同じ資格を持ち、同じ年数の経験がある人が、別々の事業所の求人を見比べると、給与の提示額に差があることがあります。
地域や施設の種類による違いもありますが、それだけでは説明がつかない差が出ることも珍しくありません。
その差を生む要因の一つが、処遇改善に関する加算です。
制度の名前は知られていても、区分の仕組みまで説明されることは多くありません。
ここでは、この加算がどういう構造になっているのかを整理し、求人を見るときに何を確認すればよいかまでをまとめます。
同じ資格・同じ経験でも給与に差が出る
加算は事業所が算定するもの
処遇改善に関する加算は、働く人が個人で申請するものではありません。
事業所が要件を満たしたうえで届け出て、算定するものです。
つまり、同じ資格を持っていても、勤める事業所が算定しているかどうかで受け取る金額が変わります。
介護職の待遇を語るときに「業界の平均」という数字が使われますが、平均の内側にはこの差が含まれています。
算定している区分が事業所ごとに違う
加算には区分が設けられており、満たしている要件によって算定できる区分が変わります。
区分が変われば加算の率も変わるため、同じ地域の同じ種類の事業所でも、原資として入ってくる金額が違います。
同じ法人が複数の事業所を運営している場合でも、事業所ごとに算定状況が異なることがあります。
「同じ法人だから同条件」という前提では読めません。
だから求人票の給与欄だけでは比べられない
求人票の給与欄に書かれた金額には、加算を原資とする手当が含まれている場合と、含まれずに別枠で支給される場合があります。
表記の仕方そのものが事業所ごとにばらつきます。
そのため、金額だけを横に並べても、比べているものが同じとは限りません。
まず内訳がどう書かれているかを見ることになります。
求人票のどこまでが書かれた条件かは求人票のどこを読むかで扱っています。
2024年度に3つの加算が一本化された
従来は3つの加算に分かれていた
以前は、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算という3つの加算が並立していました。
それぞれに要件と算定の手続きがあり、事業所の側では別々に管理する形になっていました。
働く側から見ると、この構造は分かりにくいものでした。
求人票に「処遇改善加算あり」と書かれていても、どの加算を指しているのかが判別できないためです。
「介護職員等処遇改善加算」に統合された
2024年度の介護報酬改定により、この3つが「介護職員等処遇改善加算」という一つの加算に一本化されました(出典: 厚生労働省)。
名称が統一され、要件も一つの体系にまとめられています。
一本化は、事業所の事務負担を減らすことと、加算の取得を進めることを目的にしたものです。
求人票の表記が改定前のままになっている場合もあるため、いつ時点の情報かを意識して読む必要があります。
区分は(I)から(IV)
新しい加算の区分は、(I)から(IV)に集約されています。
数字が小さい区分ほど加算の率が高く、そのぶん満たすべき要件も多くなります。
一本化の移行期間に設けられていた特例の区分は、2025年3月末までの経過措置として扱われていました。
現在は(I)から(IV)の4区分で運用されています。
加算率の引き上げでベースアップの水準が示された
2024年度の改定では、加算率の引き上げによって、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップにつながる水準を目指すとされました(出典: 厚生労働省)。
制度としてどこを目標に置いたかを示す数字です。
実際の変化としては、2024年度の改定に伴い、月給・常勤の介護職員の平均給与額が月額13,960円増となりました(2023年度と2024年度の比較。
出典: ケアコム)。
これは全国の平均であり、個々の事業所の水準を示すものではありません。
介護職全体の待遇の動きは介護職の転職市場はいま?にまとめています。
区分が上がるほど満たす要件が増える
キャリアパス要件と職場環境等要件
加算の要件は、大きくキャリアパス要件と職場環境等要件に分かれています。
キャリアパス要件は、職位や職責に応じた任用の要件と賃金体系を整えること、研修の機会を設けること、昇給の仕組みを設けることといった内容で構成されています。
職場環境等要件は、働きやすさに関わる取り組みを行うことを求めるものです。
上位の区分を算定するには、これらをより多く満たす必要があります。
制度の設計上、上位区分を算定している事業所は、賃金体系や研修の仕組みを文書として整えていることになります。
加算率はサービスの種類ごとに違う
加算の率は、介護サービスの種類ごとに設定されています。
訪問介護と通所介護と施設系のサービスでは、同じ区分でも率が異なります。
