薬剤師の転職を考えるとき、多くの人がまず思い浮かべるのは常勤の正社員としての勤務です。
ただし薬剤師の求人には、派遣やパートといった契約の形も一定数あり、サービスの側もそれを前提に分かれています。
雇用形態は、勤務先の業態や勤務時間とは別の軸です。
ここでは、正社員と派遣で何が変わるのか、当サイトのデータで雇用形態がどう分かれているのか、派遣を選ぶ場合に何を確認するのかを整理します。
条件を変える手段は勤務先の変更だけではない
長く働き続けたいという意向と、条件への関心は両立する
マイナビの「薬剤師白書2024年度版」では、「今後も薬剤師として長く働き続けたい」が43.1%、「関心のある仕事をしてみたい」が39.9%となっています。
長く働き続けるために必要なものとしては「良好な人間関係」が72.3%、「給与などの待遇面の充実」が68%と挙げられています(出典: 医療サポネット)。
長く続けたいという意向と、そのために条件が整っている必要があるという認識が同時に存在していることが読み取れます。
ここで見落とされやすいのが、条件を変える方法は勤務先を変えることだけではないという点です。
同じ業態のままでも、契約の形を変えれば勤務日数や勤務地の決まり方が変わります。
需給の見通しは時期によって変わると予測されている
厚生労働省の需給推計では、2030年頃までは需給が同程度で推移し、それ以降は供給過剰になると予測されています(出典: 厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」とりまとめ)。
この予測は、いま働き方を選ぶ際の前提になります。
将来にわたって同じ条件で求人が出続けるとは限らないため、契約の形を選ぶときも、いまの生活の都合と数年後の見通しの両方を材料にする必要があります。
市場全体の状況は薬剤師は将来的に供給過剰になる?にまとめています。
常勤・非常勤という呼び方と契約の形は別
薬局や病院の求人では「常勤」「非常勤」という言葉が使われます。
これは勤務時間の区分に近い呼び方で、雇用契約の形とは一致しません。
非常勤がパートを指す場合も、派遣を指す場合もあります。
求人票を読むときは、勤務時間の区分と、契約を結ぶ相手が誰かを分けて確認します。
この2つを混ぜたまま並べると、条件の比較になりません。
正社員と派遣で何が変わるか
雇用主が勤務先ではなくなる
派遣で働く場合、雇用契約を結ぶ相手は派遣元の会社であり、実際に働く薬局や病院ではありません。
給与の支払いと社会保険の手続きは派遣元が行い、日々の業務の指示は派遣先から受けます。
そのため、相談する相手が場面によって変わります。
調剤や業務の進め方は派遣先、契約や待遇に関することは派遣元です。
窓口が2つあるという前提を持っておくと、条件の食い違いが起きたときに動きやすくなります。
賞与・退職金・昇給の扱い
派遣やパートでは、賞与や退職金といった正社員特有の待遇が無いことが一般的です。
時給の水準だけを見ると正社員の給与を上回るように見えることがありますが、年収ベースで並べると差が出ることがあります。
比較するときは、時給に想定の勤務時間を掛けた金額と、正社員の年収を並べます。
あわせて、正社員の求人に含まれる手当のうち、派遣では支給されない項目がどれかを確認します。
金額の見方は転職で年収は上がる?で扱っています。
勤務地と勤務日数の決め方
派遣では、勤務先や勤務日数を契約の段階で決めやすくなります。
週の勤務日数や勤務時間帯を条件として先に示せるため、育児や介護、学習の予定と組み合わせやすい形です。
一方で、契約に含まれない業務は原則として担当しません。
負担が限定されるという意味では利点ですが、管理薬剤師や在宅対応といった経験を積みたい段階では制約になります。
何を優先するかで評価が変わる項目です。
研修と認定資格の扱い
正社員では、社内の研修や勉強会、学会への参加が業務として扱われることがあります。
派遣ではこれらの扱いが契約によって変わり、参加できる場合とできない場合があります。
認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得を視野に入れている場合、研修の機会をどう確保するかは事前に確認しておく項目です。
取得の支援制度は求人票に記載されていることがあり、記載の有無自体がその職場の方針を示す情報になります。
当サイトのデータでは12件中4件が複合
4件はいずれも派遣を含む
当サイトが扱っている薬剤師向けサービスは12件です。
このうち、扱う雇用形態が正社員に限定されず複合として登録されているのは4件で、残りの8件は正社員を対象としています。
4件は進み方が分かれています。
| サービス | 進み方 | 扱う雇用形態 |
|---|---|---|
| お仕事ラボ | 申込型 | 複合 |
| 薬剤師の派遣・転職 お仕事ラボ | 面談実施型 | 複合 |
| ファルマスタッフ | 面談実施型 | 複合 |
| アイリード | 面談実施型 | 複合 |
申込型が1件、面談実施型が3件です。
派遣を含めて探す場合、会員登録だけで求人を眺めて終えられる形は当サイトのデータでは確認できていません。
