内定が2社以上から出ると、うれしさと同時に決められない状態が訪れます。
どちらも良く見えたり、逆にどちらにも引っかかる点があったりして、判断が止まります。

ここでは、複数の内定を比べるときに何を見るのかを整理します。
年収は最も比べやすい項目ですが、それだけで決めると入社後に前提が違ったということになりやすい部分でもあります。

内定が複数あるときは基準を先に決める

迷う原因は基準がないこと

決められない理由は、選択肢が多いことそのものではありません。
何を優先するかを決めていないまま、条件の断片を突き合わせているために比較が終わらないのです。

先に決めるのは会社ではなく、比べる項目とその順番です。
項目が決まっていれば、情報が足りない箇所も具体的に分かります。

年収は比べやすいが情報量が少ない

年収は数字で示されるため、真っ先に目に入ります。
ただ、金額だけでは労働時間も業務の範囲も分かりません。
同じ額でも、月20時間の残業と月60時間の残業では意味が違います。

比較の入口として年収を使うのは自然ですが、そこで止めると判断材料が足りないままになります。
年収が決まる構造は転職で年収は上がる?にまとめています。

比較する項目を並べて書き出す

複数社を比べるときは、項目を縦に並べ、会社を横に並べた表を作ると進みます。
空欄が残った項目が、そのまま確認すべき事項になります。

項目を増やしすぎると比較が止まります。
年収の内訳、労働時間、勤務地、業務の範囲、教育の体制、事業の構造あたりに絞ると、最後まで埋められます。

書き込むときは、求人票や書面に書かれていた事実と、面接で口頭に聞いた話を分けて記録します。
前者はあとから確認できますが、後者は記憶に頼ることになるためです。
出どころが分かる形で書くと、確認が必要な箇所も自然に浮かびます。

選考のタイミングはそろわないことが多い

実際には、2社の結果が同じ日に出ることのほうが少なくなります。
1社から内定が出た時点で、他社はまだ選考の途中という状況が起きます。

この場合、選考中の会社に事情を伝えて日程を早められないか相談できます。
他社の内定を持っていること自体は、伝えて問題のない事実です。
相談する際は、いつまでに回答が必要かという日付をそろえて伝えると、相手も判断しやすくなります。
転職サービスを介している場合は、担当者から企業へ確認してもらう方法もあります。

年収の中身を分解する

提示額に何が含まれているかを確認する

提示された年収に、賞与が含まれているか、含まれているとしてそれは確定した額なのかを確認します。
固定残業代(みなし残業)が含まれている場合、何時間分に相当するのかも確認の対象です。

住宅手当や家族手当のような手当は企業ごとに違い、基本給が同じでも総額に差が出ます。
提示額が同じでも、内訳が違えば手取りも将来の伸び方も変わります。

時間あたりで見直す

年収を、想定される年間の労働時間で割ってみると、印象が変わることがあります。
残業の見込み時間、休日の日数、通勤にかかる時間を含めて考えると、比較の結果が入れ替わる場合もあります。

通勤時間は給与に表れませんが、毎日の可処分時間を確実に削ります。
片道の差が30分あれば、年間では相当な時間になります。

数年後の伸び方を見る

初年度の提示額だけでなく、その後どう上がるのかを見ます。
等級制度や給与テーブルがある企業では、どの等級で入るかがその後の幅を決めます。

昇給の仕組みが決まっている企業と、個別に決まる企業では、数年後の位置が変わります。
入社時の条件を動かせる余地があるかどうかは転職の年収交渉はできる?で扱っています。

給与以外の制度も条件のうち

退職金の制度は、法令で企業に義務づけられているものではありません。
制度を設けている企業と設けていない企業があり、内容も一様ではありません。
企業型の確定拠出年金を導入している場合は、掛金の扱いを確認します。

住宅の補助、通勤にかかる費用の上限、財形や持株の制度も企業ごとに違います。
毎月の給与には表れないが金額に換算できる項目は、比較表の中に入れておくと差が見えます。
求人票のどこに書かれるかは求人票のどこを読むかにまとめています。

働き方の条件を比べる

勤務時間と休日の実態

所定労働時間、年間休日数、有給休暇の取得状況を並べます。
年間休日は数字で書かれるため比較しやすい項目です。

残業の実態は求人票に書かれていないことが多く、面接や内定後の面談で聞く項目になります。
平均ではなく、繁忙期にどうなるかを聞くほうが実態に近づきます。

勤務地と異動の範囲

配属先がどこか、将来的に転勤の可能性があるかを確認します。
転勤の有無は生活の設計に直結する条件で、後から変えにくい部分です。

労働条件を書面で示す際には、就業の場所と業務について、雇入れ直後の内容だけでなく変更の範囲もあわせて明示することとされています。
書面で確認できる項目のため、内定後の書類を待つ意味があります。
詳しくは労働条件通知書の確認ポイントにまとめています。

