「管理部門を志望する」という言い方は、実務の上では成立しません。
経理と人事と総務では、日々扱う対象も、必要になる経験も違うためです。
志望動機を管理部門というくくりで書くと、どの職務の募集に出しても中途半端な文章になります。
この記事は、職務ごとに志望動機の中身をどう変えるかを扱います。
求人の探し方や求人票のどこを読むかという段階の話は経理・人事・総務、転職の探し方は違う?で扱っており、この記事はその先の書類に何を書くかに絞ります。
職務によって、向き合う相手が違う
経理は数字、人事は人、総務は範囲
経理が扱うのは日々の取引と決算の数字です。
締切が制度で決まっており、正確さと期限が業務の中心にあります。
人事が扱うのは人と制度で、社内外の相手との調整が業務に含まれます。
総務が扱うのは会社の運営そのもので、契約、備品、施設、社内の問い合わせまで範囲が広く取られます。
この違いは、志望動機で書くべき内容にそのまま反映されます。
経理では工程、人事では場面、総務では範囲が、それぞれ書き出しの単位になります。
「スキルアップ」は職務を問わず書かれる
管理部門・士業の転職理由では「スキルアップ」が34.0%で最多となっており、経理・財務、人事・総務、法務のいずれの職務でもこれが転職理由の最多で、それぞれ4割以上を占めています(出典: MS-Japan)。
つまり、志望動機に「スキルアップしたい」と書いても、他の応募者と同じことを書いていることになります。
問題は言葉が悪いことではなく、何のスキルかが職務ごとに違うという点です。
以下では、それぞれの職務で何に置き換えるかを整理します。
求人票の読み所と、志望動機の書き所は対応する
経理の求人票には担当する決算工程が、人事の求人票には採用・労務・制度のどれが中心かが、総務の求人票には業務の列挙が書かれています。
志望動機で書く内容は、この記載に対応させます。
求人票のどこを読むかは経理・人事・総務、転職の探し方は違う?で職務ごとに整理しています。
読み取った内容を、そのまま志望動機の材料にします。
経理の志望動機
担当した決算工程を先に書く
経理の書類では、日次の処理、月次決算、年次決算、開示、税務申告のうち、どこまでを担当してきたかが判断の中心になります。
志望動機を書く前に、この工程を書き出しておきます。
工程が書き出せていれば、志望動機は「いま担当している工程の次に進みたい」という形で自然に組み立てられます。
月次までを担当してきた人が年次と開示に関わりたいと書けば、応募先を選んだ理由と経験が一続きになります。
「スキルアップ」を工程の名前に置き換える
前述のとおり、経理でもスキルアップは転職理由の最多です。
これを志望動機として使うのであれば、伸ばしたい対象を工程の名前で書きます。
連結決算、開示資料の作成、税効果会計、原価計算といった具体名に置き換えるだけで、情報量が変わります。
置き換えた工程が応募先の求人票に書かれているかを確認します。
書かれていない工程を挙げると、その会社では経験できない内容を志望動機に書いたことになります。
募集の背景が人手不足の場合
経理担当者1000名を対象とした調査では、人手不足を感じている割合は50.1%で、要因は「新たな経理人材を採用できないため」が48.1%、「業務の自動化・システム導入が進んでおらず生産性が低いため」が32.1%でした(出典: Sansan株式会社)。
募集の背景に、人手だけでなく仕組みの問題が含まれる場合があるということです。
システムの導入や業務の整理に関わった経験があるなら、それは志望動機の材料になります。
処理する経験と、仕組みを整える経験は別に書き出すと、対応できる範囲が正確に伝わります。
人事の志望動機
採用・労務・制度のどれを志望するか名指しする
人事の求人は「人事」とだけ書かれていても、実際には採用担当のみを指す場合と、労務や制度設計まで含む場合があります。
志望動機でも、この3つのどれを中心に考えているかを名指しします。
名指ししないまま「人と組織に関わりたい」と書くと、どの領域の経験を確認すればよいかが読み手に伝わりません。
採用なら候補者対応や面接調整、労務なら社会保険や勤怠管理と、対応する経験が変わります。
対人調整は場面の単位で書く
人事の業務では、社内の部署、経営層、応募者、外部の機関といった相手との調整が発生します。
「調整力があります」と書いても中身が伝わらないため、調整した場面を1つ挙げます。
要望が食い違っていた状況、自分がどう情報を整理したか、どこで合意に至ったかまで書きます。
相手が誰で、何が対立していたかを書くと、対人調整の経験として読める形になります。
組織の規模によって役割が変わる
人事部が複数名いる企業と、管理部門が数名で兼務している企業では、担当する範囲が変わります。
応募先がどちらかによって、志望動機で前面に出す経験も変わります。
未経験から人事を目指す場合の進め方は未経験から人事の仕事を始めるにはどうする?で扱っています。
