ゲーム業界の転職について調べていると、「好きを仕事にする」という話と「実績がなければ通らない」という話が同時に出てきます。
この2つは矛盾しているように見えますが、実際には別々の読者に向けた話が混ざっているだけです。
すでに業界の中にいる人と、外から入ろうとする人では、動く理由も準備すべきことも違います。
ここでは、業界内で移る人と異業界から入る人の動機の違いを、確認できるデータから整理します。
ゲーム業界に入る経路は2つある
回答者321人の内訳は210人と111人
株式会社コンフィデンスが2022年9月に実施した社員アンケートでは、回答した321人のうち、ゲーム業界内から転職してきた人が210人、異業界から転職してきた人が111人でした(出典: 株式会社コンフィデンス)。
おおよそ3分の2が業界内での移動、3分の1が外からの流入という内訳になります。
これは1社の社員を対象とした調査であり、業界全体の比率を示すものではありません。
ただし、業界内の移動と外からの流入が同時に起きていることは読み取れます。
求人票を見ていて「経験者向けの募集と未経験可の募集が混在している」と感じるのは、この2つの流れが同じ市場に並んでいるためです。
経路が違えば動機も違う
同じ調査では、業界内から移った210人と、異業界から入った111人で、挙げられている理由が分かれています。
前者はキャリアや仕事の中身に関する理由が上位に来るのに対し、後者は業界そのものへの関心が動機の中心になります。
自分がどちらの経路にいるかで、参考にすべき情報が変わります。
業界内の人が未経験者向けの記事を読んでも判断材料になりませんし、その逆も同じです。
まず自分の立ち位置を決めてから情報を集めるほうが、遠回りが減ります。
どちらとも言い切れない場合
Web制作、映像、アプリ開発といった隣接する分野にいる場合、自分が業界内なのか異業界なのかを決めきれないことがあります。
この判断は、所属していた会社の業種名ではなく、提示できる制作物が募集要件と同じ形式かどうかで分けるほうが実務に近くなります。
3DCGの制作物を持っているなら、ゲーム会社の3Dデザイナー職に対しても同じ形式の材料を出せます。
一方、同じ制作会社にいても進行管理が中心だった場合、出せるものの形が変わり、応募先の職種名も変わります。
職種の対応関係はゲームのデベロッパーとパブリッシャー、何が違う?に整理しています。
業界内で移る人の理由
キャリアプランを描けるかどうか
業界内で転職した210人の理由として上位に挙がっているのは、キャリアプランの描きやすさです(出典: 株式会社コンフィデンス)。
いまの会社で自分が数年後にどの役割に就いているかが想像できるかどうか、という観点です。
この理由は、待遇への不満とは性質が違います。
条件そのものは悪くないが、この先に進む道筋が見えないという状態から動く形です。
そのため、転職先を選ぶときの判断軸も、目先の年収ではなく、担当できる工程の範囲や役職の段階になります。
他社・他タイトルへの興味
同じく上位に挙がっているのが、他社や他タイトルへの興味です。
同じ職種でも、扱うジャンルや開発規模が変われば求められるものが変わります。
コンシューマからモバイル、あるいはその逆といった移り方は、業界内では珍しくありません。
この動機で動く場合、確認したいのは会社の規模や知名度ではなく、そのタイトルの開発体制の中で自分がどこを担当するかです。
会社ごとの役割の違いはゲームのデベロッパーとパブリッシャー、何が違う?にまとめています。
開発・運営の区切り
3つ目に挙がっているのが、開発・運営の区切りです。
ゲームの制作はタイトル単位で進むため、リリースや運営終了といった節目が、動く時期の判断材料になります。
これはゲーム業界に固有の事情です。
区切りの時期は自分で選べないことが多く、動きたいときに募集が出ているとは限りません。
だからこそ、区切りが来る前から求人の傾向を見ておく意味があります。
異業界から入る人の理由
「ゲームが好き」が約6割
異業界から転職してきた111人では、「ゲームが好き」という動機が約6割を占めています(出典: 株式会社コンフィデンス)。
業界内から移った人の理由がキャリアや仕事の中身に集中していたのとは、明確に対照的です。
この差は、外から入る人にとって重要な意味を持ちます。
同じ動機を持つ応募者が他にも多くいるということだからです。
志望動機として「ゲームが好き」だけを書いた場合、他の応募者と区別がつきません。
好きという動機だけでは足りない理由
ゲーム業界の採用ニーズは、経験・実績・ポートフォリオを持つ即戦力に集中しているとされています(出典: シリコンスタジオエージェント)。
好きであることは応募する理由にはなりますが、選考で比較される材料にはなりにくいということです。
ただし、異業界から入った人が111人いるという事実は、外からの入口が閉じていないことも示しています。
問題は入れるかどうかではなく、好きという動機に何を足せば選考の土俵に乗るかです。
作品を提示できない場合の整理の仕方はポートフォリオなしでクリエイター職に応募できる?で扱っています。
前職の経験を職種に翻訳する
異業界から入る場合、前職の経験がまったく無関係になるわけではありません。
進行管理の経験はプロジェクトマネジメント、データ分析の経験は運営職、接客の経験はカスタマーサポートやQAといった形で、対応する職種があります。
自分の経験がゲーム業界のどの職種名に対応するかを先に調べておくと、応募先の幅が変わります。
