コンサル業界を調べていると、アップオアアウトという言葉に行き当たります。
昇進するか、さもなければ去るか。
厳しさを表す言葉として使われることが多く、この一語で業界全体の印象が決まってしまうこともあります。

ただ、この言葉が何を指しているのかは、あまり分解されていません。
ここでは、なぜこの仕組みが成り立つのかを人員構成の側から整理し、転職の判断にどう関わるのかまでをまとめます。
数値で語れる部分と語れない部分は、分けて扱います。

昇進しない状態が続きにくい構造がある

語が指しているもの

アップオアアウトは、一定の期間内に次の職位へ上がることを前提とし、上がらない場合には社外へ移ることが想定される仕組みを指す言葉として使われます。
コンサル業界のほか、外資系の専門職の一部でも同じ語が使われます。

この語は制度の正式名称ではありません。
各ファームが就業規則にこの言葉を書いているわけではなく、業界内で共有されている慣行の呼び名です。
そのため、運用の実態はファームによって幅があります。

出典のある統計が見当たらない

この仕組みについて、「何割が昇進できずに退職している」といった数値を示す調査は、当サイトで調べた範囲では見つかっていません。
解説記事に数字が載っていることはありますが、調査の実施主体や対象人数が明示されていないものが大半でした。

外資系戦略コンサルファームの平均勤続年数は約3〜4年とされ、勤続3〜5年で離職するケースが多いという記述もありますが、この記述には原典となる一次調査が明示されていません(出典: Kotora Journal)。
数字が出回っていることと、その数字に根拠があることは別です。

そのため、この記事では割合を示しません。
代わりに、なぜこの仕組みが成り立つのかという構造を扱います。
構造が分かれば、自分が受けるファームの運用を確認するときに何を聞けばよいかが決まります。

「アウト」は即時の解雇を意味しない

言葉の印象から、昇進できなければ会社から一方的に切られると受け取られがちですが、そこは分けて考える必要があります。
日本国内で雇用契約を結んでいる場合、契約の終了には法律上の制約があります。

実際に語られている運用は、次の職位に上がらない状態が続いた場合に、社内で担当を変える、あるいは本人が次の進路を検討する、という形が中心です。
個別の事案がどう扱われるかは、契約の内容と各社の運用によって変わります。
判断に迷う状況に置かれた場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど公的な窓口で相談できます。

なぜこの仕組みが成り立つのか

人員構成がピラミッド型になっている

コンサルの案件は、上位の職位が案件を取り、その下の職位が分析と資料の作成を担う形で進みます。
1件のプロジェクトに必要な人数は、下の職位ほど多くなります。

そのため、組織全体の人数も下の職位ほど多くなります。
全員が上の職位に上がると、構成が成り立たなくなります。
上に上がる人数には上限があり、その上限が仕組みの前提になっています。

職位と単価が結びついている

コンサルの報酬は、職位ごとにレンジが決まっていることが多く、案件の請求も職位に応じた単価で組まれます。
つまり、職位と、その人に期待される付加価値が対応している構造です。

職位が据え置かれたまま在籍年数だけが伸びると、この対応関係がずれます。
制度が「据え置き」を長く想定していないのは、単価の設計に理由があります。
職位ごとの役割の違いはコンサルの役職とは?にまとめています。

育成の投資を回収する期間がある

若手の段階では、案件から得られる収益より、教育にかかるコストのほうが大きい期間があります。
この投資を回収するのは、その人が上の職位に上がってからです。

上がらない状態が続くと、投資が回収されないまま人件費が積み上がります。
この点も、昇進の判断が定期的に行われる理由になっています。

実際の運用で起きること

評価のサイクルが決まっている

多くのファームでは、評価の時期が制度として決まっています。
半期ごと、年度ごとなど頻度はファームによって違い、案件ごとの評価を積み上げて総合的に判断する形が一般的です。

