臨床の経験を重ねると、次にどの方向へ専門性を伸ばすかという問いが出てきます。
看護師にはそのための仕組みが複数あり、名称が似ているために混ざりやすくなっています。

特定行為研修もその一つです。
認定看護師や専門看護師と同じ枠組みのものだと受け取られることがありますが、根拠になっている仕組みが違います。
ここでは、特定行為研修が何に基づく制度なのか、研修がどう組まれているのか、転職の場面でどう扱えばよいのかを順に整理します。

特定行為研修は法律に基づく制度

保健師助産師看護師法に位置づけられている

特定行為研修は、保健師助産師看護師法第37条の2に定められた制度です。
同条は、特定行為を手順書により行う看護師に対して、指定研修機関でその特定行為の区分に係る研修を受けることを求めています。

ここでいう手順書とは、医師または歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるために、指示として作成する文書を指します。
対象となる患者の病状の範囲や、診療の補助の内容などが記載されるものです。
制度の出発点はこの手順書という仕組みにあります。
手順書が無ければ、そもそも特定行為研修の対象となる場面も生まれません。

認定看護師・専門看護師とは制度が別

同じ「専門性を示す仕組み」として並べられがちですが、認定看護師・専門看護師は日本看護協会が運営する認定制度です。
これに対して特定行為研修は、法律に根拠を持つ制度で、研修を実施できる機関も厚生労働大臣が指定します。

運営する主体が違うということは、要件も、受講先も、更新の扱いも別々に調べる必要があるということです。
片方の情報を読んでもう片方の要件だと思い込むと、準備の前提がずれます。
認定看護師・専門看護師については認定看護師・専門看護師のキャリアパスにまとめているため、両方を検討している場合は分けて読んでください。

特定行為は21区分38行為で構成される

特定行為は、患者の身体機能や臨床領域ごとに21の区分へ整理されています。
各区分には1つ以上の行為が含まれ、合計は38行為です(出典: 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」)。

この構造を知っておくと、研修の探し方が変わります。
受講の単位は行為そのものではなく区分です。
自分が関わりたい場面がどの区分に含まれるのかを先に確認すると、どの研修を受けるかという問いに具体的に答えられます。
区分の名称と含まれる行為は厚生労働省が公表しているため、二次的なまとめではなく公式の一覧で確かめるのが確実です。

研修は共通科目と区分別科目の2階建て

すべての受講者が共通科目を履修する

特定行為研修は、共通科目と区分別科目の2階建てで組み立てられています。
共通科目は区分にかかわらず全員が履修する部分で、臨床推論や医療安全といった土台にあたる内容が置かれます。

つまり、どの区分を選んでも最初に通る道は共通です。
複数の区分を目指す場合でも、共通科目を繰り返し履修する構成にはなっていません。
この点は、学習にかかる時間の見積もりに関わります。

区分別科目は選んだ区分ごとに履修する

区分別科目は、受講する区分に対応した部分です。
21区分のうちどれを選ぶかによって、履修する内容も、必要になる実習の場面も変わります。

複数の区分を修了している人もいれば、一つの区分に絞っている人もいます。
「特定行為研修を修了した」という表現だけでは、何ができる状態なのかは分かりません。
経歴として書くときも、読み手にとっても、区分名まで示されているかどうかで意味が変わります。

指定研修機関で履修する

研修を実施できるのは、厚生労働大臣が指定する指定研修機関です。
医療機関、大学、職能団体などが指定を受けており、機関ごとに開講している区分が異なります。

そのため、受講先を探す作業は「近くにある機関を探す」ことと同じではありません。
先に確認するのは、自分が受けたい区分を開講しているかどうかです。
そのうえで、通学が必要な日数、eラーニングで進められる範囲、実習をどこで行うかを見ていく順序になります。
募集の要件や開講の状況は年度ごとに変わるため、厚生労働省が公表している指定研修機関の一覧と、各機関の募集要項で確認します。

受講を検討する段階で確認すること

勤務との両立をどう組むか

研修には、講義と実習の時間を確保する必要があります。
夜勤を含むシフトのまま通学や実習の日程を組めるかどうかは、在職している施設の体制によって変わります。

施設が受講を業務として扱う場合と、個人の学習として扱う場合では、勤務の調整のしやすさがまったく違います。
まず現職の扱いを確認し、その結果から順序を考えるほうが現実的です。
夜勤の条件そのものを先に変えるという選択肢もあり、その場合の見方は夜勤なしで働ける看護師の転職先はどこかにまとめています。

費用と支援の扱いを確認する

受講料や実習にかかる費用の扱いは、施設ごとに違います。
全額を施設が負担する場合、一部を補助する場合、個人負担とする場合があり、補助を受けた場合に一定期間の在籍を求める取り決めが置かれることもあります。

