求人票や募集要項で「認定薬剤師の取得支援あり」「専門薬剤師歓迎」という記載を見かけます。
ただし、この2つが何を指すのかは説明されないまま使われていることが多く、違いを整理する機会がありません。
ここでは制度の仕組みそのものを扱います。
どちらを取れば転職で有利になるかという話はしません。
その理由も後半で書きます。
「認定」と「専門」は同じ制度の中で段階が分かれている
認定する主体は一つではない
薬剤師の認定制度には、全体を統括する単一の機構があるわけではありません。
学会や職能団体が、それぞれ独立した制度を運営しています。
そのため「認定薬剤師」という言葉は、特定の一つの資格を指す固有名詞ではありません。
同じ呼び名でも、どの団体が認定しているかによって、要件も更新の仕組みも変わります。
求人票に「認定薬剤師」とだけ書かれている場合、どの制度を指しているかまでは書かれていないことがあります。
確認する対象は資格名ではなく認定団体の名前です。
一般には専門のほうが要件が積み上がる
多くの制度では、認定が一定の研修受講や実務経験を満たしたことを示し、専門はその上に特定領域での症例や学術業績、認定試験といった要件が積み上がる構造をとっています。
さらに指導者の段階を別に置いている制度もあります。
つまり、認定と専門は無関係の2つではなく、同じ領域の中で段階が分かれていると理解するほうが実態に近くなります。
段階が上がるほど、特定の領域に継続して関われる勤務環境が前提になります。
年数や単位数をここでは要約しない
実務経験の年数、研修の単位数、必要な症例の数、更新の周期といった要件の中身は、制度ごとに異なり、改定もされます。
当サイトではこれらの数値を要約せず、各制度を運営する団体の公式の案内で直接確認することを勧めます。
要件は個人の経歴によって当てはまり方が変わります。
「実務経験◯年」と書かれていても、どの期間が算入されるかは制度の定めによります。
二次的なまとめより、一次の資料を読むほうが確実です。
主な運営団体と対象領域
日本医療薬学会が運営する制度
一般社団法人日本医療薬学会は、がんや薬物療法、地域における薬学的ケアといった領域について、専門薬剤師および指導薬剤師の認定制度を運営しています。
学会の会員であることや、所定の研修・実績を要件に含む形が一般的です。
対象領域の区分、申請の時期、更新の要件は学会の公式ページに掲載されています。
取得を検討する段階では、まず自分の勤務先で要件に必要な経験を積めるかどうかを照らし合わせることになります。
日本病院薬剤師会が運営する制度
公益社団法人日本病院薬剤師会も、専門薬剤師・認定薬剤師の制度を運営しています。
感染制御、精神科、妊婦・授乳婦、HIV感染症といった領域が対象に挙げられています。
こちらも、対象領域ごとに要件が定められています。
病院での勤務を前提とした領域が含まれるため、勤務先の機能によって関われるかどうかが変わります。
領域は勤務先の機能と結びついている
がん、感染制御、精神科といった領域は、その診療を行っている施設でなければ、症例に関わる機会そのものを作れません。
制度の要件を満たせるかどうかは、本人の意欲より先に、勤務先がその領域の患者を扱っているかで決まります。
この構造は看護の認定制度と共通しています。
看護師側の整理は認定看護師・専門看護師のキャリアパスにまとめています。
取得を目指す段階では、その領域の役割が置かれている勤務先はどこかを求人から確認しておくと、進路が具体的になります。
制度が薬局の認定と結びついている部分がある
認定薬局という枠組みが2021年8月から始まっている
薬機法(医薬品医療機器等法)に基づく認定薬局の制度が、2021年8月から始まっています。
地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の2種類があり、いずれも都道府県知事が認定する仕組みです。
このうち専門医療機関連携薬局は、傷病の区分ごとに認定される形をとっています。
要件の一つとして、その分野について外部の機関の認定を受けた薬剤師が勤務していることが挙げられています。
制度の詳細と現行の要件は改正されることがあるため、厚生労働省または各都道府県の案内で確認してください。
個人の認定が施設側の要件に組み込まれている
ここで注目したいのは、個人が取得した認定が、薬局という施設側の制度要件に組み込まれている点です。
資格手当が付くかどうかという話とは別の次元で、薬局側が認定を受けた薬剤師を必要とする構造があるということです。
そのため、募集要項に「認定の取得を支援する」という記載が置かれている場合、その職場が何を目指しているのかが読み取れることがあります。
