるほうが判断しやすい



