「人事の仕事に就きたいが、実務経験がない」という状態から何を始めればよいのかは、調べても答えが定まりにくい問いです。
人事という言葉が指す業務の幅が広く、企業によって担当範囲が変わるためです。
ここでは確認できていないことを確認できていないと示したうえで、業務を領域ごとに分解して求人票と照らし合わせる手順まで整理します。

人事未経験の採用実態を示す調査は確認できていない

未経験の採用割合を示す数字が見つからない

当サイトで調べた範囲では、人事職の採用のうち未経験者がどの程度を占めるかを示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
「人事は未経験でも入れる」「人事は経験者しか採らない」といった説明を掲げた記事は両方存在しますが、集計の対象や件数が明示されていないものが多く、根拠として扱える状態ではありませんでした。

同様に、人事に関する資格が採用の場面でどう評価されるかを示す調査データも確認できていません。
そのため、この記事では「資格を取れば有利になる」とも「資格は意味がない」とも書きません。
確認できない見通しを判断の前提に置かないという方針で進めます。

断定できないことを前提に置かない

「未経験からの人事は難しい」という言い方は、実際には対象になる求人があるときにも応募を止める理由になります。
逆に「誰でも入れる」という言い方は、要件を読まずに応募を重ねることにつながります。
どちらも根拠を確認できない以上、判断の軸には置かないほうが安全です。

代わりに使えるのは、出典の確認できる需給のデータと、公開されている求人票の応募要件です。
後者は自分の希望条件で直接数えられるため、どんな一般論よりも自分にとって正確な材料になります。

代わりに確認できるデータ

人事・総務は売り手市場が続く見込みとされている

厚生労働省の令和6年9月分データでは、一般事務従事者の有効求人倍率は0.32倍、事務従事者全体の平均は0.42倍でした(出典: エン・ジャパン)。
1倍を下回っており、応募する側の人数が求人数を上回る状態です。

一方、経理・財務、人事・総務、法務といった専門性の高い管理部門は売り手市場が続く見込みとされています(出典: MS-Japan)。
ここで注意したいのは、この売り手市場が専門性を持つ人にとっての市場を指している点です。
未経験者にとっての入りやすさを直接示す数字ではありません。

人事・総務の転職理由はスキルアップが最多

MS-Japanが運営する「MS Agent」の登録者データ(2023年4〜9月)では、管理部門・士業の転職理由は「スキルアップ」が34.0%、「キャリアチェンジ」が33.8%で上位を占めています。
人事・総務でも「スキルアップ」が転職理由の最多で、4割以上を占めていました(出典: MS-Japan)。

キャリアチェンジが3割を超えている点は、職務や領域を変える動きが一定の規模で起きていることを示します。
ただしこれは管理部門内での移動を含む可能性があり、他職種からの流入だけを示す数字ではありません。
数字の範囲を超えて読まないほうが安全です。

人事の仕事を領域ごとに分解する

採用・労務・制度・教育で必要な材料が変わる

人事の業務は、大きく採用、労務、制度設計、教育に分かれます。
求人票で「人事」とだけ書かれていても、実際には採用担当のみを指す場合と、労務まで含めて任せる場合があり、業務内容の欄を読まないと判断できません。

領域によって、これまでの経験が接する部分も変わります。
採用であれば候補者とのやり取りや日程調整、労務であれば勤怠や社会保険に関する事務、教育であれば研修の企画や運営が対応します。
どの領域から入るのかを先に決めると、読む求人の数が一気に減ります。

いまの仕事との接点を書き出す

現在の職種が人事でなくても、業務のなかに人事の領域と重なる部分がある場合があります。
アルバイトの採用面接に同席した、シフトや勤怠の管理をしていた、新人の教育を担当していた、といった経験です。

これらは職務経歴書に書ける材料になります。
ここで大事なのは、経験の有無を自己判断で切り捨てないことです。
求人票の業務内容と並べてみて、重なる項目があれば書き出しておきます。
職務ごとの求人の読み方は経理・人事・総務、転職の探し方は違う?で整理しています。

最初にやること

求人を20件集めて必須要件を数える

希望する地域で人事の求人を20件ほど集め、実務経験が必須要件に何件、歓迎要件に何件、記載なしが何件あるかを数えます。
必須要件に入っていれば選考に進む条件ですが、歓迎要件であれば加点材料という扱いです。

この作業を採用・労務・制度・教育の領域ごとに分けて行うと、自分にとってどの入口が現実的かが件数として見えてきます。
地域や企業規模を変えると結果も変わるため、一般的な条件ではなく、自分が実際に応募しうる範囲で数えます。

職務経歴書は求人を見ながら作る

先に職務経歴書を完成させてから求人を探すと、書いた内容と求人の要件がかみ合わないことがあります。
求人票の業務内容を横に置き、そこに書かれている項目のうち自分が経験している部分を具体的に書く、という順番のほうが結果的に早く進みます。

未経験からの応募では、経験そのものより「なぜその領域なのか」を説明できるかが問われる場面が増えます。
領域を決めていない状態のまま応募すると、この説明が組み立てられません。
管理部門全体での入口の違いは未経験から管理部門に転職できる?で比較しています。

社内での異動も選択肢として並べる

いま働いている会社に人事部がある場合、社内公募や異動という経路も選択肢になります。
転職と比べて、これまでの業務理解がそのまま使える点が違います。

どちらが適しているかは、いまの会社の状況によって変わるため一般化できません。
ただし、選択肢として並べておくと、転職だけを前提にした場合よりも判断の材料は増えます。

サービスの使い方

登録型で要件を確認する

当サイトで整理している管理部門向けのサービスは10件で、うち2件は求人を出す企業側を対象としたものです。
求職者が使う8件のうち、会員登録から始まる登録型はMS-JapanとBEET-AGENTの2件で、どちらも対応地域は全国です。
無料相談の申込から始まる申込型はCORPOの1件で、こちらも全国が対象です。

求人を集めて要件を数える作業は、登録型で進められます。
面談の時間を確保する前に、まず要件を読む段階を済ませておくと、その後のやり取りが具体的になります。
登録だけで使う方法は管理部門は登録だけで転職できる?にまとめています。

面談実施型で要件の読み方を聞く

面談実施型は5件で、WARC AGENT、ユメキャリ就職エージェント、ユメキャリ転職エージェント、大手企業人事が転職をサポート/ユメキャリ転職エージェント、法務部特化型の転職・求人情報なら/BEET-AGENTが該当します。
ユメキャリの3件は対応地域が全国です。

このうち「大手企業人事が転職をサポート/ユメキャリ転職エージェント」は名称に大手企業の人事によるサポートを掲げていますが、当サイトで確認できているのは進み方が面談実施型であることと、対応地域が全国であることまでです。
支援の中身については、申し込む前に各サービスの案内で確認してください。
未経験から応募する場合、求人票に書かれていない部分の判断が必要になるため、要件の読み方を直接尋ねられる点が面談を伴う形の利点になります。

まとめ

  • 人事未経験の採用割合や資格の評価を示す、出典の確認できる調査は見つかっていない
  • 確認できるのは、人事・総務が売り手市場とされ、転職理由の最多がスキルアップ(4割以上)という事実
  • 人事は採用・労務・制度・教育に分かれるため、領域を決めてから求人を読むほうが早い
  • 職務経歴書は先に完成させず、求人票の業務内容を見ながら書く順番のほうが噛み合う