個人の学習支援の話なのか、施設としての認定に関わる話なのかで、入職後に求められる動き方が変わります。
制度上の接点と、採用での評価は別の話
制度の上で接点があることと、採用や処遇の場面で有利になることは別です。
当サイトで調べた範囲では、認定・専門の資格取得が評価にどう影響するかを示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
そのため、この記事では「取れば有利」とも「関係ない」とも書きません。
根拠のない見通しを学習の理由に置かないほうが、途中で優先度が下がりにくくなります。
自分で確かめられること
求人票の必須要件・歓迎要件・手当の記載を数える
求人票の応募要件は、多くの場合「必須」と「歓迎」に分かれています。
資格名がどちらに書かれているかで、その施設における位置づけが分かります。
必須要件なら選考に進む条件、歓迎要件なら加点材料という扱いです。
自分が希望する地域と業態で求人を20件ほど集め、資格名が必須要件に何件、歓迎要件に何件、記載がないものが何件あるかを数えます。
この数字は、どこかの記事に書かれた一般論より、自分にとって正確な材料になります。
求人票のどこを読むかは求人票のどこを読むかにまとめています。
支援制度の記載はその職場の方針を示す
取得の支援制度、研修への参加の扱い、学会費の負担、資格手当の金額は、募集要項に記載されていることがあります。
記載がない施設も多いため、あるかないかを含めて確認する価値があります。
この点は業態によっても変わります。
病院とドラッグストアでの求人の読み分けはドラッグストアと病院、薬剤師の転職はどう違う?で扱っています。
面談を伴うサービスで扱いを直接聞く
当サイトが整理している薬剤師向けのサービスは12件で、いずれも全国を対応地域としています。
内訳は、会員登録から始まる登録型が3件、申し込みから始まる申込型が3件、面談実施型が6件です。
面談を伴う形であれば、担当者に「この領域の求人で、この認定が要件に入っていることはあるか」と直接尋ねられます。
求人を日常的に扱っている相手からの回答は、一般論より具体的です。
面談を伴わない形との違いは薬剤師が面談なしで求人を見るには?にまとめています。
取得と転職の順序をどう決めるか
研修と症例の機会は勤務先の体制で決まる
要件に研修の受講や症例の報告が含まれる場合、勤務の調整が必要になります。
シフトのまま研修の時間を確保できるか、施設として就学や学会参加の支援があるかで、進めやすさが変わります。
支援の有無は施設ごとに違うため、在籍中の職場と転職先の候補の両方で確認する対象になります。
雇用形態によっても研修の扱いが変わる点は薬剤師の求人は正社員だけ?で扱っています。
先に環境を整えるという順序もある
学習や症例の要件を満たせない環境のまま取得を目指すと、途中で止まりやすくなります。
支援制度がある職場や、対象領域を扱っている職場へ先に移るという順序も選択肢です。
逆に、現職に支援制度があるなら、取得を終えてから動くほうが負担は小さくなります。
どちらが良いかは、いまの職場に制度があるかどうかで決まります。
まず現職の制度を確認し、その結果で順序を決めるという進め方が現実的です。
在職しながら進める場合の注意点は在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。
経歴には認定名だけでなく関わった業務を並べる
書類に資格名だけを書くより、その領域で実際にどのような症例や業務に関わったかを並べるほうが、伝わる情報量は増えます。
認定そのものの評価に依存しない材料が手元に残ります。
書き方は職務経歴書はいつ作ればよいかを参考にしてください。
まとめ
- 薬剤師の認定制度に統括機構はなく、学会や職能団体がそれぞれ制度を運営している
- 認定と専門は別物ではなく、同じ領域の中で要件が積み上がる段階として並んでいる
- 年数・単位数・症例数は制度ごとに違い改定もされるため、運営団体の公式案内で確認する
- 日本医療薬学会はがんや薬物療法、日本病院薬剤師会は感染制御や精神科などの領域を扱う
- 対象領域はその診療を行う施設でなければ経験を積めないため、勤務先の機能が前提になる
- 2021年8月から始まった認定薬局の制度には、外部機関の認定を受けた薬剤師の勤務を要件とするものがある
- 取得が採用でどう評価されるかを示す、出典の確認できる調査は見つかっていない
- 推測するより、自分の希望条件で求人20件の必須・歓迎・手当の記載を数えるほうが材料になる



