管理部門の中で、法務は入口が見えにくい職務です。
経理であれば簿記、人事であれば採用や労務といった手がかりがありますが、法務は何を経験していれば近いのかが分かりにくいためです。
当サイトの未経験から管理部門に転職できる?では経理・人事・総務の3職務を比較しており、法務は対象に含めていません。
求められる経験の性質が他の3つと違うためです。
ここでは法務に絞って、業務の分かれ方と、未経験の立場から確かめられることを整理します。
市場の側から見ると法務は専門管理部門の一つ
一般事務とは需給の向きが逆になっている
厚生労働省の令和6年9月分データでは、一般事務従事者の有効求人倍率は0.32倍、事務従事者全体の平均は0.42倍でした(出典: エン・ジャパン)。
1倍を下回っており、応募する側の人数が求人数を上回る状態です。
一方、経理・財務、人事・総務、法務といった専門性の高い管理部門は売り手市場が続く見込みとされ、法務の平均年収は650万円で求人倍率がさらに上がる見込みと分析されています(出典: MS-Japan)。
同じ管理部門という言葉の中で、需給の向きが逆になっているという点が出発点になります。
ただし売り手市場は経験者にとっての話
ここで注意が要ります。
売り手市場とされているのは、専門性を持つ人にとっての市場です。
未経験者にとっての入りやすさを直接示す数字ではありません。
当サイトで調べた範囲では、法務職の採用のうち未経験者がどの程度を占めるかを示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
そのため、この記事では「未経験でも入れる」とも「経験者しか採らない」とも書きません。
確認できない見通しを判断の前提に置かないという方針で進めます。
資格者が企業側に入る動きもある
法務部門には、弁護士資格を持つ人が企業側の立場で入るという流れもあります。
企業内弁護士は2023年時点で弁護士全体の7.1%を占め、毎年増加しています(出典: leala.ai)。
これは、法務の求人が資格者だけで埋まるという意味ではありません。
ただし、同じ部署の中に資格を持つ人がいる構成は起こりうるということです。
資格ごとの業務範囲は税理士・会計士・弁護士・司法書士の違いは?で整理しています。
法務の業務は一つのまとまりではない
契約に関する業務
法務の業務のうち、件数として日常的に多くを占めるのが契約に関する業務です。
事業部門が結ぼうとしている契約の内容を確認し、条項を検討し、修正の案を返すという流れになります。
取引の基本契約、業務委託、秘密保持、賃貸借など、扱う契約の種類は企業によって変わります。
求人票に「契約書のレビュー」「契約審査」と書かれている場合、この領域が中心にあります。
扱う契約の種類と月あたりの件数は、業務の中身を判断するための項目になります。
会社の機関や組織に関する業務
株主総会や取締役会の運営、議事録の作成、登記に関する対応といった業務があります。
会社としての意思決定の手続きを整える領域で、時期によって業務が集中する性質があります。
この領域は、総務部門が担当している企業もあります。
求人票の職種名が「総務・法務」となっている場合、この部分を含んでいることが多くなります。
総務の業務範囲は企業ごとに変わるため、列挙されている項目をそのまま控えて照合します。
紛争対応・コンプライアンス・知的財産
取引先とのトラブルへの対応、社内規程の整備、コンプライアンスに関する研修や体制づくり、知的財産の管理といった業務もあります。
企業の業種や規模によって、どの領域に比重が置かれるかが変わります。
これらは、契約審査のように毎日発生する業務ではありません。
そのため、求人票に書かれていても、実際にどの程度の比重かは面談で確認する対象になります。
予防・臨床・戦略という分け方もある
実務では、問題が起きる前に整える予防的な業務、起きた問題に対応する業務、事業の意思決定に関わる業務という分け方をすることがあります。
同じ法務部門でも、どこに軸足があるかで日々の動き方が変わります。
未経験から入る場合、最初に任されるのは予防的な業務や、定型的な契約の一次確認である場合が多くなります。
どの領域から入るのかを先に決めると、読む求人の数が絞れます。
隣接する経験を先に棚卸しする
契約に触れていた業務を書き出す
いまの職種が法務でなくても、契約に関わっていた経験がある場合があります。
営業事務で契約書の作成や締結の手続きを担当していた、取引先から届いた契約書を社内で回覧していた、購買で発注の条件を確認していた、といった経験です。
こうした業務は、契約審査そのものではありませんが、契約という文書を扱った経験として書けます。
経験の有無を自己判断で切り捨てず、求人票の業務内容と並べて重なる項目を探します。
書き出し方は職務経歴書はいつ作ればよいかにまとめています。
総務・内部監査・士業事務所からの接点
総務で株主総会の事務や社内規程の管理に関わっていた経験は、機関に関する業務と接します。
