出産や育児、家族の介護、体調の事情で保育の現場を離れたあと、「この期間が空いていると戻れないのではないか」と考える人がいます。
何年までなら大丈夫なのかという問いには多くの記事が答えを出していますが、その根拠まで確認できるものは限られています。

ここでは、確認できていないことを確認できていないと示したうえで、代わりに何を見れば判断できるのかを整理します。

ブランクと採用の関係を示す調査は確認できていない

「何年までなら戻れる」と断定できる根拠が見つからない

当サイトで調べた範囲では、ブランクの長さと保育士の再就職のしやすさの関係を示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
「3年空くと厳しい」「5年までなら問題ない」といった記述を掲げる記事は存在しますが、調査の実施主体や対象人数が明示されていないものが多く、判断の根拠として使える状態ではありませんでした。

そのため、この記事では「ブランクがあっても問題ない」「ブランクは不利になる」のどちらの立場も取りません。
根拠のない数字を示すより、確認できる事実と自分で確かめられる方法を並べるほうが判断の役に立つと考えています。

資格や経験がどう評価されるかについても同様

保育士の資格や経験年数が採用の場面でどう評価されるかについても、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
保育士の平均転職回数を示す調査も同様です。
数字が示されていない領域について、推測を数字の形で書くことはしません。

これは「分からないから考えなくてよい」という意味ではありません。
分からない部分を推測で埋めるより、確かめられる部分を実際に確かめるほうが判断が早く進みます。
以下ではその方法を扱います。

代わりに確認できるのは需給と転職理由の傾向

数字として確認できるのは、保育士の需給の状況です。
保育士の有効求人倍率は地域差が大きく、東京都では4倍を超えています(出典: こども家庭庁)。
2024年度は保育士等の人件費が前年度比10.7%引き上げられ、2015年の新制度開始以降で最大の引き上げ率となりました(出典: 東京すくすく)。

もう一つ確認できるのは、離職のきっかけの傾向です。
転職経験のある保育士106人へのアンケートでは、転職理由の4位に「結婚・出産のため」が入っています(株式会社ビズヒッツ調査、n=106、2022年1月13〜29日実施。
出典)。
ライフイベントは期間を空けて職場を離れる理由になりやすいものです。
つまり、離職期間があること自体は職種として想定される範囲の出来事だと言えます。
ただし、これは「ブランクが評価に影響しない」という意味ではありません。
両者は別の話として扱う必要があります。
市場全体の状況は保育士の転職市場はいま?にまとめています。

資格と経験は分けて考える

保育士資格は離職期間中も保有し続けられる

保育士資格は、現場を離れている間も保有し続けられます。
当サイトで整理している保育・教育向けサービスの利用条件を見ても、対象者は保育士や幼稚園教諭といった資格の保有で定義されており、直近の就業状況で線が引かれているものは確認できていません。

登録内容に変更がある場合(氏名の変更など)は手続きが必要になることがあります。
復帰を考え始めた段階で、自分の登録の状況を確認しておくと、応募の直前に慌てずに済みます。
手続きの内容は、登録を行った都道府県の案内で確認してください。

説明が求められるのは経験の側

一方、応募の場面で問われるのは資格ではなく経験の中身です。
どの年齢の子どもを、何人規模の施設で、どのような体制の中で担当していたか。
この部分は離職期間の長さにかかわらず整理が必要になります。
ブランクを気にして手が止まるより、この整理を先に進めるほうが実務的です。

書き出すときは、離職の理由と期間を事実として簡潔に記載します。
理由を過度に説明したり、逆に伏せたりするより、事実を短く書くほうが読み手に伝わります。
書類の作り方は職務経歴書はいつ作ればよいかを参考にしてください。

求人から自分で確かめる方法

教育体制の記載を数える

自分が希望する地域と施設の種類で求人を20件ほど集め、「ブランク可」「未経験可」「研修あり」といった記載が何件にあるかを数えてみます。
この作業で得られる数字は、どこかの記事に書かれた一般論より、自分にとって正確な判断材料になります。

数え方は地域と施設の種類で結果が変わるため、一般的な条件ではなく自分の希望条件で行います。
記載が少ない場合、条件の幅を広げるか、施設の種類を変えるかという次の判断につながります。

必須要件と歓迎要件を分けて読む

求人票の応募要件は、多くの場合「必須」と「歓迎」に分かれています。
実務経験の年数がどちらに書かれているかで、その施設における位置づけが分かります。
必須要件に年数が入っていれば選考に進む条件ですが、歓迎要件であれば加点材料という扱いです。

