「介護の職場を何度か変えているが、次の選考で不利にならないか」という不安は、事業所の種別や運営法人を変えながら働いてきた人ほど強くなります。
介護は職場ごとに業務の進め方が大きく異なるため、合わないと感じて動く機会が他の職種より多いという声もあります。
ただし、この問いに数字で答えられる材料は限られています。
ここでは、確認できていないことを確認できていないと明示したうえで、代わりに何を見れば判断できるのかを整理します。
介護職の転職回数について、出典のある調査は確認できていない
平均回数を示す信頼できるデータが見つからない
当サイトで調べた範囲では、介護職の平均転職回数を示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
「介護職の平均は◯回」といった数字を掲げている記事は存在しますが、調査の実施主体・調査時期・対象人数が明示されていないものが多く、根拠として使える状態ではありませんでした。
そのため、この記事では「介護は転職回数が多くても問題ない」「回数が多いと不利になる」のどちらの立場も取りません。
根拠のない数字を並べるより、確認できる事実だけを示すほうが判断の役に立つと考えています。
「何回までなら大丈夫」という基準も確認できない
同じ理由から、「◯回を超えると選考で不利になる」という境界も、当サイトでは確認できていません。
採用の判断基準は法人ごとに異なり、公開されている統計もありません。
回数の多さを一律に評価する基準が存在するという前提そのものが、確かめられないものです。
判断材料になるのは、統計ではなく応募先の求人票です。
応募要件に経験年数や資格が書かれていれば、そこに書かれた条件が採用側の基準です。
書かれていない項目について推測を重ねるより、書かれている条件と自分の経歴を突き合わせるほうが具体的に進みます。
代わりに確認できるのは需給と離職率
離職率は全産業平均より低い
介護職員の離職率は13.1%(2023年度)で、全産業平均の15.0%より低くなっています(出典: 介護ニュースJoint、介護労働安定センター調査)。
「介護は人がすぐ辞める業界だから、転職回数が多くても目立たない」という言い方も、「離職率が高い業界だから警戒される」という言い方も、この数字とは噛み合いません。
離職率の水準は全産業平均を下回っています。
業界の性質を根拠にした説明は、どちらの方向でも成立しにくいということになります。
求人倍率は全職種平均を大きく上回る
2025年5月時点の介護関係職種の有効求人倍率は3.41倍でした。
全国の全職種平均が約1.31倍であることと比べると、2.5倍以上の開きがあります(出典: 太田高貴氏note)。
厚生労働省は、2025年に全国で約32万人の介護職員が不足すると予測しています(出典: MEIKOGLOBAL)。
求人倍率が高い状況は、応募者一人あたりの選択肢が多いことを意味します。
ただし、これは「誰でも採用される」という意味ではありません。
事業所ごとに求める資格や経験は異なり、応募要件を満たすかどうかは個別に判断されます。
市場全体の状況は介護職の転職市場はいま?にまとめています。
職場を選んだ理由の調査から読めること
「通勤が便利だから」が最多という結果がある
介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」によると、現在の事業所に勤め始めた理由は「通勤が便利だから」50.3%が最多で、「仕事の魅力ややりがいがあるため」32.6%、「職場の人間関係がよいため」31.4%、「残業が少ない・有休が取りやすい・シフトがきつくない」27.3%が続きます(出典: doctormate.co.jp)。
上位に並んでいるのは、通勤・人間関係・勤務条件という生活側の要素です。
同じ調査で、現在の仕事を選んだ理由は「働きがいのある仕事だと思ったから」42.3%が最多、「資格・技能が活かせるから」29.5%、「人や社会の役に立ちたいから」27.4%、「今後もニーズが高まる仕事だから」26.6%となっています。
仕事を選ぶ理由と、事業所を選ぶ理由が別の軸で動いていることが読み取れます。
職場を変える理由は珍しいものではない
この結果は、介護の職場選びで通勤や勤務条件が重視されていることを示しています。