職種の一覧と分類はゲームのデベロッパーとパブリッシャー、何が違う?に整理しています。
動機の違いは準備の違いになる
経路ごとに用意するものが違う
同じ調査から読み取れる2つの経路について、準備すべきものを並べると違いがはっきりします。
| 経路 | 主な動機 | 用意するもの |
|---|---|---|
| 業界内から移る | キャリアプラン、他社・他タイトルへの興味、開発の区切り | 担当した工程と規模の説明、次に担いたい役割の言語化 |
| 異業界から入る | ゲームが好き | 前職経験の職種への翻訳、提示できる制作物 |
業界内から移る場合は、実績があること自体は前提として扱われます。
そのため、何をしてきたかより、次に何を担いたいかの説明が判断材料になります。
異業界から入る場合は、その前提がないところから始まるため、示せる材料をそろえる作業が先に来ます。
検討から転職までは半年以内が多い
同じ調査では、転職を検討してから実際に転職するまでの期間について、全体の8割以上が半年以内に決めていました(出典: 株式会社コンフィデンス)。
半年という期間は、ポートフォリオを一から作り直すには短い一方、求人を見て条件の相場をつかむには十分です。
準備の順番として、作品づくりより先に求人票の必須要件を数えるほうが効率的なのはこのためです。
進め方は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。
「好き」を選考で使える形にする
異業界から入る場合でも、「ゲームが好き」という動機そのものを消す必要はありません。
他の応募者と重なるのは、好きという言葉だけを置いて、その中身を書いていないときです。
書き方としては、遊んだタイトル数を並べるより、1本に絞って何がどう作られていると考えたかを書くほうが、同じ字数でも中身が残ります。
応募先が運営中のタイトルを持つ会社であれば、更新の入れ方や導線について気づいた点を書く形もあります。
どちらの書類に何を書くかは履歴書と職務経歴書の違いとは?、面接で問われる形は転職面接の準備にまとめています。
経路によって使うサービスが変わる
経験者向けは業界特化のサービスが中心
業界内から移る場合、担当した工程やツールの話が通じる相手を選ぶことになります。
当サイトが扱うゲーム・クリエイティブ向けサービスは16件で、内訳は登録型が4件、面談実施型が9件、申込型が1件、進み方の分類が確認できていないものが2件です。
面談実施型が半数以上を占めているのは、担当工程や制作物の中身を聞かないと紹介先を絞れないという事情によるものと考えられます。
方向が固まっているほど、面談で話せる内容は具体的になります。
運営会社ごとの違いはゲーム業界の転職は大手が安心?で扱っています。
まず求人を見たい段階では登録型から
転職するかどうかを決めていない段階であれば、会員登録の時点から求人を見られる登録型のほうが負担は小さくなります。
当サイトのデータでは登録型が4件あり、いずれも正社員の求人を対象としています。
この段階で見るのは、必須要件に並ぶツール名と経験年数です。
自分の担当してきた工程がどの職種名で募集されているかが分かると、次に何を用意すべきかが具体的になります。
登録型の使い方はゲーム業界は面談なしで求人を見られる?にまとめています。
対象条件で候補が絞られることがある
サービスの側にも、利用できる人の条件が置かれていることがあります。
当サイトのデータでは、CREATIVE JOBは面談実施型で対応地域は全国、対象年齢は20歳〜49歳、映像・ゲーム・Web・広告関連の業界または職種の経験年数1年以上が対象として示されています。
HIGHFIVEも面談実施型で全国が対象、対象年齢は20歳〜49歳です。
AnyKanは面談実施型で対象地域が東京・京都、対象年齢は23歳〜44歳、業界業種の実務経験者が対象とされています。
経験年数が条件に入っているサービスは、異業界から入る段階では対象に当てはまりません。
これは向き不向きの話ではなく、登録しても紹介に進まないという形で表れます。
経路が違えば、そもそも使える窓口が違うということです。
年齢条件のあるサービスの見方は未経験・異業種への転職は何歳まで現実的かにまとめています。
未経験からの入口は別に用意されている
異業界から入る場合、転職サービスとは別の経路が候補になります。
当サイトのデータでは、無料の説明会への参加から始まる形として掲載されているサービスが2件あり、いずれもスクールにあたります。
求人紹介を目的としたサービスとは、そもそも役割が違います。
どちらが正しいということではなく、いま自分が示せる材料がどれだけあるかで選ぶものが変わります。
示せる制作物がある状態なら業界特化のサービス、そこから作る段階ならスクールという入口を含めて検討する形になります。
まとめ
- 回答者321人の内訳は、ゲーム業界内からの転職者210人、異業界からの転職者111人
- 業界内から移る人の理由は、キャリアプランの描きやすさ・他社や他タイトルへの興味・開発の区切りが上位
- 異業界から入る人は「ゲームが好き」という動機が約6割で、他の応募者と重なりやすい
- 採用ニーズは即戦力に集中しているため、好きという動機に示せる材料を足す必要がある
- 検討から転職までは8割以上が半年以内。
作品づくりより先に求人票の要件を数えるほうが早い - サービスによっては経験年数や年齢が対象条件として置かれており、経路によっては候補から外れる
- 経験者は業界特化のサービス、未経験はスクールという別の入口があり、いる段階で選ぶものが変わる



