コンサルの求人を見ていると、勤務時間の欄に「裁量労働制」と書かれていることがあります。
時間を自分で決められる制度だと理解されがちですが、実際には対象になる業務が法令で定められており、職種名だけで適用が決まるものではありません。
ここでは、裁量労働制という制度がどういう枠組みになっているのかを整理し、求人票と労働条件通知書で何を確認するかをまとめます。
この記事は制度の枠組みを紹介するものであり、個別の事案がどう扱われるかの判断には踏み込みません。
最後に相談できる窓口を示します。
裁量労働制は職種名で決まる制度ではない
2つの種類がある
裁量労働制には2種類あります。
労働基準法第38条の3が定める専門業務型と、第38条の4が定める企画業務型です。
どちらも、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた時間を労働時間とみなす仕組みです。
ただし、対象になる業務の決め方と、導入に必要な手続きが異なります(出典: 厚生労働省)。
専門業務型は業務が限定列挙されている
専門業務型で対象にできる業務は、厚生労働省令と告示によって定められており、限定列挙という形をとっています。
列挙されているのは20の業務で、これ以外の業務にこの制度を適用することはできません(出典: 厚生労働省)。
列挙されている業務には、新商品や新技術の研究開発、情報処理システムの分析・設計、デザイナー、コピーライター、放送番組や映画のプロデューサー・ディレクター、ゲーム用ソフトウェアの創作、証券アナリストなどが含まれます。
加えて、公認会計士、弁護士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、弁理士、建築士といった資格に基づく業務も列挙されています。
「コンサルタント」という職種名は列挙されていない
ここが読み違えられやすい部分です。
「コンサルタント」という職種名そのものは、この20業務の中に列挙されていません。
列挙されているのは、情報処理システムに関する考案や助言を行うシステムコンサルタントの業務、そして中小企業診断士・公認会計士・税理士といった資格に基づく業務です。
つまり、コンサルティング会社に勤めているという理由だけで専門業務型の対象になるわけではなく、担当している業務が列挙された業務のいずれかに当たるかどうかで判断されます。
「コンサル業には裁量労働制が適用される」という説明を見かけることがありますが、制度の建て付けはそうなっていません。
適用されうるのは、該当する資格や業務内容の場合に限られます。
企画業務型はどういう枠組みか
対象は事業運営に関する企画・立案・調査・分析
企画業務型は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務を対象とする制度です。
業務の性質上、進め方を大幅に本人の裁量に委ねる必要があるものが想定されています(出典: 厚生労働省)。
専門業務型のように業務名が列挙されているわけではなく、業務の性質で定義されている点が違います。
コンサルティングの実務がこちらの枠組みで扱われる場合、この定義に当たるかどうかが論点になります。
労使委員会の決議が必要
企画業務型を導入するには、事業場に労使委員会を設置し、そこで所定の事項について決議を行い、労働基準監督署へ届け出る必要があります(出典: 厚生労働省)。
手続きが専門業務型より重いため、導入している事業場はその分だけ限られます。
制度の名前が同じでも、導入の要件は同じではありません。
本人の同意が必要とされている
企画業務型では、対象となる労働者本人の同意を得ることが必要とされています。
加えて、2024年4月からは専門業務型についても、本人の同意を得ること、および同意の撤回の手続きを定めることが必要になりました(出典: 厚生労働省)。
つまり、入社すれば自動的に適用されるという形ではありません。
同意を求められる場面が制度上想定されているという点は、入社前に知っておく価値があります。
みなし労働時間と実際の労働時間
「何時間働いても同じ」ではない
裁量労働制では、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなします。
ただし、これはすべての割増賃金がなくなるという意味ではありません。
深夜の時間帯に働いた場合や、休日に働いた場合の扱いは、みなし労働時間とは別に定められています(出典: 厚生労働省)。
また、対象となる労働者の健康と福祉を確保するための措置を講じることも、導入の要件に含まれています。
