ITエンジニアの求人に応募するとき、志望動機の欄で書くことが見つからないことがあります。
未経験であれば実務の話が書けず、経験者であれば技術の話をどこまで書くべきか判断がつかない、という状態です。

この記事は、応募書類に書く志望動機と転職理由の中身を扱います。
未経験からの難易度の見積もり方は文系・未経験からITエンジニアになれる?に、社内SEとSIerで探し方がどう違うかは社内SEとSIer、転職の探し方はどう違う?にまとめています。
ここでは、書いて提出する文章に絞ります。

例文は型を示すためのものです。
使用した言語や担当した業務に置き換えて使ってください。

経験の有無で読まれるものが入れ替わる

未経験は「何を作ったか」が読まれる

未経験からの応募では、実務経験を示せません。
そのため読まれるのは、学習をどう進め、その結果として何ができたかです。
独学の期間そのものより、手元に残っているものが判断材料になります。

「なぜIT業界を選んだのか」を長く書く応募者は多いのですが、この部分だけで差はつきません。
動機の説明は短くまとめ、作ったものの説明に分量を割くほうが噛み合います。

経験者は「一致度」と「判断の理由」が読まれる

経験者の応募では、前提が入れ替わります。
読まれるのは、応募先が使っている技術と自分の経験がどれだけ重なるか、そして技術的な判断をどう説明できるかです。

同じ実装でも、なぜその方法を選んだのかを説明できるかどうかで見え方が変わります。
選ばなかった選択肢に触れられるかが、経験の深さとして読まれる部分です。

評価軸を並べる

区分 志望動機で読まれるもの 前へ置く材料
未経験 学習の進め方と成果物 作ったものの本数・使用技術・公開先
経験者 技術の一致度と判断の説明 使用言語・担当した工程・設計を決めた理由

この違いを理解しないまま、経験者向けの書き方を未経験で真似ると、実務経験がないことだけが目立ちます。
逆に、経験者が学習意欲を中心に書くと、実績があるのに伝わらなくなります。

業界の将来性は志望動機にならない

人材不足の数字を書いても材料にならない

経済産業省の試算では、IT人材の需要が中位から高位で伸びた場合、2030年に最大約79万人が不足するとされています(出典: 日本経済新聞)。

この種の数字は、業界を選んだ背景としては事実です。
ただし、志望動機の欄に書いてもその会社を選んだ理由にはなりません。
同じ文章を業界内のどの会社にも出せてしまうためです。

「成長できる環境」も同様に流用できてしまう

「技術力を高められる環境で働きたい」という書き方も、応募先を入れ替えて成立します。
書くのであれば、応募先の技術スタック、開発体制、公開されている技術記事のうち1つを引いて接続します。

求人票のどこにその情報があるかは求人票のどこを読むかにまとめています。
必須要件と歓迎要件に並ぶ語は、そのまま志望動機に使える材料です。

転職理由は収入以外の言葉も用意する

エンジニアが転職を決めた理由を尋ねた調査では、「収入アップのため」が42.4%で最多でした(レバテック株式会社調査、社会人エンジニア300名、2022年9月実施。
出典)。

実際の動機として最も多い項目ですが、書類にそのまま書くと提示額で動く人だと読まれます。
同じ調査では「技術スキルが伸ばせないと感じたから」も14.7%で挙がっています。
どの技術に触れたいのかまで具体化すると、志望動機と一続きになります。

未経験者の志望動機に書くこと

学習量は時間ではなく成果物で示す

「〇〇時間学習しました」という書き方は、内容が伝わりません。
代わりに、作ったものを数えます。
アプリの本数、公開先、使用した言語とフレームワーク、実装した機能の一覧が材料になります。

動くものが手元にない場合でも、写経した教材の範囲や、詰まった箇所をどう解決したかは書けます。
過程を書くと、学習の進め方そのものが判断材料になります。

前職の経験と接続する

未経験からの転職では、前職の業務が無関係になるわけではありません。
事務職なら業務手順の整理、営業職なら要件のヒアリング、製造なら品質の確認という形で、開発の工程と対応する部分があります。

例文の型(事務職から)

「前職では〇〇部で受発注のデータ管理を担当し、表計算ソフトの関数とマクロで月次の集計を自動化していました。作業を減らす仕組みを自分で作れることに手応えがあり、〇〇の学習を始めました。現在までに〇〇を用いたWebアプリを〇本制作し、〇〇で公開しています。業務の課題を仕組みで解決する側に回りたいと考え、貴社を志望しました。」

