「ポートフォリオがないと、クリエイター職には応募できないのか」という問いは、この分野で転職を考え始めた人からよく出てきます。
作品を用意しないと選考の土俵に立てないという話を目にする一方で、いまの職場で作ったものは外に出せない、そもそも制作の実務経験がない、という事情も現実にあります。
ここでは、ポートフォリオが求められる理由を採用側の事情から整理したうえで、手元に出せるものがない状態から何を始められるかをまとめます。
クリエイター職でポートフォリオが求められる理由
採用ニーズが即戦力に集中している
ゲーム業界の採用ニーズは、キャラクターモデリング・背景モデリング・リギング・アニメーションといった専門スキルを持つ3Dデザイナーに集中しており、経験・実績・ポートフォリオが重視されるとされています(出典: シリコンスタジオエージェント)。
グローバルで見ても、採用は経験5〜15年の中堅プロフェッショナルに集中する傾向があります(出典: GAMES.GG)。
産業の母数が大きいわけでもありません。
ゲーム産業の総就業人口は約20万人、平均年齢37歳・平均勤続7年とされています(出典: 日本経済新聞)。
限られた枠に、すでに現場で成果を出している人が動いている市場だと考えると、作品の提示を求められる理由は理解しやすくなります。
経歴書だけでは技術の水準が伝わらない
職務経歴書には、所属した会社名・関わったタイトル・使用ツールを書けます。
ただし、そこから読み取れるのは「何をしていたか」までで、「どの水準でできるか」までは分かりません。
同じ「3Dモデリング担当」という記載でも、担当した部位や求められた品質は案件ごとに違います。
ポートフォリオは、この差を埋めるために使われます。
作品集は装飾ではなく、書類だけでは判断できない部分を補うための資料という位置づけです。
目的がここにあると分かっていると、何を載せるべきかも決めやすくなります。
「ポートフォリオがない」には2種類ある
実務経験はあるが、出せる成果物がない
ゲームやアプリの開発では、未発表タイトルに関わることが珍しくありません。
公開前の案件は守秘義務の対象で、そのままポートフォリオに掲載できない場合があります。
実務経験は積んでいるのに、手元に出せるファイルが1つもないという状態は、この職種では普通に起こります。
この場合に不足しているのは経験ではなく、見せられる形に整理する作業のほうです。
ゼロから作品を作り直す前に、いま出せる範囲がどこまでかを切り分けたほうが早く進みます。
実務経験そのものがない
一方、別の職種から移ろうとしていて、制作の実務経験自体がない場合があります。
この状態では整理する対象が手元にないため、作るところから始める必要があります。
2つは「ポートフォリオがない」という同じ言葉で語られますが、次にやることは別物です。
自分がどちらに当てはまるかを先に判別しておかないと、必要のない作業に時間を使うことになります。
実務経験がある場合は、出せる形に整理する
公開できる範囲を切り分ける
まず、契約や社内規程で何が制限されているかを確認します。
制限の範囲は会社ごとに違うため、一般論ではなく自分が結んでいる契約に当たる必要があります。
判断に迷う内容であれば、勤務先の担当部署に確認するのが確実です。
そのうえで、公開できない成果物と、公開できる範囲の情報を分けます。
作品そのものを出せなくても、担当した工程・使用したツール・チームの規模・関わった期間といった情報であれば説明できることがあります。
出せない部分は言葉と自作物で補う
公開できない案件については、口頭やクローズドな形で説明する場面が出てきます。
そのときに備えて、担当範囲と自分が下した判断の理由を言葉で整理しておくと、作品を提示できなくても話が具体的になります。
あわせて、公開を前提に自分で作ったものを1点用意しておくと、提示できる材料が増えます。
求人票の必須要件に合わせて題材を選べば、業務で見せられない部分を代替しやすくなります。
書類側の整理は職務経歴書はいつ作ればよいかにまとめています。
未経験から始める場合の入口
転職サービスとは別のルートがある
未経験からWebデザインやCG制作を目指す場合は、スクールを経由するルートが一般的とされています。
この入口は転職サービスとは別のもので、いま自分がどちらの段階にいるかによって、登録するべき先が変わります。
当サイトが扱っているゲーム・クリエイティブ向けサービスは、いずれも正社員の求人を対象としています。
応募条件はサービスごとに違い、業界での実務経験を前提にしているものも含まれるため、登録前に各サービスの公式サイトで対象条件を確認してください。
先に求人票の必須要件を数える
作品を作り始める前にやることがあります。
求人票の必須要件を10件ほど並べて見比べることです。
同じ職種名でも、求められるツールや工程の比重は求人ごとに違います。
要件を数えてから題材を決めると、作ったものが応募先の求めるものとずれにくくなります。
この段階では応募する必要はありません。
決めていない段階での進め方は転職するか迷っている段階では何をする?で扱っています。
サービスの使い方は段階によって変わる
登録型で要件を確認する
当サイトが扱うゲーム・クリエイティブ向けサービスは16件で、内訳は登録型が4件、面談実施型が9件、申込型が1件、成果条件が確認できていないものが2件です。
登録型は会員登録の時点から求人を見られるため、ポートフォリオが整っていない段階でも、要件の確認だけを目的に使えます。
この段階で無理に面談へ進むと、求められる水準とのギャップを確認するだけで終わることがあります。
先に要件を把握し、自分の作品との差を具体的にしておくほうが順番として無駄がありません。
差が具体的になってから面談型へ
不足している部分が分かり、経験を評価してもらいたい段階になったら面談型に進みます。
何を補えばよいかが決まっているぶん、面談で交わす話が具体的になります。
登録型の使い方はゲーム業界は面談なしで求人を見られる?に、業界全体の採用傾向はゲーム業界への転職はどう進める?にまとめています。
まとめ
- 採用ニーズは経験・実績・ポートフォリオを持つ即戦力に集中している
- 「ポートフォリオがない」には、出せる成果物がない場合と実務経験自体がない場合の2種類がある
- 前者は作り直しより、公開できる範囲を切り分けて整理するほうが早い
- 未経験からはスクール経由のルートがあり、転職サービスとは別の入口になる
- 作り始める前に求人票の必須要件を数え、題材を要件に合わせる



