ゲームやWebのクリエイター向け転職サービスを調べていると、業界特化をうたうサービスが次々に出てきます。
初めて見る社名も多く、どこを基準に比べればいいか迷う場面があります。
判断材料の一つとして「知っている会社が運営しているか」を見る人は少なくありません。
ここでは、大手企業が運営するゲーム・クリエイティブ向けサービスの実際と、規模だけで選ぶことの限界を整理します。
大手を選ぶことの意味
預けるのは個人情報だけではない
転職サービスに登録すると、氏名・連絡先・経歴・希望条件を運営会社に渡すことになります。
クリエイター職の場合、ここにポートフォリオという成果物そのものが加わります。
3DCGのモデルデータ、UIデザインのカンプ、演出の動画、サンプルコード。
いずれも自分の作業時間が形になったものであり、扱いの分からない相手に渡したいものではありません。
さらに、ゲームやアプリの開発では未発表タイトルに関わることが珍しくありません。
公開前の案件は守秘義務の対象で、そのままポートフォリオに掲載できない場合があります。
担当者に対しては口頭やクローズドな形で説明する場面が出てくるため、情報の取り扱い体制は、この職種では特に重い判断材料になります。
聞いたことのない会社より、社名を知っている会社の方が不安が小さくなるのは、この意味では合理的な感覚です。
ただし「知っている」だけでは体制を確認したことにはなりません。
確認の手順は後述します。
業界の母数が大きくないという事情
ゲーム産業の総就業人口は約20万人とされています(出典: 日本経済新聞)。
開発は受託と自社開発が入り組み、同じ人が複数のスタジオを経験することも多い分野です。
母数が大きくないぶん、転職を検討していること自体が周囲に伝わることへの懸念を持つ人がいます。
この懸念を完全に消す方法はありませんが、運営会社の情報管理体制を登録前に確認しておくことは現実的な備えになります。
少なくとも、社名も体制も分からないまま経歴と作品を送ってしまう状態は避けられます。
運営基盤の継続性
転職活動は数週間から数ヶ月続きます。
ポートフォリオを作り直しながら進める場合はさらに長くなります。
その間、サービスが安定して使えるかどうかは、選ぶ側にとって無視できない要素です。
複数の事業を持つ企業が運営していれば、特定分野の採用が一時的に冷え込んでも、サービス自体が急になくなる可能性は相対的に低いと考えられます。
小規模な運営会社が悪いという意味ではありません。
ただ、活動を一度中断して数ヶ月後に再開するようなケースでは、同じ登録情報のまま再開できることが実務上の利点になります。
運営会社を確認する具体的な方法
各サービスのサイトには、フッターや「運営会社」「会社概要」のページに運営会社名が記載されています。
会社名で検索し、事業内容・設立年・他に運営しているサービスを見ておくだけでも、判断材料は増えます。
あわせて確認できるものが2つあります。
1つはプライバシーマークやISMS認証といった第三者機関の認証で、個人情報の取り扱い体制を見る手がかりになります。
もう1つは有料職業紹介事業の許可番号です。
人材紹介を行うには厚生労働大臣の許可が必要で、許可を受けた事業者には都道府県番号と「ユ」の記号を組み合わせた許可番号が付きます。
サイトに記載されているかを見ておくと、事業者としての実体を確認できます。
この確認は登録前の数分で終わります。
それでも、社名を聞いたことがあるかどうかだけで判断するより、はるかに具体的な材料が手に入ります。
大手が運営する主なサービス
ゲーム・クリエイティブ向けサービスの中には、他分野でも人材事業を展開している企業が運営しているものがあります。
以下の3つは運営会社が特定でき、いずれも正社員の求人を扱うサービスです。
運営会社の他事業を知っておくと、そのサービスがどんな組織のもとで動いているかが見えてきます。
マイナビクリエイター(株式会社マイナビ)
株式会社マイナビが運営する、Web・ゲーム業界のクリエイター向けサービスです。
同社は新卒・中途の双方で人材サービスを手がけており、職種を絞ったサービスを複数運営しています。
進み方は面談型です。
登録したうえで担当者との面談に進む設計になっており、求人を眺めるだけで完結するサービスとは使い方が異なります。
対応地域は全国、対象は正社員の求人です。
