調剤薬局から病院へ、あるいは企業へ。
薬剤師の転職では、同じ業態の中で移るのか、業態そのものを変えるのかで検討する内容が変わります。
「そもそも変えられるのか」という問いに一般論で答えるのは難しく、確認できる材料も限られています。
ここでは、確認できていないことを明示したうえで、可否と難易度を自分の条件で判断する方法を整理します。

業態変更の難易度を示す出典は確認できていない

実施率や成功率を示す調査が見つからない

当サイトで調べた範囲では、薬剤師がどのくらいの割合で業態を変えているか、変えた場合の選考がどうなるかを示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
「調剤から病院は難しい」「企業は狭き門」といった説明を掲げている記事は存在しますが、調査の実施主体や対象人数が明示されていないものが多く、根拠として使える状態ではありませんでした。

同様に、薬剤師の転職回数の平均についても、信頼できる調査データは確認できていません。
「2〜3回程度」とする記述はありますが、調査に基づかない執筆者個人の見解であり、出典としては使えないものでした。
根拠のない数字を判断の前提に置かないという方針で、以下は確認できる材料に絞って進めます。

難易度を語る記述を読むときは、何を根拠にしているかを確認します。
求人の集計なのか、担当者の見立てなのか、書き手個人の経験なのかで情報の重みは変わります。
示されていない場合は、参考程度として扱うほうが安全です。

難易度は一般論ではなく求人単位で決まる

そもそも難易度は、業態の組み合わせだけで決まるものではありません。
同じ「調剤薬局から病院へ」でも、地域、病床数、募集の背景によって応募要件が変わります。
一般論として難易度を語ると、実際には応募できた求人まで最初から除外することになります。

判断に使えるのは、公開されている求人の応募要件です。
ここには、その求人が誰を対象にしているかが直接書かれています。
一般論を読むより、応募要件を数えるほうが早く結論に近づきます。

応募要件は公開されている情報であり、誰でも同じものを確認できます。
判断が分かれるとすれば、要件の読み方ではなく集めた求人の範囲のほうです。
勤務地と経験年数の条件を先に決めてから数え始めます。

資格は共通でも、評価される経験は業態ごとに違う

必須要件と歓迎要件を分けて読む

求人票の応募要件は、多くの場合「必須」と「歓迎」に分かれています。
特定の業態での実務経験が、どちらに書かれているかで位置づけが分かります。
必須要件に入っていれば選考に進む条件ですが、歓迎要件であれば加点材料という扱いです。

移りたい業態の求人を20件ほど集め、他業態からの応募を受け付けているものが何件あるかを数えます。
「できるかどうか」ではなく「何件あるか」で見ると、判断は具体的になります。
件数が少なければ、勤務地の範囲を広げるか、時間をかけて求人を待つかという次の選択に進めます。

件数がゼロでない限り、可否の答えは「求人による」になります。
一般論として可否を先に決めてしまうと、この確認をしないまま結論を出すことになります。
数えるのは1時間ほどで終わる作業です。

領域の需給によって求人の出方が変わる

薬剤師全体の有効求人倍率は、2015年の7.18倍から2021年には2.68倍まで下がりました(出典: Method Innovation)。
ただし全体の平均であり、業態ごとの内訳ではありません。

領域による差については、都市部が飽和の傾向にある一方で、地方や在宅医療・病院の領域では慢性的な不足が続くと見られています(出典: ジョブジョブ)。
不足が指摘されている領域では、他業態からの応募を受け付ける求人が出てくる可能性があります。
企業への移動について同様に確認できる出典は見つかっていないため、こちらは求人を数えて判断します。

同じ業態でも、地域によって求人の出方は変わります。
勤務地の範囲を広げられるかどうかは、業態を変えられるかどうかと同じくらい結果に影響します。
範囲を2段階に分けて数えると、この差が見えてきます。

業態をまたぐときに整理しておくもの

経歴は業態ではなく業務の単位で書き出す

「調剤薬局に7年」という書き方は、同じ業態の相手にしか伝わりません。
処方箋の応需科目、在庫と発注の管理、在宅への対応、後輩の指導、レセプトの確認といった業務の単位に分けて書き出すと、他の業態でも読める形になります。

書類はまとめて完成させようとせず、求人を見ながら少しずつ足していくほうが進みます。
応募先の要件に出てくる語と、自分の経歴の語を突き合わせる作業がそのまま準備になります。