評価の頻度と、昇進の判断がどのタイミングで行われるかは、公開されている情報からは読み取れません。
入社前に確認できる項目として扱うのが実務的です。

昇進しなかった場合の選択肢は一つではない

上がらなかった場合に想定される道は、退職だけではありません。
同じ職位でもう一期取り組む、担当する領域を変える、社内の別部門に移る、といった形があります。

どの選択肢が用意されているかはファームによって違います。
「上がらなければ辞めるしかない」と一律に決まっているわけではないという点は、確認せずに前提を置くと判断を誤ります。

期間の見通しを持たずに入ると準備が間に合わない

在籍期間の見通しを持たずに入ると、数年後に選択肢を考え始める段階で何も準備がない状態になりがちです。
入社時点で出口を確定させる必要はありませんが、この経験を次にどう使うかを一つだけでも想定しておくと、担当する案件の選び方が変わります。

在籍年数の記述に根拠が弱いという点は前述のとおりです。
年数を目安にするのではなく、職位で考えるほうが判断の材料になります。
次の職位に上がった時点、あるいは特定の案件を完遂した時点を区切りとして置く形です。

転職の判断にどう関わるか

入る前に確認する3つの項目

面談を伴うサービスであれば、担当者を通じて次の3点を確認できます。
評価の頻度、昇進の判断がどう行われるか、そして昇進しなかった場合にどういう扱いになるか。

いずれも求人票には書かれない項目です。
制度そのものより、その会社での運用を聞くほうが実態に近づきます。
選考の進み方はコンサル転職の選考対策にまとめています。

想定より下の職位を提示された場合

選考の途中で、応募した職位より下の職位を前提に進めたいと伝えられることがあります。
この仕組みを踏まえると、確認すべきなのは条件の高さだけではありません。

その職位で最初に担当する役割と、次の職位に上がる判断がどう行われるかを聞きます。
下の職位から入ること自体が不利なのではなく、そこから先の進み方が分からないまま受けることが判断を難しくします。
条件そのものを動かせる場面については転職の年収交渉はできる?で扱っています。

出るタイミングを職位で置く

この仕組みが動いている組織では、いつ動くかを自分で決めておく意味があります。
前述のとおり、年数ではなく職位や案件の区切りで置くほうが具体的になります。

コンサルへの転職時の平均年齢は29.8歳、中央値は29歳でした(出典: OpenMoney)。
入る時期の分布は分かっていますが、出る時期の分布は確認できていません。
自分で区切りを置く以外に基準がないというのが実態に近い理解です。

情報の集め方を段階で分ける

相場を見るのは登録型で足りる

評価制度の話に入る前に、まず求人と年収レンジを見ておきます。
ここが分かっていないと、提示された条件が妥当かどうかを自分で判断できません。

当サイトのデータでは、LHH転職エージェント、NewMA、転職AI for コンサルタントが登録型で、いずれも全国が対象です。
会員登録の時点から求人を見られる形なので、面談の日程を調整せずに進められます。

運用を聞く段階は面談型

前述の3項目は、求人票にも公開情報にも書かれていません。
ファームの内部事情を知っている人に聞く必要があります。

当サイトのデータでは、MyVisionが面談実施型で対象年齢24〜39歳、コンコードエグゼクティブグループが面談実施型で対象年齢22〜54歳、Groovement Agentが面談実施型で大卒以上かつ24〜34歳の正社員転職検討者が対象です。
CDBエージェントは面談実施型で、50歳未満かつ転職希望時期が半年以内の方が対象です。
対象条件は登録前に読める項目なので、先に確認します。

面談型と登録型の使い分けはコンサル転職は面談なしで進められる?にまとめています。

まとめ

  • アップオアアウトは業界で共有されている慣行の呼び名であり、制度の正式名称ではない
  • 割合を示す調査は見つかっておらず、在籍年数の記述にも一次調査が明示されていない
  • 仕組みが成り立つ背景には、ピラミッド型の人員構成と職位ごとの単価がある
  • 昇進しなかった場合の選択肢は退職だけではなく、ファームによって違う
  • 入る前に確認するのは、評価の頻度・昇進の判断・上がらなかった場合の扱いの3点
  • 出るタイミングは年数ではなく、職位や案件の区切りで置くほうが具体的になる