みなし残業(固定残業代)とは別の制度
求人票では、裁量労働制と固定残業代の記載が近い位置に並ぶことがあります。
この2つは別の制度です。
固定残業代は、一定時間分の時間外労働に対する割増賃金をあらかじめ定額で支払う仕組みで、時間数を超えた分は別に支払われるのが一般的です。
裁量労働制は、労働時間の算定方法そのものを定める制度です。
片方が書かれているからもう片方も同じ、という読み方はできません。
求人票の給与欄の読み方は求人票のどこを読むかにまとめています。
求人票と書面で確認すること
求人票で見る項目
勤務時間の欄に制度名が書かれているかを見ます。
裁量労働制の場合、みなし労働時間が何時間として設定されているかまで書かれていることがあります。
あわせて、給与欄に固定残業代の記載があるか、あるとすれば何時間分かを見ます。
この2つを並べると、その会社が労働時間をどう設計しているかの輪郭が見えます。
複数の求人で同じ項目を並べると、書き方の差が分かります。
内定後は労働条件通知書で確認する
求人票の記載と、実際に適用される条件が同じとは限りません。
確定した条件は、内定後に交付される労働条件通知書で確認します。
始業と終業の時刻、みなし労働時間、割増賃金の扱いがどう書かれているかを読みます。
書面の読み方は労働条件通知書の確認ポイントにまとめています。
求人票の段階で分からないことは、書面の段階で必ず分かるという順序を押さえておくと、確認を先送りせずに済みます。
面談で聞ける質問
面談を伴うサービスであれば、担当者を通じて確認できることがあります。
制度が適用される職位はどこからか、実際の勤務の実態はどうか、同意を求められる場面があるか、といった内容です。
制度の適否そのものを担当者が判断できるわけではありませんが、その会社での運用がどうなっているかは、求人票より具体的に聞けます。
判断に迷う場合の相談先
公的な窓口がある
自分の勤務先での制度の運用について疑問がある場合や、条件が説明と違うと感じた場合は、公的な窓口で相談できます。
都道府県労働局の総合労働相談コーナー、および事業場を管轄する労働基準監督署が窓口になります。
この記事で扱っていないこと
制度が適正に運用されているかどうかは、業務の実態、事業場の手続き、個別の契約内容によって判断されます。
一般的な説明で結論を出せる種類の問題ではありません。
この記事は制度の枠組みを整理するにとどめています。
個別の事案については、上記の公的な窓口や弁護士等の専門家に相談してください。
サービスの使い分け
複数の求人票を並べる段階は登録型
制度の記載を読み比べるには、まず求人が手元に必要です。
会員登録の時点から求人を見られる登録型であれば、面談の日程を調整せずに進められます。
当サイトのデータでは、LHH転職エージェント、NewMA、転職AI for コンサルタントが登録型で、いずれも全国が対象です。
同じ職位の募集を10件ほど並べ、勤務時間と給与の欄がどう書かれているかを見比べます。
運用を聞く段階は面談型
書き方の差が見えてきたら、実際の運用を聞く段階に進みます。
ここからは人に聞くほうが早くなります。
当サイトのデータでは、MyVisionが面談実施型で対象年齢24〜39歳、コンコードエグゼクティブグループが面談実施型で対象年齢22〜54歳です。
CDBエージェントは面談実施型で50歳未満かつ転職希望時期が半年以内の方、Groovement Agentは面談実施型で大卒以上かつ24〜34歳の正社員転職検討者が対象です。
対象条件は登録前に読める項目なので、先に確認します。
方式ごとの使い分けはコンサル転職は面談なしで進められる?、職位ごとの役割の違いはコンサルの役職とは?にまとめています。
まとめ
- 裁量労働制には**専門業務型(労基法38条の3)と企画業務型(同38条の4)**の2種類がある
- 専門業務型の対象業務は20業務に限定列挙されており、これ以外には適用できない
- 「コンサルタント」という職種名は列挙されていない。
システムコンサルタントの業務や、中小企業診断士・公認会計士・税理士等の資格に基づく業務が対象として挙げられている - 企画業務型は労使委員会の決議と届出が必要で、本人の同意も要件とされている
- 2024年4月からは専門業務型でも本人の同意と、同意の撤回の手続きが必要になった
- 固定残業代とは別の制度のため、求人票では両方を並べて確認する
- 個別の事案は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーなど公的な窓口で相談できる



