保育士として働くうちに、この仕事を続けるかどうかを考える時期が来ることがあります。
保育そのものは嫌ではないが今の環境は続けられない、という状態と、保育という仕事自体から離れたい、という状態は別のものです。
しかし、どちらも「辞めたい」という同じ言葉で表れるため、区別がつかないまま求人を見始めてしまうことがあります。
ここでは、保育士が転職を考える理由のデータを起点に、園を変えるのか職種を変えるのかをどう切り分けるかを整理し、そのうえで異業種へ移るときに何を確認するかを扱います。
保育士が転職を考える理由
上位は人間関係・収入・労働時間
転職経験のある保育士106人へのアンケートでは、転職理由の1位は「人間関係の悩み」で32人、2位は「収入アップのため」で29人、3位は「労働時間への不満」で28人でした。
4位は「結婚・出産のため」、5位は「多忙だから」、6位は同率で「保育方針が合わない」「他の仕事への興味」と続きます(株式会社ビズヒッツ調査、n=106、2022年1月13〜29日実施。
出典)。
上位に並ぶのは、保育という仕事の内容そのものではなく、働く環境と条件に関する項目です。
「他の仕事への興味」は6位に位置しており、職種そのものから離れたいという動機は、少なくともこの調査では上位3つに入っていません。
離職率は低いが、退職理由は待遇に集中する
保育士の離職率は9.3%で全産業平均より低い水準にありますが、退職理由を見ると給与と仕事量が上位を占めています(出典: エデンレッド・ジャパン、なるほど!ジョブメドレー)。
この2つのデータが示しているのは、辞める人の多くが保育の仕事そのものを否定しているわけではないという傾向です。
だとすれば、異業種を検討する前に、自分の理由がどちらに当たるのかを確かめる手順が要ります。
園を変えるのか、職種を変えるのか
理由と手段が対応しているかを確かめる
人間関係が理由であれば、業種を変えなくても解決しうる問題です。
逆に、保育という仕事の内容そのものが合わないのであれば、園を変えても同じ状況が繰り返されます。
理由と手段が対応していないと、転職の回数だけが増えることになります。
切り分けの方法は単純です。
今の不満を紙に書き出し、それぞれについて「別の園なら変わりうるか」を可否で判断します。
ほとんどが「変わりうる」に寄るなら、まず園を変える選択肢を先に検討する順序になります。
逆に「変わらない」が並ぶなら、異業種を含めて考える理由があります。
保育で身につけたものを言葉にする
異業種へ移る場合、応募先の担当者は保育の現場を知りません。
日々行っていたことを、その業界の言葉に置き換えて説明する作業が必要になります。
子どもの様子を記録して次の計画に反映する、保護者へ状況を伝える、複数人で役割を分担して一日を運営する。
これらは業種を問わず説明できる内容です。
書き出す作業は、応募先が決まる前に始められます。
むしろ先に整理しておくほうが、どの分野なら自分の経験が通じるかを判断しやすくなります。
書類の作り方は職務経歴書はいつ作ればよいかにまとめています。
在職中に進めるか、辞めてから進めるかを決める
保育の職場は年度単位で動くため、年度の途中で抜けることをためらう人がいます。
一方、在職中は時間の確保が難しく、応募の日程を組みにくいという事情もあります。
どちらを選ぶかで、動ける速度と手元の余裕が変わります。
異業種を検討する場合、比較のために見る求人の数が増えます。
同じ職種の中で園を変えるときより、情報を集める時間が必要になると見込んでおくほうが計画が崩れにくくなります。
在職中の進め方は在職中の転職活動はどう進める?で扱っています。
保育に近い分野から見ていく
学童・放課後児童支援
保育から距離が近いのは、同じく子どもに関わる分野です。
当サイトのデータでは、はじめての学童指導員が全国を対象とする登録型として掲載されています。
対象は放課後児童支援員・幼稚園教諭免許・小中高いずれかの教員免許の保有者で、保育士以外の資格でも入口になります。
学童は小学生を対象とするため、対象年齢も一日の流れも保育所とは異なります。
勤務時間が放課後に集中する形になることも多く、生活のリズムが変わる点は事前に確認しておく必要があります。
学校が長期休業に入る期間は開所の時間帯が変わることもあり、年間を通じた勤務の形を求人票で確かめておく価値があります。
保育所での経験がそのまま評価されるとは限りませんが、子どもの様子を見て記録し、保護者に伝えるという業務の骨格は共通しています。
異業種というより、対象年齢が変わる移動として捉えるほうが実態に近くなります。