年数の記載がまったくない求人も一定数あります。
その場合、経験年数より他の条件を重視している可能性があります。
書かれていないことは、要件が無いことと同じではないため、応募前の質問として残しておきます。

施設の種類を変えると要件も変わる

保育士が働く場は、認可保育所のほかに認定こども園、小規模保育、企業主導型保育、院内保育、学童保育などがあります。
規模や運営体制が違えば、求められる経験も変わります。
同じ地域でも、施設の種類を変えると要件の書かれ方が変わることがあります。
種別ごとの違いは認可外・企業内保育園はどう違う?で扱っています。

復帰の一歩目として、定員の小さい施設や短時間の勤務から始める選択肢もあります。
担当する人数が少ない環境で流れを取り戻してから、条件を広げるという順序です。
最初の職場を最終的な職場と考えないほうが、選べる範囲は広くなります。

サービスと公的窓口の使い方

まず登録型で要件の書かれ方を見る

面談の前に求人の要件を自分で読んでおくと、聞くべきことが明確になります。
当サイトのデータでは、保育のせかい・保育求人ラボ・保育Aid・G-Path(ジーパス)エージェント・保育メトロ・保育専門求人サイトが全国を対象とする登録型で、会員登録を済ませた段階で求人を確認できます。

対応地域が限られるサービスもあります。
レバウェル保育士は北海道・宮城・茨城・埼玉・千葉・東京・神奈川・静岡・愛知・京都・大阪・兵庫・岡山・広島・福岡の15都道府県を対象とする登録型です。
対象外の地域であれば登録しても紹介に至らないため、この確認は登録前に済ませておきます。

面談型で書かれていない部分を聞く

離職期間の扱いや研修の実際は、求人票からは読み取りにくい部分です。
ほいく畑は北海道・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・静岡・愛知・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・岡山・山口・福岡・佐賀の20都道府県を対象とする面談実施型です。
求人を日常的に扱っている相手に尋ねるほうが、一般論より具体的な回答を得られます。

尋ねる内容は、あらかじめ書き出しておくほうが漏れません。
離職期間のある人の受け入れ実績があるか、入職後の研修がどう組まれているか、勤務の開始時期に幅を持たせられるか。
質問を用意してから面談に進むと、限られた時間で必要な情報が集まります。
方式の違いは保育士は面談なし・電話なしで転職サービスを使える?にまとめています。

公的な窓口も併用できる

都道府県などが設置する保育士・保育所支援センターは、保育士の就職や再就職の相談を無料で受け付ける公的機関です。
ハローワークにも保育関連の求人が出ています。
前掲の調査では、転職活動の方法の1位が「ハローワーク」で61人、2位が「転職エージェント」で35人、3位が「転職サイト」で32人でした(同調査)。
民間のサービスとは役割が違うため、併用しても矛盾しません。

復帰の前に決めておくこと

勤務時間と通勤の範囲を先に決める

復帰の条件で先に決まっていたほうがよいのは、勤務できる時間帯と通える範囲です。
この2つが決まると、検索の条件が固定され、求人を見るたびに悩む時間が減ります。
家庭の事情がある場合、後から変えにくい条件でもあります。

早番・遅番の可否、土曜の勤務、延長保育の対応。
これらを可否で決めておくと、面談でも短く伝えられます。
条件を曖昧にしたまま進めると、紹介された求人ごとに検討し直すことになり、判断に時間がかかります。

決めた条件は、あとから緩めることもできます。
最初から広く構えるのではなく、いったん狭く設定して件数を見てから広げるほうが、自分にとっての優先順位がはっきりします。

情報を集める期間を区切る

保育の職場は年度単位で動くため、4月の入れ替わりに合わせて動く人が多くいます。
秋のうちに情報を集め、実際に応募するのは冬から春という進み方も一般的です。
前掲の調査では、転職活動が「順調」「まあ順調」だった人は81.9%でした(同調査)。

期間を区切らずに情報だけを集め続けると、条件が固まらないまま時間が過ぎます。
いつまでに求人を見終えるか、いつから応募するかを先に決めておくほうが進みます。

まとめ

  • ブランクの長さと採用の関係を示す、出典の確認できる調査データは見つかっていない
  • 資格や経験の評価のされ方、平均転職回数についても確認できる調査は見つかっていない
  • 確認できるのは、有効求人倍率の地域差と、転職理由に結婚・出産が含まれるという傾向
  • 推測で判断するより、自分の希望条件で求人を20件集め、要件の記載を数える
  • 登録型で要件の書かれ方を見てから、面談型や保育士・保育所支援センターで不明点を聞く