介護の求人に応募するとき、志望動機の欄に何を書けばよいか迷うことがあります。
働きたい理由はあるのに、それを文章にすると当たり障りのない内容になってしまう、という状態です。

この記事は、応募書類に書く志望動機と転職理由を扱います。
施設形態そのものの制度的な違いは特養・老健・グループホームはどう違う?に、無資格から入る手順は無資格・未経験から介護職になれる?にまとめています。
同じ内容を面接で口頭で聞かれたときの答え方は介護職の面接で聞かれる質問は?にまとめており、書類と口頭で役割を分けています。
ここでは、その違いを踏まえて何をどう書くかに絞ります。

掲載する例文は構成を示すためのものです。
そのまま提出すると、面接で内容を深掘りされたときに答えられなくなります。
自分が担当した業務に置き換えて使ってください。

選んだ理由と、書く理由はずれている

事業所を選んだ理由の1位は通勤の便利さ

介護労働安定センターの令和5年度介護労働実態調査では、現在の事業所に勤め始めた理由の1位は「通勤が便利だから」で50.3%でした。
以下、「仕事の魅力ややりがいがあるため」32.6%、「職場の人間関係がよいため」31.4%、「残業が少ない・有休が取りやすい・シフトがきつくない」27.3%と続きます(出典: doctormate.co.jp)。

半数が通勤の便を挙げているという結果は、実務の感覚に近いものです。
ただし、これをそのまま志望動機の欄に書くと、その事業所でなければならない理由が消えます。
実際の選択理由と、書類に書く理由が同じである必要はありません。

仕事そのものを選んだ理由は別に聞かれている

同じ調査で、現在の仕事を選んだ理由は「働きがいのある仕事だと思ったから」42.3%が最多でした。
次いで「資格・技能が活かせるから」29.5%、「人や社会の役に立ちたいから」27.4%と続きます(同調査)。

この2つの設問の違いが、そのまま志望動機の構造になります。
介護という仕事を選んだ理由と、その事業所を選んだ理由は別の内容です。
前者だけを書くとどの事業所にも出せる文章になり、後者だけを書くと条件の話で終わります。

通勤の近さは書いてよい

通勤の便を志望動機に入れること自体は問題ありません。
長く続けられる条件として、事業所の側も理解しています。
書き方としては、通勤時間を理由の主軸にせず、「長く働き続けたい」という文脈の中に短く置きます。

順序としては、業務についての話を先に書き、条件は最後に1文だけ添えます。
この配分だけで、読まれ方が変わります。

形態が変われば書く材料が変わる

特別養護老人ホームは重度の人を長く支える

特養は、常時の介護が必要な人が長期にわたって暮らす場です。
看取りまで対応する施設もあります。
志望動機に入れる材料は、身体介護の経験、移乗や入浴の介助で工夫していたこと、認知症のある方への関わり方などです。

「長く関わりたい」という希望は、この形態では動機として噛み合います。
一方、レクリエーションの企画を主軸に書くと、形態の性格とずれます。

介護老人保健施設は他職種と組む

老健は在宅復帰を目的とし、医師・看護職員・リハビリの専門職が配置されます。
記録や申し送りは他職種が読むことを前提とした内容になります。

そのため、多職種と情報を共有した経験が材料になります。
カンファレンスで発言した経験、リハビリ職と連携して生活動作を支えた経験などがあれば、そのまま書けます。

デイサービスは日中の時間を組み立てる

デイサービスは、日中だけ通う人に対して入浴・食事・機能訓練・レクリエーションを提供します。
決まった時間内に複数の工程を進めるため、段取りと同時進行の力が読まれます。

レクリエーションの企画・進行の経験、送迎の運転の可否、集団の中で個別に配慮した経験が材料になります。
夜勤がない働き方を希望する場合の考え方は夜勤なしで働ける介護の職場はどこかにまとめています。

訪問介護は一人で入る

訪問介護は利用者の自宅に一人で入り、決められた時間内でサービスを提供します。
その場に同僚がいないため、判断とサービス提供責任者への報告が自分の役割になります。

書く材料は、時間管理の意識、家族とのやり取りの経験、想定外のことが起きたときにどう報告したかです。
施設と訪問の違いは訪問介護と施設介護、探し方はどう違う?で扱っています。

グループホームは生活を一緒に作る

グループホームは、認知症の診断を受けた人が少人数で共同生活を送る形です。
食事の支度や掃除といった家事を入居者と一緒に行う場面があります。
規模が小さく、夜間は少人数で対応する体制になることが多い形態です。

志望動機に入れる材料は、認知症のある方への対応の経験、生活の中での声のかけ方、少人数の中で関係を作った経験です。
家事を業務として抵抗なく行えるかも、書いておくと伝わる要素になります。

形態別に前へ置くもの

形態 前へ置く材料 相性の悪い書き方
特別養護老人ホーム 身体介護の経験、認知症のある方への関わり 企画・イベント運営を主軸にする
介護老人保健施設 多職種との情報共有、記録の書き方 一人で完結した業務だけを並べる
デイサービス 段取り、集団の中での個別配慮、送迎 看取りや終末期の関心を主軸にする
訪問介護 時間管理、家族対応、報告の判断 チームでの動き方だけを書く
グループホーム 認知症対応、生活の中での声かけ、家事 大規模施設での効率の話を主軸にする