在職中に受講を始めてから転職を考えると、この取り決めが判断の制約になります。
受講の前に、費用の負担と在籍に関する条件を書面で確認しておくほうが、あとから選択肢が狭まりません。

修了後にその行為を行える体制があるか

研修を修了しても、手順書を作成する医師との協働が成り立つ場でなければ、その行為を実務として行う場面は生まれません。
診療体制や配置によって、修了者に役割を用意しているかどうかが変わります。

そのため、受講を検討する段階で、その区分の役割を置いている勤務先がどこにあるのかを求人から確認しておく価値があります。
学び終えてから探し始めるより、進路が具体的になります。

サービスの側は特定行為で分かれていない

求人を絞り込む条件として扱う

こうした事情から、修了者を対象にした専用の窓口があるのかという問いが出てきます。
当サイトで整理している看護師向けサービス15件のデータでは、特定行為研修の修了者に特化したサービスは確認できていません。
特定行為研修は、サービスを選ぶ軸ではなく、求人を絞り込む条件として扱うことになります。

進め方としては、全国を対象とする登録型のサービスで求人を検索し、記載の有無を見比べる形が現実的です。
レバウェル看護・ナースではたらこ・リニューケア・ジストリー・ナースJJはいずれも全国を対象とする登録型で、会員登録を済ませた段階で求人を確認できます。
登録型の進み方は看護師は面談なし・電話少なめで転職サービスを使える?にまとめています。

面談実施型では体制を質問できる

手順書の運用や、修了者に役割を置いているかどうかは、求人票からは読み取れないことがほとんどです。
当サイトのデータでは、MCナースネットが全国を対象とする面談実施型、クリアス看護が北海道・愛知・大阪・福岡を対象とする面談実施型です。

対応地域内であれば、こうした質問を投げる相手として使えます。
いずれも対象は正看護師・准看護師・保健師・助産師の資格保有者で、クリアス看護は48歳以下を対象としています。
対象から外れている場合、登録しても紹介には至りません。
対応地域の考え方は看護師は地方でも転職サービスを使える?で扱っています。

雇用形態によっては研修の扱いが変わる

院内の研修や委員会活動に参加できるかどうかは、雇用形態によって変わることがあります。
実習の受け入れや勤務の調整も同様です。

受講を前提に勤務先を選ぶ場合、雇用形態は先に決めておく項目になります。
正社員以外の選択肢を含めた整理は看護師の求人はすべて正社員?にまとめています。

取得と転職の順序をどう決めるか

現職の支援制度を確認してから順序を決める

受講の時間を確保できない環境のまま始めると、途中で止まりやすくなります。
現職に支援制度があるなら、修了してから動くほうが負担は小さくなります。
逆に支援が無いなら、先に環境を整えるという順序も選択肢です。

どちらが良いかは、現職の扱いによって変わります。
まず現職の制度を確認し、その結果で順序を決めるという進め方が現実的です。
在職しながら進める場合の注意点は在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。

経歴には区分名と実際の関わりを並べて書く

書類に「特定行為研修修了」とだけ書くと、読み手には範囲が伝わりません。
修了した区分の名称と、その区分の行為にどのくらい関わってきたかを並べて書くほうが、情報量が増えます。

まだ修了していない段階でも、書けることはあります。
担当してきた診療科、関わった患者の状態、医師と連携した場面を書き出しておくと、修了後の説明にそのまま使えます。
書き出し方は職務経歴書はいつ作ればよいかを参考にしてください。

評価を示す調査データは確認できていない

修了が採用や処遇の場面でどう評価されるかを示す、出典の確認できる調査データは当サイトでは見つかっていません。
そのため、この記事では「修了すれば有利になる」とも「関係ない」とも書きません。

代わりにできるのは、自分の希望する地域と分野で求人を20件ほど集め、特定行為に関する記載が必須要件・歓迎要件・記載なしのどれに当たるかを数えることです。
この作業で得られる数字は、一般論より自分にとって正確な材料になります。
進め方は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。

まとめ

  • 特定行為研修は保健師助産師看護師法第37条の2に基づく制度で、日本看護協会の認定制度とは根拠が違う
  • 特定行為は21区分38行為で構成され、受講の単位は行為ではなく区分
  • 研修は共通科目と区分別科目の2階建てで、厚生労働大臣が指定する指定研修機関で履修する
  • 受講の前に、費用の負担と在籍に関する条件、修了後に役割が置かれる体制があるかを確認する
  • 当サイトのデータでは、修了者に特化したサービスは確認できておらず、求人を絞り込む条件として扱う
  • 経歴には修了の事実だけでなく、区分名と実際の関わりを並べて書く