転職活動を始めるとき、自分のSNSのアカウントが気になることがあります。
実名で使っているアカウントがある、過去に仕事の愚痴を書いた覚えがある、といった状況です。
「見られているらしい」という話は広く出回っていますが、その根拠は示されないことが多い部分です。
ここでは、公表されている調査の数値を出発点に、何がどこまで見られているのか、そして活動を始める前に何を確認すればよいのかを整理します。
在職中の会社に転職活動を知られないための対策は在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。
この記事は逆に、応募先の採用担当者からどう見えるかを扱います。
採用担当者はどのくらい見ているか
4割強が日ごろから確認している
マイナビキャリアリサーチLabの「転職者のSNS発信と企業対応に関する実態調査」では、中途採用の担当者のうち4割強が、SNSや口コミサイトの投稿を日ごろから確認していると回答しています(出典: マイナビキャリアリサーチLab「転職者のSNS発信と企業対応に関する実態調査」)。
この数字は「全応募者のアカウントを調べている」という意味ではありません。
日ごろから見ている、という習慣の話です。
業務の一部として目に入る状態にある担当者が一定数いる、と読むのが実態に近い理解になります。
自社に関する投稿を見かけた経験は65.9%
同じ調査で、中途採用の担当者の65.9%が、SNSで自社の仕事をほのめかす投稿や、口コミサイトでの自社に関する否定的な情報を見かけたことがあると回答しています(出典: 同調査)。
見ているかどうか以前に、見かけてしまう状態が普通に起きているということです。
検索して探しに行かなくても、社名や業務の内容が書かれた投稿は視界に入ります。
「全員が全員を調べている」ではない
この2つの数値から言えるのは、SNSを確認する担当者が一定数いること、そして自社に関する投稿が実際に目に入っていることです。
応募者一人ひとりのアカウントを特定して調査する運用が標準になっている、という話ではありません。
そのため、対応の方向は「見られないように隠す」ことではありません。
見えたときに問題になる情報が公開されていないかを確認する、という形になります。
何が見られているのか
業務の内容に触れた投稿
見かけた経験として調査で挙がっているのは、仕事をほのめかす投稿と、勤務先に関する否定的な情報です。
どちらも、業務や勤務先が特定できる内容という点で共通しています。
採用する側から見ると、これは守秘に対する感覚が表れる部分です。
業務の内容をどこまで書いてよいと考えているかが、投稿の内容に出ます。
特定の顧客名や案件名が書かれていれば、それだけで判断の材料になります。
採用選考で把握すべきでない事項がある
一方で、採用選考には、把握すべきでないとされている事項があります。
厚生労働省は、本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項を採用の判断に用いないという考え方を示しています(出典: 厚生労働省「公正な採用選考をめざして」)。
SNSには、こうした事項に関わる情報も含まれます。
見る側にも線引きが求められる領域である、という前提を知っておくと、過度に萎縮せずに済みます。
見られるのは投稿の本文だけではない
投稿の文章を気にする人は多いのですが、判断の材料になるのはそれだけではありません。
プロフィールに書いた経歴、固定した投稿、添付した画像の写り込みも同じように表示されます。
特に見落とされやすいのが画像です。
社内で撮った写真の背景に、資料や掲示物が写っていることがあります。
文章を消しても、画像が残っていれば同じ情報が公開されたままになります。
口コミサイトも同じ枠で扱われる
調査では、SNSと口コミサイトが並べて質問されています。
企業側からは、この2つは同じ「外部に出ている自社の情報」として扱われているということです。
匿名で投稿する前提の場所であっても、投稿の内容から書き手が推測できる場合があります。
在籍していた部署や時期が書かれていれば、社内では特定できることがあります。
退職後の投稿は想像より多い
51.3%が前職について投稿している
同じ調査では、2024年に転職した正社員の51.3%が、退職後にSNSや口コミサイトで前の勤務先について投稿したことがあると回答しています(出典: 同調査)。
年代別では20代が61.4%で最も多くなっています。
半数を超える人が投稿している、という数字です。
投稿する側と、それを見かける側が同じ場所にいるという構図がここで確認できます。
数字の読み方
この数字は「投稿すべきではない」という話ではなく、投稿が例外的な行動ではないことを示しています。
だからこそ、企業側が見かける機会も多くなります。
自分が転職の後に投稿する可能性がある、という前提で考えると、書く内容の線引きを先に決めておく意味が出てきます。
退職の経緯を人に話す範囲をどう決めるかは退職はどう伝える?でも扱っています。
在職中の義務は退職後も残る部分がある
