コンサルティングファームへの応募では、志望動機の一貫性が他の職種以上に問われます。
論理を組み立てて説明することが業務そのものであるため、志望動機の書き方がそのまま仕事の進め方の見本として読まれるためです。

この記事は、志望動機という1つの論点に絞ります。
書類全体の作り方、Webテスト、ケース面接を含む選考の進め方はコンサル転職の選考対策で扱っており、そちらは選考プロセス全体の準備を整理しています。

なお、コンサル業界の転職理由に関するランキング調査は、当サイトで調べた範囲では出典の確認できるものが見つかりませんでした。
そのため、この記事では「多くの人がこう答えている」という形の根拠は使いません。

志望動機は3つの問いに分解できる

問いは「なぜコンサルか」「なぜこのファームか」「なぜ今か」

コンサルの志望動機として書かれる内容は、この3つに整理できます。
1つ目は職種を選んだ理由、2つ目は応募先を選んだ理由、3つ目は転職の時期を選んだ理由です。

書類の中でこの3つを分けて意識していないと、どれか1つだけが厚く、残りが空欄という文章になります。
とくに抜けやすいのは3つ目で、なぜいまなのかが書かれていないと、いつでもよかったように読まれます。

どれか1つが欠けると、次の問いで崩れる

3つは独立していません。
「なぜコンサルか」の答えが抽象的だと、「なぜこのファームか」の答えも抽象的になります。
前者で「経営課題の解決に関わりたい」とだけ書けば、後者は「幅広い案件がある」以上のことを書けなくなります。

逆に、1つ目を具体的な業務経験から書けば、2つ目はその経験と接する領域を持つファームという形で自然につながります。
1つ目の解像度が、残り2つの上限を決めます。

3つはこの順で組み立てる

書く順番も、この順が組みやすくなります。
職種を選んだ理由を先に固め、そこから応募先を絞り、最後に時期の話を置きます。
時期の話から書き始めると、前職の事情の説明で紙面が終わります。

「なぜコンサルか」は経験の中の場面から書く

抽象語で書くと、次の質問で止まる

「成長したい」「経営に近い立場で働きたい」「幅広い業界に関わりたい」という表現は、志望動機によく現れます。
いずれも間違ってはいませんが、書類の段階でこの言葉だけが並ぶと、読み手はその根拠を確かめる質問を用意します。

質問されたときに答える材料は、結局のところ前職の経験の中にあります。
であれば、最初からその経験を書いてしまうほうが早いという関係になります。

起点になる場面を1つだけ選ぶ

前職での経験のうち、いまの志望につながった場面を1つ選びます。
複数挙げると焦点がぼやけるため、1つに絞ります。

選ぶ基準は、自分がその場面で何かを判断したかどうかです。
指示に従って作業した場面ではなく、状況を整理して方針を決めた場面、または決められなかったことに問題意識を持った場面が起点になります。
そこから「その判断をより広い範囲で行う立場に移りたい」という接続ができます。

事業会社出身者が使える場面

事業会社からコンサルへ移る人は珍しくありません。
転職前の主な業界はSIer・ソフトウェア開発が29.1%で最多、IT系を合計すると約39%という調査があります(出典: OpenMoney)。
業界未経験からの移動が相当な比率を占めているということです。

使える場面としては、要件を整理して仕様に落とした経験、業務のやり方を変える提案をした経験、複数部署の意見が割れた状態で判断の材料をそろえた経験があります。
職種名ではなく、そこで何をしたかで書きます。

「なぜこのファームか」は領域で答える

戦略・IT・専門系で扱う案件が違う

コンサルティングファームは、扱う領域によって案件の中身が変わります。
戦略、IT・デジタル、業務改善、財務、人事といった区分があり、必要とされる経験も異なります。
領域ごとの違いはコンサルは領域で選び方が変わるで整理しています。

志望動機では、この領域を名指しします。
「貴社の幅広い案件に魅力を感じた」ではなく、どの領域のどういう案件に、自分のどの経験が接するのかを書きます。
領域を名指しした時点で、1つ目の問いとの接続が成立します。

役割の階層を理解しているかも読まれる

コンサルティングファームには、アナリストからパートナーまでの階層があり、階層ごとに担う役割が変わります。
階層の構造はコンサルの役職とは?で整理しています。

入社後にどの立場で何をするかを書く際、階層を理解していないと実態と合わない記述になります。
自分が入る想定の階層で任される業務を踏まえて書くと、志望動機の最後の部分が現実的になります。

応募先を1社に絞れない場合

複数のファームに応募する場合、領域の名指しは応募先ごとに変える必要があります。
ここを共通の文章で済ませると、どのファームに出しても同じ書類になります。

骨格は「なぜコンサルか」の部分で共通させ、領域と応募先固有の要素だけを入れ替えるという運用にすると、応募数が増えても管理できます。

「なぜ今か」は経験の積み上がりで答える

分布から見ると20代後半が中心にいる

コンサルへの転職時の平均年齢は29.8歳、中央値は29歳で、2社目としての流入が約70%を占めるという調査があります(出典: OpenMoney)。
年代別の詳細は未経験からコンサルに転職できる?で扱っています。

