看護師の求人に応募するとき、志望動機の欄で手が止まることがあります。
経験してきたことは書けるのに、なぜその職場を選んだのかがうまく言葉にならない、という状態です。
この記事は、履歴書や職務経歴書という書類に書く志望動機と転職理由を扱います。
面接で口頭で聞かれたときの答え方は看護師の面接で聞かれることは?と転職面接の準備に、クリニックや訪問看護へ移るときの実務上の違いはクリニック・訪問看護への転職で気をつけることにまとめています。
この記事では、提出する文章の中身だけに絞ります。
なお、以下に載せる例文は構成を示すためのものです。
そのまま書き写すと自分の経歴と噛み合わなくなります。
担当した診療科や処置に置き換えて使ってください。
志望動機は転職理由とセットで読まれる
きっかけはライフイベントと人間関係が多い
看護師の転職理由としては、結婚・出産・育児・介護といったライフイベント、人間関係、体力面が多いとされています(出典: ウェルミーマガジン)。
これらはいずれも、いまの職場で起きていることが起点です。
一方、志望動機の欄が聞いているのは次の職場で何をするかです。
起点が過去にあるものを、そのまま未来の話としては書けません。
書きにくさの原因はここにあります。
回数そのものは論点になりにくい
日本看護協会が2021年に行った調査では、転職経験のある看護師の転職回数は平均2回で、1回が最多の25.4%でした(出典: カケハシ スカイソリューションズ)。
回数を重ねること自体は、この職種では例外的ではありません。
だとすれば、書類で説明すべきなのは回数ではなく、それぞれの移動で何を選んだかになります。
市場全体の見え方は看護師の転職回数は平均何回かで扱っています。
転職理由を先に1文にする
順番としては、志望動機より先に転職理由を1文で書きます。
「体力的に夜勤の継続が難しくなった」「家族の介護で勤務時間の制約ができた」といった事実です。
この1文が決まらないうちに志望動機を書くと、応募先を選んだ理由が浮いた文章になります。
事実を書いたら、その隣に「だから次はこうしたい」を並べます。
この2つ目の文が、そのまま志望動機の出発点になります。
事実を隠す必要はなく、順序と分量の置き方を変えるだけです。
勤務先の形態で評価される力が入れ替わる
病棟はチームの中でどう動けるか
病棟は交代制で、同じ患者を複数の看護師が引き継ぎながら受け持ちます。
そのため、申し送りの精度、他職種との連携、急変時に誰へどう報告するかといった、チームの中での動き方が読まれます。
書類に書く材料も、ここに合わせます。
担当していた病床数、受け持ち人数、日勤と夜勤の比率、リーダー業務やプリセプターの経験があればその範囲。
単独で何をしたかより、どういう体制の中で何を担っていたかが伝わる形にします。
訪問看護は一人で判断できるか
訪問看護は、利用者の生活の場に一人で出向きます。
その場に同僚がいない状態で観察し、状態の変化に気づき、誰にどこまで連絡するかを自分で決める場面が増えます。
読まれるのは判断の根拠を説明できるかです。
そのため、志望動機には「一人で対応した経験」よりも「判断に迷ったときにどう動いたか」を書くほうが噛み合います。
病棟で急変時に医師へ報告した場面、家族への説明を担当した場面などは、そのまま材料になります。
クリニックは患者・家族との関係の作り方
クリニックは職員数が少なく、一人が担当する業務の幅が広くなります。
診療の介助に加えて、受付や電話対応、在庫の管理が含まれることもあります。
同じ患者が継続して通うため、接遇と関係の作り方が業務の質に直結します。
書類では、外来の経験、説明や指導を担当した経験、幅広い業務を並行して回した経験が材料になります。
診療科が絞られる分、その領域への関心をどう説明するかも問われます。
3つの形態を並べる
| 形態 | 読まれる力 | 書類に入れる材料 |
|---|---|---|
| 病棟 | チーム医療の中での動き方 | 病床数・受け持ち人数・リーダー業務・連携した職種 |
| 訪問看護 | 一人での観察と判断 | 判断に迷ったときの行動・家族への説明・医師への報告 |
| クリニック | 接遇と継続的な関係 | 外来経験・指導や説明の担当・並行して回した業務 |
同じ経歴でも、どの形態に出すかで前に置く要素が変わります。
1つの志望動機を全部の応募先に使い回すと、どこにも合わない文章になります。
形態別の書き方と例文
病棟から病棟へ移る場合
前の病院を辞める理由と、次の病棟を選ぶ理由が別々に見えると、読み手は結びつけられません。
診療科・病床規模・急性期か回復期かのどれかを軸にして、経験と希望をつなげます。
例文の型
「前職では急性期病棟で〇床を担当し、日勤帯は平均〇名を受け持っていました。入院から退院までの期間が短く、退院後の生活まで関わる機会が限られていたため、回復期の看護に携わりたいと考えるようになりました。貴院は〇〇の患者を中心に受け入れており、これまでの急性期での観察の経験を、退院に向けた支援の場面で活かせると考えています。」
数字の部分は、実際に担当した規模に置き換えます。
病床数と受け持ち人数を入れるだけで、抽象度がかなり下がります。
病棟から訪問看護へ移る場合
「一人で判断できるか」に答える構成にします。