総務の志望動機
範囲が企業ごとに違うことを前提に書く
総務は、契約や備品の管理、施設の運用、社内の問い合わせ対応、株主総会の事務など、扱う範囲が企業ごとに変わります。
求人票に列挙されている業務を控え、自分が経験している項目と照らし合わせるところから始めます。
志望動機では、この範囲の広さを引き受ける姿勢を示します。
ただし「何でも対応します」では経験の説明になりません。
複数の業務を並行して進めた場面を1つ挙げ、優先順位をどうつけたかまで書きます。
兼務の経験がそのまま材料になる
前職で総務以外の業務を兼務していた場合、その経験は総務の応募でむしろ材料になります。
経理の一部、人事の一部、庶務を同時に扱ってきたのであれば、範囲の広さに対応できる根拠として書けます。
職種名が総務でなくても構いません。
担当した業務を工程の単位まで分解すると、総務の求人票に並んでいる項目と対応する部分が見つかります。
職務別に、書く要素を整理する
| 職務 | 動機の中心に置くもの | 書き出しの単位 | 避けたい書き方 |
|---|---|---|---|
| 経理 | 次に担当したい決算工程 | 日次・月次・年次・開示・申告の工程 | スキルアップという言葉のまま書く |
| 人事 | 採用・労務・制度のどれを志望するか | 調整した具体的な場面 | 人と組織に関わりたいで止める |
| 総務 | 範囲の広さを引き受ける姿勢 | 並行して進めた業務の組み合わせ | 何でも対応しますで終える |
3つとも「スキルアップしたい」という同じ言葉から出発しても、置き換える先がまったく違います。
置き換えた後の言葉が、応募先の求人票に書かれているかを確認するところまでが作業です。
未経験から管理部門を志望する場合
職務を1つ選んでから書き始める
未経験から応募する場合でも、志望動機は職務を決めてから書きます。
「管理部門で働きたい」という書き方では、3つのどの募集に出しても対応しない文章になります。
職務ごとの入りやすさや必要な経験の違いは未経験から管理部門に転職できる?で扱っています。
まず読んで職務を絞り、それから書き始めるほうが手戻りがありません。
前職の中の管理業務を切り出す
営業事務で請求書を扱っていた、店舗で発注と在庫を管理していた、シフトを作成していたといった経験は、管理部門の業務と接する部分があります。
職種名ではなく、担当した作業の単位で書き出します。
書き出したものを、応募する職務の求人票の業務内容と突き合わせます。
対応する項目があれば、それが志望動機の中心に置ける材料です。
書き方の基本の型は転職の志望動機は何を書く?で整理しています。
管理職として応募する場合
動機に組織の話が入る
管理職として応募する場合、志望動機に自分の業務だけでなく、組織をどうするかという話が加わります。
担当した人数、育成の経験、部署をまたぐ調整の経験が材料になります。
2025年1〜6月の中途採用で管理職を採用した企業の割合は49.6%で、2021年の38.9%から10.7ポイント増加しています(出典: マイナビキャリアリサーチLab)。
管理職としての中途入社そのものは特別な形ではありません。
実態は管理部門から管理職に転身できる?で扱っています。
年代によって書く分量が変わる
年代が上がるほど、経験の積み上がりを説明する分量が増えます。
逆に、若い年代では今後何を担当したいかの比重が上がります。
年代ごとの見方は経理の転職は年代でどう変わるかで整理しています。
書く前に確認しておくこと
職務が決まっていない段階では登録型で比べる
どの職務で探すかを決めきれていない場合は、会員登録から利用が始まる登録型のサービスで、経理と人事の求人を並べて要件を比べる方法があります。
職務が決まってから、面談を伴うサービスに進むという順序が取れます。
方式の違いは管理部門は登録だけで転職できる?にまとめています。
求人を見ながら書く
志望動機を先に完成させると、応募先の業務内容と噛み合わないことがあります。
応募したい職務の求人をいくつか読み、業務内容の欄に出てくる語を確認してから書きます。
手順は職務経歴書はいつ作ればよいかで整理しています。
書いた内容は面接で掘り下げられます。
工程や場面を具体的に書いた部分ほど、詳しく聞かれます。
想定される質問の型は転職面接の準備にまとめています。
まとめ
- 管理部門の志望動機は、経理・人事・総務のどれに応募するかで書く内容が入れ替わる
- 転職理由の最多は3職務とも「スキルアップ」で、そのまま書いても他の応募者と重なる
- 経理は決算工程の名前、人事は調整した場面、総務は並行して進めた業務と、置き換える先が違う
- 未経験から応募する場合も、職務を1つ選んでから書き始める
- 管理職としての応募では、自分の業務に加えて組織をどうするかが動機に入る
- 置き換えた言葉が応募先の求人票に書かれているかを、最後に確認する