この分布は「なぜ今か」の答えそのものではありません。
ただし、自分がこの分布のどこにいるかを把握しておくと、時期の説明の方向が決まります。
分布の中心にいるなら経験の積み上がりを、そこから離れているなら別の理由を書くことになります。

30代以降は積み上げた専門性から書く

年代が上がるほど、時期の説明には「これまでに何を積み上げたか」が必要になります。
特定の業界での年数、担当した工程の深さ、チームをまとめた経験が材料です。

この年代では、コンサルに入ることそのものより、入ったあとに何をするかを先に決めておくほうが説明が通ります。
判断の前提として抜けやすい点はコンサル転職の後悔はどこで起きるかで扱っています。

書いた後に、自分で論理を検査する

3つの答えを並べて前提を確認する

書き終えたら、3つの答えを短い文にして並べます。
1つ目の理由から2つ目が導かれ、2つ目から3つ目が導かれているかを確認します。

つながっていない場合、多くは1つ目が抽象的すぎることが原因です。
1つ目を書き直すと、残り2つは自動的に整います。
順番を逆にたどって修正しようとすると、辻褄合わせの文章になります。

「他のファームでもよいのでは」と自問する

書いた文章から応募先の社名を外し、同じ領域を扱う別のファームの名前を入れてみます。
そのまま成立するなら、2つ目の問いに答えられていません。

崩れる部分を作るには、応募先だけが持つ要素が要ります。
公開されている案件の傾向、注力していると示されている領域、組織の構成のうち、自分の経験と接する点を1つ選びます。

抽象語を具体化する方向

書きがちな表現 何が読み取れないか 具体化の方向
成長できる環境で働きたい 何を身につけたいか 担当したい領域と、そこで扱う分析や設計の内容
経営課題の解決に関わりたい どの課題か 前職で問題意識を持った具体的な場面
幅広い業界を経験したい なぜ幅が要るか 自分の専門を他業界に適用したい理由
論理的思考力を活かしたい どの場面で発揮したか 判断の材料を組み立てた実際の業務
若いうちに実力をつけたい 時期を選んだ理由 いま積み上がっている経験と、次に必要なもの

いずれも、書かれている内容が誤っているのではなく、その言葉に至った経験が省かれている点が共通しています。

年収を動機に置く場合の扱い

数字は動機の裏づけにはならない

コンサルへの転職による年収変化は平均+112万円で、78.9%が年収アップという調査結果があります(出典: OpenMoney)。
裏返すと約2割は上がっていません。

この数字は市場の傾向を示すものであり、志望動機の根拠にはなりません。
書類の中で年収を主たる理由として書くと、条件が上回る他社があれば移るという前提を自分で示すことになります。
年収がどう決まるかは転職で年収は上がる?下がる?で扱っています。

条件の話をする場面は別にある

提示された条件の調整は、選考が進んだ後の交渉の場面で行います。
志望動機の欄は業務の話に絞るほうが、後の選択肢が広がります。
交渉のタイミングは転職の年収交渉はできる?にまとめています。

書類と面接で同じ論理を使う

面接では同じ道筋を口頭で再構成する

書類に書いた3つの答えは、面接でそのまま質問されます。
ケース面接を含め、コンサルの選考では結論だけでなく、そこに至る道筋を口頭で説明することが求められます。
準備の進め方はコンサル転職の選考対策で扱っています。

書類を暗記するのではなく、3つの答えの関係だけを覚えておきます。
関係が頭に入っていれば、聞かれ方が変わっても組み立て直せます。
面接全般の質問の型は転職面接の準備、業種を問わない構成と分量の考え方は転職の志望動機は何を書く?にまとめています。

自分が対象になるサービスを先に確認する

コンサル向けのサービスには、対象年齢や学歴を条件に置いているものがあります。
書類の準備を始める前に、自分が対象に入るかを確認しておくと計画が崩れません。
条件の内訳は未経験からコンサルに転職できる?で扱っています。

まとめ

  • コンサルの志望動機は「なぜコンサルか」「なぜこのファームか」「なぜ今か」の3つに分解できる
  • 1つ目の解像度が残り2つの上限を決めるため、前職の具体的な場面を起点にする
  • 2つ目は領域を名指しして答える。
    社名を入れ替えても成立する文は答えになっていない
  • 3つ目は経験の積み上がりで答える。
    転職時の平均年齢は29.8歳という分布が背景にある
  • 書いた後は3つの答えを並べ、同じ前提から導かれているかを自分で検査する
  • 年収の数字は市場の傾向であって、志望動機の根拠にはならない