在宅勤務や時差出勤の運用

制度としてあるかどうかと、実際に使われているかは別です。
「在宅勤務可」と書かれていても、部署によって運用が違うことがあります。

配属予定の部署で、いま何人がどの程度使っているかを聞くと、制度の実態が分かります。
数字で返ってくれば、そのまま比較の材料になります。

入社日と引き継ぎの都合

希望する入社日をいつにできるかは、企業によって幅があります。
すぐに来てほしい企業と、数か月先でも構わない企業では、現職の引き継ぎに使える時間が変わります。

在職中であれば、退職を伝えてから最終出社までの期間、残っている有給休暇の日数を先に把握しておきます。
入社日を早めに設定したために引き継ぎが中途半端になると、退職の手続きが長引くことがあります。
入社日は条件の一つとして比較の対象に入れます。
在職中の進め方は在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。

仕事の中身と会社を比べる

任される範囲と裁量

入社直後に何を担当するのか、その範囲は求人票に書かれた内容と一致しているかを確認します。
同じ職種名でも、担当する工程や判断できる範囲は企業によって変わります。

裁量が大きいほど負荷も大きくなります。
どちらを望むかは人によって違うため、良し悪しではなく自分の希望と合っているかで見ます。

誰と働くか、教育の体制

配属される部署の人数と構成、直属の上司にあたる人が誰かは、日々の働きやすさに直結します。
面接で会った人がそのまま上司になるとは限りません。

未経験の要素を含む転職であれば、入社後にどう教わるのかも比較の対象です。
研修の有無だけでなく、誰がどのくらいの期間見てくれるのかまで聞くと差が見えます。

事業の構造と安定性

何で利益を上げている会社なのか、収益源が一つに偏っていないかを見ます。
上場企業であれば決算資料が公開されており、売上の構成や推移を確認できます。

非上場であっても、事業内容や取引先の構成は面接で聞ける範囲です。
将来性の断定はできませんが、構造は確認できます。

評価と昇進の決まり方

入社後にどう評価されるかは、数年後の条件を左右します。
評価の頻度、誰が評価するのか、等級が上がる判断がどう行われるのかは、内定後の面談で聞ける項目です。

制度が明文化されている企業と、個別に判断される企業があります。
どちらが良いという話ではなく、自分がどちらの環境で納得して働けるかという問題です。
回答が曖昧な場合、その曖昧さ自体が運用の実態を示していることもあります。

入社後の担当が決まる時期

配属先や担当の業務が内定の時点で確定している企業と、入社後に決まる企業があります。
後者の場合、比較の表に書き込んだ業務の範囲が入社後に変わる可能性があります。

どちらなのかを確認し、まだ決まっていないのであれば、その旨を表に書いておきます。
未確定であることも、比較に使える情報です。
決まっていない項目が多い側を選ぶなら、入社後に前提が変わりうることを承知したうえで決めたことになります。

決めきれないときの手順

優先順位に重みをつける

項目をすべて同じ重さで比べると、どちらも同点になりがちです。
自分にとって重い項目を3つ選び、その3つで先に比べると結論が出やすくなります。

3つを選ぶ作業自体が、何を求めて転職するのかを言語化する作業になります。
ここが決まっていない場合は、比較より前に戻る必要があります。
考える順序は転職するか迷っている段階では何をする?にまとめています。

情報が足りない項目は聞く

表の空欄は、聞けば埋まります。
内定後に条件面の面談の場が設けられることが多く、そこで質問できます。
転職サービスを介している場合は、担当者を通して確認する方法もあります。

聞きにくいと感じる内容ほど、入社後に効いてきます。
質問の組み立て方は転職面接の準備も参考になります。

期限と辞退の伝え方

内定には回答の期限があります。
期限を延ばしてほしい場合は、理由と希望する日付をそろえて早めに伝えます。
連絡せずに期限を過ぎるのは、最も避けたい進め方です。

辞退する会社には、決まった時点で速やかに連絡します。
理由を詳細に説明する義務はありませんが、選考に時間を使ってもらった相手であることは変わりません。

それでも同点になったとき

3つの項目で比べても差がつかない場合、判断の材料そのものが足りていない可能性があります。
空欄の項目が残っていないか、聞いたつもりで曖昧なまま進めた項目がないかを先に見直します。

材料がそろっていてなお同点なら、数年後にどちらの経験を持っていたいかで選びます。
担当する業務の範囲、扱う商材や領域、身につく手順は、次に動くときの持ち札になります。

決めたあとは、選ばなかった理由を一行でよいので書き残しておきます。
入社後に迷いが出たとき、何を優先して決めたのかを自分で確認できるためです。

まとめ

  • 迷う原因は選択肢の多さではなく、比べる基準を決めていないこと
  • 年収は提示額ではなく、含まれるものと時間あたりに分解して見る
  • 勤務地と異動の範囲は後から変えにくいため、書面で確認する
  • 制度があることと使われていることは別なので、運用の実態を聞く
  • 選考の時期はそろわないため、回答が必要な日付を伝えて調整を相談する
  • 重い項目を3つ選んで先に比べると、結論が出やすくなる