応募先の種類で書き分ける

未経験可の求人でも、自社サービスの開発、受託開発、社内システムの運用では、入社後に担当する内容が違います。
志望動機で触れる内容も変わります。
職域の違いは社内SEとSIer、転職の探し方はどう違う?に整理しています。

スクールや職業訓練を経ている場合

スクールや職業訓練を修了している場合、修了したこと自体は多くの応募者と重なります。
差がつくのは、カリキュラムの外で何をしたかです。
課題として作ったものをその後どう改修したか、追加で実装した機能があるかを書きます。

修了制作をそのまま提出する場合も、どこが指定された仕様で、どこを自分で決めたのかを分けて書きます。
この区別があるだけで、読み手は判断できる状態になります。

「未経験ですが頑張ります」で終えない

意欲の表明だけで終わると、他の応募者と区別がつきません。
意欲は、学習の継続期間と成果物の数という事実で示すほうが具体的になります。
文章の量を増やす必要はありません。

経験者の志望動機に書くこと

技術の一致を先に示す

冒頭で、使用してきた言語・フレームワーク・クラウド環境と、担当してきた工程を短く並べます。
求人票の必須要件に書かれた語と重なる部分を先に出すと、読み手が判断しやすくなります。

設計を決めた理由を1つ書く

実装した機能を並べるだけでは、判断の質が伝わりません。
担当した中から1つを選び、なぜその方式を選んだかを書きます。
パフォーマンス、運用のしやすさ、チームの習熟度など、判断の基準を明示することが要点です。

例文の型(受託開発から自社サービスへ)

「前職では〇〇を用いた受託開発を〇年間担当し、要件定義から実装、リリース後の保守まで関わってきました。案件ごとに納品して終わる形が中心で、公開後の数値を見ながら改善する機会がありませんでした。貴社の〇〇は継続的に改善を重ねる体制と伺い、これまでの設計・運用の経験を、機能の改善に使う立場で活かしたいと考えています。」

経験のない技術への関心はどう書くか

応募先が自分の使ったことのない技術を採用している場合、経験があるように書くことはできません。
書けるのは、近い領域での経験と、その技術について自分で試した範囲です。

「業務では未経験だが、個人で〇〇まで実装した」と、境界を明示して書きます。
業務経験と個人での学習を混ぜて書かないのが前提です。
境界が曖昧なまま書くと、面接での確認で信頼を落とします。

年代によって書く比重が変わる

30代以降では、実装の経験に加えて、チームの中でどう動いたかが読まれる場面が増えます。
レビュー、後進の育成、他部署との調整といった内容が材料になります。
年代ごとの事情は30代・40代のITエンジニア転職にまとめています。

提出する前の確認

職務経歴書と役割を分ける

技術の一覧や担当プロジェクトの詳細は職務経歴書に書き、志望動機ではそのうち1つに絞って掘り下げます。
同じ内容を両方に書くと、読み手にとって重複になります。
作成の順序は職務経歴書はいつ作ればよいかを参照してください。

応募先ごとに変える部分を先に決める

志望動機のうち、経歴と学習の説明は応募先が変わっても大きくは動きません。
変わるのは、応募先の技術や体制に触れた部分だけです。
変える段落を1つに固定しておくと、応募社数が増えても内容が薄くなりません。

複数のサービスや媒体を並行して使う場合も、提出する文章の管理はこの単位で行います。
同じ会社に複数の職種で応募するときは、職種ごとに変える部分を分けて持ちます。

書いた技術は説明できる状態にする

志望動機に挙げた技術は、面接で内容を聞かれます。
触ったことがある程度のものを、経験として書かないようにします。
答え方の型は転職面接の準備にまとめています。

まとめ

  • 未経験は学習の成果物、経験者は技術の一致度と判断の理由が読まれる
  • 2030年に最大約79万人が不足という数字は背景であり、その会社を選んだ理由にはならない
  • 学習量は時間ではなく、作った本数・使用技術・公開先という形で数えて書く
  • 未経験では前職の業務と開発の工程を接続すると、書ける材料が増える
  • 経験者は設計を決めた理由を1つ書くと、実装の列挙より判断の質が伝わる
  • 転職理由の最多は収入アップ42.4%だが、書類では触れたい技術まで具体化する