そのため、種類をまたいで「区分が上だから給与も高い」と読むことはできません。
比べるなら、同じ種類のサービスの中で比べます。
事業所の種別ごとの違いは訪問介護と施設介護、探し方はどう違う?で扱っています。
配分の仕方は事業所が決める
加算として入ってきた金額を、事業所内でどう配分するかは事業所が決めます。
基本給に上乗せする形もあれば、手当として別枠で支給する形もあり、賞与に反映させる形もあります。
2024年度の改定では、介護職員への配分を基本としつつ、事業所内での柔軟な配分が認められる形になりました。
同じ区分を算定している事業所どうしでも、個人が受け取る金額が同じになるとは限らないということです。
求人票と面談で確認する順序
求人票に区分が書かれていることは多くない
求人票に「処遇改善加算あり」と書かれていても、区分まで明記されていることは多くありません。
書かれていない場合、それ自体が確認すべき項目になります。
聞き方は難しくありません。
「処遇改善加算はどの区分を算定していますか」と尋ねれば足ります。
制度として届け出て算定しているものであり、隠すような性質の情報ではありません。
基本給に含めるか手当として別枠か
次に確認するのは、加算を原資とする支給が給与のどこに現れているかです。
基本給に含まれていれば賞与や退職金の算定基礎に影響することがあり、手当として別枠であれば内訳が見えやすくなります。
どちらが良いという話ではなく、比較の前提を揃えるために必要な確認です。
同じ金額でも、含まれる場所が違えば年間の総額が変わります。
金額の見方は転職で年収は上がる?にまとめています。
同じ法人でも事業所ごとに違うことがある
法人単位で採用を行っている場合でも、配属される事業所によって算定状況が違うことがあります。
求人票が法人名で出ているときは、どの事業所に配属される想定かを確認します。
異動の可能性がある場合、異動先の事業所でどう扱われるかも論点になります。
配属と異動の範囲は、入職前に聞いておく項目です。
介護職以外の職種の扱いを確認する
加算の対象として想定されているのは介護職員ですが、事業所の判断で他の職種にも配分されている場合があります。
相談員や看護職、事務職として応募する場合は、自分の職種が配分の対象に含まれているかを確認します。
職種によって扱いが違うことは、求人票からは読み取れません。
面接で聞く内容の組み立て方は介護職の面接でよく聞かれることにまとめています。
サービスを使って比べる
登録型で同条件の求人を10件並べる
制度の説明を読むより、実際の求人を並べるほうが早く分かります。
同じ資格、同じ経験年数、同じ地域という条件で10件ほど集め、給与欄の書き方を見比べます。
当サイトで整理している介護・福祉向けサービスのうち、クリックジョブ介護・ジョブソエル・メンラボジョブ・介護求人ラボ・かる・けるはいずれも全国を対象とする登録型で、会員登録を済ませた段階で求人を確認できます。
応募しなくても、この比較だけを目的に使えます。
登録型の進み方は介護職は登録だけで求人を見られる?にまとめています。
面談実施型では運用の実態を聞ける
算定している区分や、配分の仕方をどう運用してきたかは、求人票には書かれません。
当サイトのデータでは、ワークスタッフナビとMC介護のお仕事が全国を対象とする面談実施型です。
かいご畑には道府県を限定した面談実施型のラインがあり、介護タウンは愛知県・大阪府を対象としています。
対応地域内であれば、こうした質問を投げる相手として使えます。
対象外の地域では紹介できる求人がそもそも無いため、登録の前に対応地域を確認します。
地域と種別で相場が変わる
加算の仕組みが同じでも、地域と事業所の種別によって提示される金額の幅は変わります。
全国の平均値を基準に自分の条件を評価すると、判断を誤ります。
見るべきは、自分が通える範囲の同じ種別の求人です。
地域ごとの探し方は地方の介護求人はどうなっているか、迷っている段階での進め方は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。
まとめ
- 2024年度の改定で従来の3つの加算が**「介護職員等処遇改善加算」に一本化**された
- 区分は(I)から(IV)で、上位の区分ほど満たすべき要件が増える
- 加算率の引き上げにより、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップにつながる水準を目指すとされた
- 加算は事業所が算定するもので、算定する区分と配分の仕方が事業所ごとに違う
- 求人票に区分が書かれていることは多くないため、確認する項目として残す
- 基本給に含めるか手当として別枠かで年間の総額が変わるため、内訳まで見る