教育分野
教育分野には、職種ごとに特化したサービスがあります。
塾講師JAPANは全国を対象とする申込型で、求人への応募で手続きが進む形です。
小中高の英語科教員の人材紹介ならワークスピット株式会社も全国対応の申込型で、こちらは教科と学校種に関する対象条件が設定されています。
条件の詳細は各サービスのサイトで確認してください。
教育分野は、保育とは評価される軸が変わります。
子どもへの関わり方という共通点はある一方、教科の指導力や学習の設計が問われる場面が増えます。
応募要件に何が書かれているかを、保育の求人と同じ感覚で読まないほうが安全です。
教員として働く場合は、教員免許が前提になります。
保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持っている場合でも、小中高の教科を担当するには別の免許が必要です。
資格の種類ごとに、応募できる範囲が決まっているという点は、保育の中で異動するときとは条件の性質が違います。
福祉・人材の分野
介護や障害福祉といった分野は、対人支援という点で保育と重なる部分があります。
ただし当サイトでは介護・福祉を別の分類として扱っており、そちらのサービスには保有資格が対象条件になっているものがあります。
保育士資格がそのまま条件を満たすとは限らないため、登録前に対象資格の記載を確認してください。
人材業界のように、保育の経験を「現場を知っている人材」として扱う職種もあります。
ただしこの領域は保育・教育向けのサービスではなく、総合型のサービスの守備範囲になります。
年齢や経験年数の条件が設定されている場合があるため、未経験・異業種への転職は何歳まで現実的かもあわせて確認してください。
異業種に移る前に確認すること
年収の見え方が変わる
保育の求人票と一般企業の求人票では、給与の示し方が違うことがあります。
処遇改善に関する加算が手当として別枠で示される場合もあり、月給の額面だけを並べても比較になりません。
賞与、手当、残業の扱いまで含めて年間の総額で比べる必要があります。
異業種に移ると、最初の年収が下がる場合と上がる場合の両方がありえます。
何がその差を決めるのかは転職で年収は上がる?で扱っています。
資格が使えなくなるわけではない
保育士資格は、保育の現場を離れても保有し続けられます。
異業種で数年働いたあとに保育へ戻る選択肢が消えるわけではありません。
戻る場合に何が問われるかはブランクから保育士に復帰できる?にまとめています。
この点を踏まえると、異業種への移動は不可逆の決断ではないと分かります。
ただし、離れていた期間について説明を求められることはあるため、いつ何をしていたかを事実として記録しておくほうが後の負担が軽くなります。
求人を見る段階と応募する段階を分ける
保育士の転職活動では、方法の1位が「ハローワーク」で61人、2位が「転職エージェント」で35人、3位が「転職サイト」で32人でした。
転職活動が「順調」「まあ順調」だった人は81.9%です(同調査)。
複数の経路が使われていることが分かります。
異業種を検討する段階では、まず求人を見て、その分野が何を求めているかを把握する作業が先に来ます。
応募はその後です。
順序を逆にすると、条件が固まらないまま面談に進み、話が噛み合わない状態になりやすくなります。
進め方は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。
保育の中で選択肢を広げる道もある
異業種に移る前に、保育の中で職場の種類を変える選択肢を確認しておく価値があります。
認可保育所、認定こども園、小規模保育、企業主導型保育、院内保育では、規模も一日の流れも運営主体も違います。
人間関係や労働時間が理由であれば、この範囲で条件が変わる可能性があります。
種別ごとの違いと、求人票で確認する項目は認可外・企業内保育園はどう違う?にまとめています。
異業種を検討する場合でも、比較の基準として保育の求人を並べておくと、条件の差が見えやすくなります。
まとめ
- 転職経験のある保育士106人の調査では、転職理由の1位は人間関係の悩み、2位は収入アップ
- 「他の仕事への興味」は6位で、職種そのものから離れたい動機は上位3つに入っていない
- 理由が環境や条件にあるなら、園を変える選択肢を先に検討する順序になる
- 保育・教育向けサービスには学童・塾講師・英語科教員向けのものがあり、対象資格が異なる
- 保育士資格は離職後も保有し続けられるため、異業種への移動は不可逆の決断ではない