内部監査や審査の業務は、規程と実際の運用を照らし合わせる作業という点で共通する部分があります。
士業の事務所で補助者として実務に携わってきた経験も、扱ってきた文書の種類によっては接点になります。
事務所側から企業へ移る場合の考え方は未経験から士業事務所に入れる?で扱っています。
学習歴は現在地として書く
法学部の出身であること、法律に関する検定の学習を進めていること、司法試験や司法書士試験の受験経験があることは、いずれも書ける情報です。
合格していない段階でも、どこまで学んだかは現在地として示せます。
ただし、当サイトでは資格や学習歴が採用でどう評価されるかを示す調査データを確認できていません。
この点は簿記・USCPA・FASS検定は何が違う?でも同じ結論になっています。
評価されるかどうかが不確かなものを、学習の唯一の理由に置かないほうが安全です。
求人票で自分が対象か確かめる
必須要件と歓迎要件を数える
求人票の応募要件は、多くの場合「必須」と「歓迎」に分かれています。
法務の実務経験がどちらに書かれているかで、その企業における位置づけが分かります。
必須要件なら選考に進む条件、歓迎要件なら加点材料という扱いです。
希望する地域で法務の求人を20件ほど集め、実務経験が必須要件に何件、歓迎要件に何件、記載なしが何件あるかを数えます。
これを契約中心の募集と、総務を含む募集に分けて行うと、自分にとって現実的な入口が件数で見えてきます。
一人法務か複数名かを確認する
法務担当者が一人しかいない企業では、契約審査から機関の対応まで一人で担うことになります。
複数名の部署であれば、担当が分かれ、確認を受けながら進められます。
未経験から入る場合、この違いは入社直後の負担に直結します。
求人票に人数の記載がない場合は、面談での質問の候補として控えておきます。
人数や体制の書かれ方は経理・人事・総務、転職の探し方は違う?でも扱っています。
事業内容と扱う契約の対応を見る
同じ法務でも、製造業とサービス業、国内取引が中心の企業と海外取引がある企業では、扱う契約の種類が変わります。
求人票の事業内容と業務内容を並べると、どの分野の知識が必要になるかの見当がつきます。
自分がいまの仕事で触れてきた業界と重なる企業であれば、その業界の商流を理解しているという材料が使えます。
法律の知識だけでなく、事業の理解も評価の対象になるという点は、未経験から入る場合の手がかりになります。
法務に絞ったサービスが存在する
法務特化型の対象条件
法務は専門性が明確なぶん、職務を絞った転職サービスが成り立つ領域です。
当サイトで整理しているデータでは、法務部特化型の転職・求人情報なら/BEET-AGENTがこれに当たります。
面談実施型で、東京・神奈川・埼玉・千葉に在住の20代〜40代が対象とされています。
対象条件があるため、応募の前に自分が該当するかを確認しておきます。
地域と年齢は登録前に読める条件なので、先に片付けておくと手間が減ります。
横断型と特化型の使い分け
当サイトで整理している管理部門向けのサービスは10件で、うち2件は求人を出す企業側を対象としたものです。
求職者が使う8件のうち、会員登録から始まる登録型はMS-JapanとBEET-AGENTの2件で、どちらも対応地域は全国です。
無料相談の申込から始まる申込型はCORPOの1件で、こちらも全国が対象です。
法務に絞りきれていない段階では、横断して求人を見られる形のほうが比較しやすくなります。
総務と法務の両方を含む募集も視野に入るためです。
登録だけで進める方法は管理部門は登録だけで転職できる?にまとめています。
面談では要件の読み方を聞く
面談実施型は5件で、WARC AGENT、ユメキャリ就職エージェント、ユメキャリ転職エージェント、大手企業人事が転職をサポート/ユメキャリ転職エージェント、法務部特化型の転職・求人情報なら/BEET-AGENTが該当します。
ユメキャリの3件は対応地域が全国です。
未経験から応募する場合、求人票に書かれていない部分の判断が必要になります。
この経歴でどの領域の募集が対象になるかを、求人を扱っている相手に直接尋ねられる点が、面談を伴う形の利点です。
方式ごとの違いは登録型と面談型の転職サービス、どちらを選ぶ?で扱っています。
まとめ
- 法務は平均年収650万円で、求人倍率がさらに上がる見込みと分析されている領域
- ただし売り手市場は経験者についての話で、未経験の採用割合を示す調査は確認できていない
- 法務の業務は契約・機関に関する対応・紛争対応・コンプライアンス・知的財産に分かれる
- 未経験から最初に任されるのは、定型的な契約の確認など入口側の業務であることが多い
- 契約に触れていた業務、総務での機関対応、士業事務所での実務は隣接する経験として書ける
- 資格や学習歴は現在地として書き、評価の見通しを学習の唯一の理由にしない
- 求人票では必須・歓迎の記載を数え、法務担当が一人か複数名かを確認する
- 法務に絞ったサービスには地域と年齢の条件があるため、登録前に対象かを確認する