業態が変わっても引き継げる業務はあります。
処方内容の確認、記録の管理、他職種とのやり取りは、多くの勤務先で発生する業務です。
共通する部分を先に書き出しておくと、経歴が実際より短く見える状態を避けられます。

変えたい条件を一つに絞る

業態を変えること自体が目的なのか、それによって変えたい条件があるのかは、先に区別しておきます。
マイナビの「薬剤師白書2024年度版」では、長く働き続けるために必要なものとして「良好な人間関係」が72.3%、「給与などの待遇面の充実」が68%と挙げられています(出典: 医療サポネット)。
同じ調査では「今後も薬剤師として長く働き続けたい」が43.1%、「関心のある仕事をしてみたい」が39.9%となっています。

条件を変えたいだけであれば、同じ業態の中で解決する求人もあります。
業態変更は手段であって目的ではないという前提で、変えたい条件を一つ決めておくと、選択肢を必要以上に狭めずに済みます。
業態を絞り込む段階の比較はドラッグストアと病院、薬剤師の転職はどう違う?で扱っています。

変えたい条件が待遇であれば、業態を変えずに解決できる場合があります。
逆に、業務の中身そのものを変えたいのであれば、業態の変更が選択肢に入ります。
目的と手段の対応を先に決めておくと、求人を見る範囲も定まります。

サービス側で確認できること

業態をまたぐ相談は面談実施型が向く

当サイトが整理している薬剤師向けサービス12件のうち、面談の実施を伴う面談実施型は6件です。
薬剤師の派遣・転職 お仕事ラボ、ファルマスタッフ、アイリード、ヤクジョブ、MC─ファーマネット、セルワーク薬剤師が該当します。

業態をまたぐ場合、求人票の要件だけでは判断できない部分が残ります。
「この地域で、他業態からの応募を受け付けている求人はあるか」という問いは、求人を日常的に扱っている相手のほうが具体的に答えられます。
方向が決まっていない段階の相談については薬剤師は相談だけでサービスを使ってよい?にまとめています。

面談の場では、応募の可否だけでなく書類の書き方についても聞けます。
業態をまたぐ場合、経歴のどの部分を前に出すかは判断が要ります。
応募先の要件と自分の経歴の対応を確認しておくと、書類の整理が進みます。

他業態の求人はまず登録型で見る

会員登録から利用が始まる登録型は、ファーマキャリア、レバウェル薬剤師、ファゲットの3件です。
移りたい業態の求人がどのくらい出ているかを確かめるだけであれば、この段階では登録型のほうが手間がかかりません。

なお薬剤師向け12件はすべて全国を対象としています。
勤務地の希望を広げても使えるサービスが減らないため、業態を変えるために範囲を広げる場合も選択肢は保たれます。
雇用形態については、正社員として登録されているサービスと、正社員と派遣の双方を含む複合として登録されているサービスがあります。

対象となる資格の条件も、サービスごとに定められています。
薬剤師免許の保有を条件としているものが中心で、資格の取得見込みの方を対象に含めているサービスもあります。
申し込みの前に対象条件を読んでおくと、登録し直す手間が省けます。

進め方の目安

在職中に進める

業態を変える転職は、求人が出てくるまでに時間がかかることがあります。
収入が続いている状態であれば、条件が合わない求人を見送る判断ができます。
進め方は在職中の転職活動はどう進める?で扱っています。

在職中は面談や見学に充てられる時間が限られるため、連絡手段と対応可能な時間帯は最初に伝えておきます。
行き違いが減り、結果として期間も短くなります。

業態を変える場合、見学や面談の回数が増えることもあります。
勤務表が確定した時点で候補日を出せるようにしておくと、日程の調整が滞りません。
候補日は2つか3つ用意しておくと往復が減ります。

期間を逆算する

転職活動の期間は3〜6か月が目安とされています(出典: マイナビ転職)。
業態を変える場合は、求人を待つ時間が加わることを見込んでおきます。

動き始める時期の考え方は薬剤師の転職に適した時期はある?にまとめています。
求人が出る時期そのものには確認できる出典がないため、自分の条件から逆算する方法を整理しています。

まとめ

  • 業態変更の難易度や実施率を示す、出典の確認できる調査は見つかっていない
  • 判断材料は求人の応募要件。
    移りたい業態の求人を20件集め、他業態からの応募を受け付けている件数を数える
  • 地方・在宅医療・病院の領域では不足が続くと見られている。
    企業については確認できる出典がない
  • 経歴は業態ではなく業務の単位で書き出すと、他の業態でも読める形になる
  • 業態変更は手段であり、変えたい条件を一つ決めてから求人を見る