在職中に知った情報の取り扱いについては、就業規則や誓約書で定めがあることが一般的です。
退職によってすべての義務が消えるとは限りません。
具体的にどこまでが対象になるかは、契約や規程の内容によります。
判断に迷う内容を投稿する前に、退職時に署名した書面を確認してください。
個別の判断が必要な場合は、専門の窓口に相談する領域です。
転職活動を始める前に確認すること
自分の名前で検索する
最初にやるのは、自分の氏名で検索して何が出てくるかの確認です。
実名でアカウントを作っていれば、そのまま出てきます。
確認するのは、氏名と勤務先が同時に分かる状態になっていないか、過去の投稿がどこまで表示されるか、の2点です。
自分で見に行かないと、何が公開されているかは分かりません。
公開範囲を見直す
アカウントごとに、公開範囲の設定を確認します。
作った当時の設定のまま、投稿の内容だけが変わっているケースがよくあります。
すべてを非公開にする必要はありません。
公開のままにするアカウントと、範囲を絞るアカウントを自分で決めておく、という形で足ります。
勤務先が特定できる投稿を確認する
過去の投稿に、勤務先や担当している案件が特定できるものがないかを見ます。
写真の背景に社名や資料が写り込んでいる場合も含みます。
該当するものが見つかったら、削除するか公開範囲を変えます。
投稿の削除は時間がかかる作業なので、応募を始める前の時期にまとめて行うほうが効率的です。
確認する順番
作業は次の順で進めると、手戻りが出ません。
範囲を決めてから手を動かすのが要点です。
| 順序 | 作業 | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 1 | 氏名・旧姓で検索する | 氏名と勤務先が同時に分かる状態になっていないか |
| 2 | アカウントを一覧にする | 実名で使っているもの、匿名のもの、放置しているもの |
| 3 | 公開範囲を決める | 公開したままにするアカウントを先に決める |
| 4 | 勤務先が特定できる投稿を探す | 社名・案件名・画像の写り込み |
| 5 | 紐づけを確認する | 別のアカウントからたどれる状態になっていないか |
すべての投稿をさかのぼって読み返すのは現実的ではありません。
社名や職種で検索して、該当するものだけを見る形にすると作業が終わります。
複数のサービスの紐づけを確認する
あるサービスのアカウントに、別のサービスのアカウントが連携されていることがあります。
片方を実名で使っていると、匿名で使っているつもりのアカウントもたどれる場合があります。
プロフィールに書いた同じ文章、同じ画像、同じユーザー名が手がかりになります。
ここを整理しておくと、公開範囲の設定が意図どおりに効きます。
活動中の投稿の線引き
選考の過程を実況しない
応募先の社名や、面接の内容を投稿すると、その企業に関する情報を外に出したことになります。
選考の途中であっても同じです。
内容が肯定的か否定的かは関係ありません。
選考の場で聞いた話を外に出す人だと受け取られるという点が問題になります。
面接後の連絡の取り方は面接後のお礼メールは送るべき?にまとめています。
現職への不満を書く前に
活動中は、現職に対する不満が投稿の材料になりやすい時期です。
同時に、その投稿が最も見られやすい時期でもあります。
不満そのものを持つことは問題ではありません。
ただ、その扱い方は、面接で退職理由を聞かれたときの答え方と地続きになります。
整理の仕方は転職面接の準備にまとめています。
消しすぎる必要はない
一方で、アカウントをすべて削除する必要はありません。
職種によっては、発信の実績そのものが経験の説明になります。
制作物や技術的な記事を公開しているなら、それは書類に書ける材料です。
スカウト型のサービスを使う場合、プロフィールに載せる情報としても機能します。
書き方はスカウト型サービスのプロフィールの書き方にまとめています。
判断の基準は公開しているかどうかではなく、公開している内容が説明できるものかです。
まとめ
- 中途採用担当者の4割強が、SNSや口コミサイトの投稿を日ごろから確認している(マイナビキャリアリサーチLab)
- 自社に関する投稿を見かけた経験がある担当者は65.9%。
探さなくても目に入る状態にある - 一方、全応募者のアカウントを調べる運用が標準になっているわけではない
- 見られて問題になるのは、業務や勤務先が特定できる投稿
- 判断の材料になるのは本文だけではない。
プロフィール・固定投稿・画像の写り込みも表示される - 採用選考では把握すべきでないとされる事項もある(厚生労働省)
- 2024年に転職した正社員の**51.3%**が退職後に前職について投稿している。
20代は61.4% - 活動を始める前に、氏名での検索・公開範囲・勤務先が特定できる投稿・アカウントの紐づけを確認する
- 選考の過程を投稿しない。
内容が肯定的でも同じ - すべて消す必要はない。
発信の実績が経験の説明になる職種もある