担当者とのやり取りが前提になるという点は、あらかじめ想定しておく必要があります。
同じ名称で入口が2つに分かれているものがある
お仕事ラボは、申込型として掲載されているものと、面談実施型として掲載されているものが別々に登録されています。
同じ名称でも、どちらの入口から入るかで進み方が変わるということです。
サービス名だけで判断すると、想定と違う進み方になることがあります。
登録の前に、その入口が申し込みで完結する形なのか、面談まで進む形なのかを確認しておきます。
分類の違いは登録型と面談型の転職サービス、どちらを選ぶ?にまとめています。
残り8件は正社員が対象
正社員として探す場合は、8件が候補になります。
薬剤師向け12件全体で見ると、会員登録から利用が始まる登録型は3件で、いずれも正社員を対象としています。
まず求人の相場を見たい段階ではこの3件、応募を具体的に考える段階では面談を伴うサービスという使い分けができます。
なお、正社員を対象としているサービスでも、パートの求人をまったく扱っていないとは限りません。
当サイトのデータは各サービスの対象として整理したものであり、掲載求人のすべてを網羅したものではありません。
実際の扱いは各サービスのサイトで確認してください。
対応地域では候補が分かれない
薬剤師向けの12件は、いずれも全国を対応地域としています。
勤務地によって使えるサービスが変わる構成にはなっていないため、候補を分ける主な軸は対応地域ではなく、進み方と雇用形態の2つになります。
この点は他の職種と事情が違います。
地域限定のサービスが多い職種では対応地域が最初の絞り込み条件になりますが、薬剤師ではその段階が省けます。
派遣で働く前に確認すること
就業条件明示書で業務範囲を確認する
派遣として働き始める際には、業務内容・就業場所・期間・指揮命令者などを記した書面が派遣元から示されます。
求人の案内と記載が食い違うことがあるため、確認するのは就業を始める前です。
薬剤師の派遣では、調剤のみを担当するのか、監査や服薬指導、在宅対応まで含むのかで負担がまったく変わります。
範囲が曖昧なまま始めると、想定していなかった業務が積み上がることがあります。
同一の派遣先で働ける期間には上限がある
派遣には、同一の事業所や部署で働ける期間に上限が設けられています。
上限に達した後は、派遣先を変えるか、直接雇用への切り替えを検討することになります。
この仕組みを知っておくと、契約の終了を想定の範囲内の出来事として受け止められます。
期間の数え方や例外の扱いには細かい定めがあるため、具体的な適用は派遣元の担当者や労働局の窓口で確認してください。
相談できる相手が現場にいるかを確認する
小規模な薬局では、勤務する薬剤師が自分1人という体制になる場合があります。
派遣で入る場合、判断に迷ったときに現場で相談できる相手がいるかどうかは、確認しておく価値のある項目です。
体制は求人票からは読み取りにくい部分です。
面談を伴うサービスであれば、店舗の薬剤師の人数、処方箋の応需枚数、募集の背景が増員か欠員かを尋ねられます。
質問は3つほどに絞ると話がまとまります。
雇用形態を決めきれない段階での進め方
条件を固定して雇用形態だけ切り替える
判断できない場合は、勤務地の範囲と業態を固定したうえで、雇用形態だけを切り替えて求人を並べます。
時給と月給、勤務日数、業務範囲がどう変わるかは、10件ずつ並べれば見えてきます。
一般論としての評価より、自分の希望条件で出てくる求人のほうが判断材料になります。
進め方は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。
紹介予定派遣という中間の選択肢
一定期間を派遣として働いた後、双方の合意があれば直接雇用に切り替わる紹介予定派遣という仕組みもあります。
職場の体制を確認したうえで正社員化を判断できる形です。
ただし切り替えは勤務先の採用状況にも左右されるため、実現しなかった場合の動き方も並行して考えておきます。
仕組みの一般的な説明は正社員以外(契約・派遣)で探す選択肢にまとめています。
優先する項目を一つに決める
雇用形態・勤務地・年収・勤務日数のすべてを満たす求人は多くありません。
優先する項目を一つ決めておくと、比較のたびに判断が揺れなくなります。
生活の制約が転職のきっかけであれば、優先すべきは勤務時間や日数であり、雇用形態はそれを実現する手段です。
業態を変えるかどうかとあわせて考える場合は薬剤師の業態変更はできる?も参考になります。
まとめ
- 常勤・非常勤という区分と、正社員・派遣という契約の形は別の分類として読む
- 派遣では雇用主が勤務先ではなくなるため、業務と契約で相談する窓口が分かれる
- 当サイトが扱う薬剤師向けサービス12件のうち、雇用形態が複合なのは4件で、残り8件は正社員が対象
- 複合の4件は申込型1件と面談実施型3件で、担当者とのやり取りが前提になる
- 12件すべてが全国対応のため、候補を分ける軸は進み方と雇用形態の2つ
- 派遣では就業条件明示書の業務範囲と、同一の派遣先で働ける期間の上限を確認する