雇用形態で書き分ける

正職員は夜勤とシフトの範囲を書く

正職員の募集では、夜勤や早番・遅番を含めたシフト全体に入れるかどうかが前提になります。
志望動機にも、入れる勤務帯を具体的に書くほうが読み手の判断が早くなります。
夜勤の経験がある場合は、これまでの回数と体制を数えて書きます。

あわせて、委員会活動、実習生の受け入れ、記録の取りまとめといった、日々の介護以外に担ってきた業務も材料になります。
長く続けられる人かどうかは、こうした業務の記述から読まれます。

パート・登録ヘルパーは稼働できる時間を書く

パートや登録ヘルパーでは、どの時間帯に何日入れるかが実質的な選考の論点になります。
曜日と時間帯を具体的に書き、送迎や自転車・自動車の使用可否があれば添えます。
制約は隠さず先に書くほうが、入職後の調整が起きにくくなります。

未経験・無資格から応募する場合

資格の段階を踏まえて書く

介護の資格は段階になっており、応募できる求人の範囲が資格によって変わります。
無資格で応募する場合、志望動機に「これから何を取るつもりか」を1文入れると、続ける意思が伝わります。

ただし、取得予定を書くときは時期を断定しません。
「働きながら介護職員初任者研修の受講を予定しています」のように、事実として書ける範囲にとどめます。
資格の段階は無資格・未経験から介護職になれる?に整理しています。

前職の経験を介護の言葉に置き換える

未経験からの応募では、前職の業務を介護の現場で使える形に翻訳します。
接客業なら初対面の人との距離の取り方、配送業なら時間管理と体調の自己管理、事務職なら記録の正確さが対応します。

例文の型(接客業から特養へ)

「前職では〇年間、〇〇の接客を担当し、常連のお客様の好みや体調に合わせた対応を続けてきました。人の生活に継続して関わる仕事に就きたいと考え、長期にわたって入居者を支える特別養護老人ホームを志望しました。身体介護は未経験のため、まず初任者研修の受講を予定しています。」

「人の役に立ちたい」で止めない

この一文は多くの応募者が書きます。
書くこと自体は問題ありませんが、そこで止まると差がつきません。
前後に、なぜそう考えるようになったかの事実を1つ足します。
家族の介護に関わった、実習で印象に残った場面がある、といった具体です。

転職理由の書き方

辞めること自体は説明の対象ではない

介護職員の離職率は2023年度で13.1%とされ、全産業平均の15.0%より低い水準です(出典: 介護ニュースJoint)。

つまり、介護の現場で転職が特別に多いわけではありません。
回数の扱いは介護の転職回数は不利になる?で扱っています。
書類で説明すべきなのは、辞めた事実ではなく次に何を選ぶかです。

前の事業所の批判にしない

人員体制や休みの取りにくさが理由であっても、書類にそのまま書くと印象が残りません。
「一人あたりの受け持ちが多く、個別の関わりに時間を取れなかった」のように、業務の中身の話に変換すると、次に何を求めているかが同時に伝わります。

例文の型(施設から訪問介護へ)

「特別養護老人ホームで〇年間、〇名のフロアを担当してきました。決まった時間の中で複数の入居者に対応する形が中心で、一人ひとりの生活に合わせた関わりに時間を割きにくいと感じていました。利用者の自宅で、その人の生活のリズムに沿って支援を行いたいと考え、訪問介護を志望しています。」

提出する前に確認すること

事業所の情報を1つ入れる

法人の理念、施設の規模、力を入れている取り組みのうち、1つを本文に入れます。
求人票に書かれている内容で十分です。
どこを読むかは求人票のどこを読むかにまとめています。

複数の事業所を運営する法人への応募

一つの法人が特養とデイサービス、あるいはグループホームと居宅の事業所をあわせて運営していることがあります。
この場合、採用が法人単位で行われ、配属先が入職後に決まることもあります。

志望動機を1つの形態に強く寄せて書くと、他の事業所への配属を想定した読み方をされたときに噛み合いません。
志望する形態を明記したうえで、法人全体で何をしたいかを1文添えると、どちらの読まれ方にも対応できます。

書いた内容は面接でも聞かれる

書類に書いたことは、面接で口頭でも確認されます。
書ける事実だけで構成しておくと、深掘りされたときに答えられます。
面接での答え方の型は転職面接の準備、書類全体の組み立ては職務経歴書はいつ作ればよいかを参照してください。

まとめ

  • 事業所を選んだ理由の1位は**通勤が便利だから50.3%**だが、そのまま書くとその事業所である理由が消える
  • 「介護という仕事を選んだ理由」と「その事業所を選んだ理由」は別の設問として書き分ける
  • 特養は身体介護、老健は多職種連携、デイは段取り、訪問は一人での判断が材料になる
  • 未経験からの応募では、前職の業務を介護の言葉に置き換え、資格の予定を事実の範囲で書く
  • 離職率は13.1%で全産業平均より低い。
    辞めた事実より次に何を選ぶかを書く
  • 前の事業所の批判ではなく、業務の中身の話に変換すると求めるものが伝わる