病棟での経験のうち、自分で状況を見て動いた場面を1つ選んで具体的に書きます。
例文の型
「病棟では夜勤帯に〇名を担当し、状態の変化に気づいた際の初期対応と医師への報告を行ってきました。その中で、退院後に自宅でどう過ごしているかを知る機会がないことに物足りなさを感じていました。生活の場で継続的に関わる看護に携わりたいと考え、訪問看護を志望しています。」
移動手段やオンコールの体制は、志望動機ではなく確認事項です。
書類に不安として書くのではなく、面談で質問する項目に回します。
病棟からクリニックへ移る場合
勤務時間の希望が動機に含まれることは珍しくありません。
ただし条件だけを並べると、業務への関心が薄い印象になります。
条件は1文にとどめ、業務の話を先に置きます。
例文の型
「〇〇科の病棟で〇年間、検査の介助と患者・家族への説明を担当してきました。継続して通院する患者と長く関わる働き方に関心があり、〇〇科の外来を中心とする貴院を志望しました。育児のため夜勤のない勤務を希望していますが、日勤帯では処置と受付対応を含めて幅広く担当したいと考えています。」
診療科を変える場合
未経験の診療科へ移るときは、経験のある領域との共通点を1つ挙げます。
使用する機器、対象となる年齢層、処置の性質など、どこかは重なるはずです。
共通点を書いたうえで、学び直しが必要な範囲を自分の言葉で書くと、準備の姿勢が伝わります。
ブランクがある場合の書き方はブランクがあっても看護師に戻れる?にまとめています。
医療機関以外へ移る場合
企業の健康管理室や介護施設など、医療機関以外を志望する場合は、前提の説明が1段増えます。
読み手が看護の現場を細かく知っているとは限らないためです。
処置の名称を並べるより、何を判断し誰に伝えていたかという形に置き換えます。
保健指導、健康診断の結果を踏まえた面談、感染対策の運用など、病棟の外でも通じる業務を先に挙げると接点が見えます。
企業で働く場合の求人の探し方は病棟から企業看護師になれる?にまとめています。
雇用形態によって前へ置くものが変わる
常勤は継続して担える範囲を書く
常勤の募集では、夜勤・オンコール・委員会活動・後輩の指導まで含めた稼働が前提になります。
志望動機にも、単発の経験ではなく継続して担える範囲を書きます。
夜勤の可否、受け持てる人数、これまで続けてきた業務の期間が材料になります。
非常勤・パートは働ける時間を具体的に書く
非常勤やパートの募集では、シフトのどこに入れるかが実質的な論点になります。
「柔軟に対応できます」ではなく、曜日と時間帯で書くほうが確実です。
制約がある場合も、先に書いておくほうが入職後のずれを防げます。
看護師の求人がすべて常勤とは限らず、派遣や複数の雇用形態が並ぶ場面もあります。
形態ごとの違いは看護師の求人はすべて正社員?にまとめています。
通りにくくなる書き方
前職の否定で終わっている
「人間関係が悪かった」「残業が多かった」で止まると、同じ理由でまた辞めるのではないかという疑問が残ります。
事実として書くこと自体は問題ありませんが、そのあとに続く1文があるかどうかで読まれ方が変わります。
条件だけが理由になっている
給与、休日、通勤時間はどの応募者にとっても重要ですが、それだけで構成された志望動機は、他の職場にもそのまま出せる文章になります。
条件は最後に短く置き、業務に関する話を先に書きます。
どの病院にも出せる文章になっている
「地域医療に貢献したい」「患者に寄り添う看護がしたい」は、応募先を入れ替えても成立します。
応募先の病床数、診療科の構成、力を入れている領域のうち1つを本文に入れると、その職場に向けた文章になります。
求人票のどこを読むかは求人票のどこを読むかにまとめています。
書き始める前に手を動かすこと
経験を数えて書き出す
担当した診療科、病床数、受け持ち人数、経験した処置、使用した機器、夜勤の回数を箇条書きにします。
この作業を先に済ませると、志望動機に入れる材料を選ぶだけの状態になります。
書類全体の作り方は職務経歴書はいつ作ればよいかを参照してください。
求人票の言葉を拾う
応募先の求人票に並んでいる言葉のうち、自分の経験と重なるものに印をつけます。
印のついた語を志望動機の中に1つか2つ入れると、求人票を読んだうえで応募したことが伝わります。
書き写すのではなく、自分の経験と結びつけた形で使います。
声に出して読む
書き終えたら一度声に出して読みます。
文が長すぎる箇所、同じ語が続く箇所、事実が入っていない段落は、読んだときに引っかかります。
書類で書いた内容は面接でも深掘りされるため、口に出して違和感のある文章は先に直しておきます。
まとめ
- 志望動機は転職理由とセットで読まれるため、先に転職理由を1文にしてから書き始める
- 転職回数は平均2回で1回が最多。
回数よりそれぞれの移動で何を選んだかが説明の対象になる - 病棟はチームの中での動き方、訪問看護は一人での判断、クリニックは継続的な関係が読まれる
- 形態が変われば前に置く材料も変わるため、1つの文章を全応募先に使い回さない
- 前職の否定・条件のみ・どこにでも出せる文章の3つは、通りにくくなる典型
- 書く前に病床数や受け持ち人数を数え、求人票の語と自分の経験を結びつける