引っ越しや家庭の事情で通勤条件が変われば、勤務先を見直す動機が生じます。
転職の理由がこうした生活側の変化にある場合、説明として不自然なものにはなりません。
ただし、これは調査結果から読み取れる傾向であって、選考でどう評価されるかを示すデータではありません。
この2つを混ぜて語らないようにしておくと、判断がぶれません。
経歴の説明を組み立てる
時系列で書き出して軸を探す
転職回数が多い場合は、これまでの勤務先を時系列で書き出す作業から始めます。
事業所の種別(特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・グループホーム・デイサービス・訪問介護など)、雇用形態、在籍期間、辞めた理由、その職場で身についたことを並べます。
書き出してみると、共通点が見つかることがあります。
夜勤の有無で動いている、資格の段階に合わせて動いている、通勤圏の変化で動いている、といった軸です。
頭の中だけで考えていると軸は曖昧なままになりますが、並べれば自分でも気づいていなかった一貫性が見えてきます。
この作業は応募先が決まる前でも進められます。
事業所の種別が変わっている場合の説明
介護の職場は種別が多く、種別が変われば業務の内容も一日の動き方も変わります。
特別養護老人ホームとデイサービスと訪問介護では、必要になる判断も記録の取り方も別です。
複数の種別を経験していることは、経歴として説明できる材料になります。
説明の方向としては、「合わなかったから移った」ではなく「この種別でこの経験を積み、次にこれを扱いたかった」という形に整理できるかどうかが分かれ目になります。
種別ごとの違いは訪問介護と施設介護、探し方はどう違う?にまとめています。
在籍期間が短い時期がある場合
短期間で辞めた職場が経歴に含まれていると、そこだけを気にしてしまいがちです。
ただし、書類の上では在籍期間は事実として並ぶだけで、隠すことはできません。
触れられたときにどう説明するかを先に決めておくほうが、書き方を工夫するより落ち着きます。
説明を組み立てるときは、辞めた理由と、その後どう動いたかをひとまとめにします。
体調や家庭の事情で続けられなかった場合、その状況が現在は変わっているのかどうかが相手の関心事になります。
理由の説明より、いまの状態の説明のほうが重いという前提で準備しておくと、話す順序が決まります。
応募要件と自分の経歴を突き合わせる
介護の求人票には、資格・実務経験年数・対象となる事業所での経験が要件として書かれていることがあります。
転職サービス側にも対象条件が設定されている場合があり、当サイトのデータでは、ケアマネ専門の転職サイトがケアマネジャー・主任ケアマネジャーの資格保有者を対象としています。
自分の経歴が要件を満たしているかどうかは、回数の多さとは別の軸です。
要件を満たしていれば応募でき、満たしていなければ回数にかかわらず対象外になります。
先に見るのは統計ではなく要件のほうです。
要件を確認する作業は、登録型のサービスで求人を検索すれば進められます。
面談実施型で第三者に見てもらう
経歴の見せ方に不安がある場合、面談を伴うサービスで相談する方法があります。
当サイトのデータでは、ワークスタッフナビとMC介護のお仕事が全国を対象とする面談実施型です。
かいご畑には面談実施型のラインがあり、対応地域は22道府県です。
ケアマネ専門の転職サイトも全国を対象とする面談実施型ですが、ケアマネジャー・主任ケアマネジャーの資格保有者が対象です。
求人を日常的に扱っている相手から見た経歴の印象は、自分の見立てと違うことがあります。
回数そのものを気にしているのが自分だけだった、という結果もあり得ます。
職種を問わない一般的な考え方は転職回数が多いと選考で不利になる?にまとめています。
まとめ
- 介護職の平均転職回数を示す、出典の確認できる調査データは見つかっていない
- 「何回までなら大丈夫」という境界も確認できないため、応募先の求人票の要件で判断する
- 確認できるのは、離職率13.1%が全産業平均15.0%を下回っているという事実
- 事業所を勤め先に選んだ理由は「通勤が便利だから」50.3%が最多で、生活側の要素が上位に並ぶ
- 回数を数えるより、勤務先を時系列で書き出して軸を探すほうが説明を組み立てやすい