クリエイター専任の担当が付く形をとっているため、ポートフォリオの構成や見せ方を相談したい段階の人とは相性がよいと考えられます。
逆に、まだ誰とも話さず求人だけ見たい段階では、面談が前提であること自体が負担に感じられる場合があります。
レバテッククリエイター(レバレジーズ株式会社)
レバレジーズ株式会社が運営する、Webクリエイター向けのサービスです。
同社はITエンジニア向けの「レバテック」、看護師向けの「レバウェル」など、職種を絞ったサービスを複数展開しています。
人材領域で複数の職種特化サービスを長く運用している運営会社です。
進み方は登録型です。
会員登録の時点からサービスを使い始められるため、面談の予定を立てる前に求人の傾向を確認したい場合に向いています。
対応地域は全国、対象は正社員の求人です。
ただし、Webクリエイターに特化したサービスです。
ゲーム開発の3DCGやサウンドを軸に探している場合は、ここだけで候補が出そろわない可能性があります。
Geekly(株式会社GEEKLY)
IT・Web・ゲーム業界に専門特化した人材紹介サービスです。
運営会社は株式会社GEEKLYで、資料によっては「株式会社ギークリー」と表記されている場合もあります。
同じ会社を指すものと考えられますが、表記が揺れているため、登録前に公式サイトの会社概要を見て確かめておくとよいでしょう。
進み方は面談型で、対象は正社員の求人です。
対応地域は東京・神奈川・埼玉・千葉に絞られており、3つの中で唯一、範囲が首都圏に限定されています。
首都圏で働く前提が固まっているなら、対象を絞っているぶん業界内の求人に集中して当たれます。
一方、地方での勤務を考えている場合や、勤務地をまだ決めていない場合は、この時点で候補から外れます。
3サービスの違いを1つの表で見る
| サービス | 運営会社 | 進み方 | 対応地域 | 扱う領域 |
|---|---|---|---|---|
| マイナビクリエイター | 株式会社マイナビ | 面談型 | 全国 | Web・ゲーム業界のクリエイター |
| レバテッククリエイター | レバレジーズ株式会社 | 登録型 | 全国 | Webクリエイター |
| Geekly | 株式会社GEEKLY | 面談型 | 東京・神奈川・埼玉・千葉 | IT・Web・ゲーム業界 |
いずれも対象は正社員の求人です。
3つのうち2つが面談型で、登録だけで使い始められるのは1つだけです。
大手だから気軽に試せるとは限らないことが、この表から読み取れます。
この分野は大手の選択肢がそもそも少ない
当サイトのデータでは4件
当サイトが扱っているゲーム・クリエイティブ向けサービスのうち、大手企業が運営するものとして分類しているのは4件です。
上に挙げた3つに加えて、IT・Web・ゲーム業界を専門とする人材紹介会社が提供する申込型のサービスが1件あります。
こちらの対応地域は一都三県と関西の2府4県です。
つまり、この分野では大手が運営するサービスが何社も横並びになる状況にはなっていません。
他の職種と比べたときに、選べる幅が狭いという前提から出発する必要があります。
選択肢が少ないと何が起きるか
第一に、大手だけを比べても比較にならない場面が出てきます。
全国対応かつ登録型のものは1つしかないため、「地方在住で、まず求人だけ見たい」という条件を立てた時点で、大手の中では候補がほぼ決まってしまいます。
比較したつもりが、実質的に選択肢が1つしかない状態になります。
第二に、業界特化の中小規模サービスを最初から候補に入れる必要が出てきます。
ゲーム・クリエイティブ分野には、知名度は高くなくても業界に長く関わっているサービスがあります。
大手だけで候補リストを作ると、自分で選択肢を狭めることになります。
「聞いたことがない」は判断材料にならない
社名を知っているかどうかと、そのサービスが自分の職域の求人をどれだけ持っているかは、別の話です。
細分化された職域ほど、規模の大きい会社より、その領域を長く扱っているサービスの方が具体的な求人を持っていることがあります。
大手以外を検討する場合でも、運営会社を確認する手順は変わりません。
会社概要のページで事業内容と許可番号、プライバシーマークの有無を見る。
この確認を済ませたうえで、大手か否かにかかわらず判断します。
手順が同じである以上、大手だけを特別扱いする理由もありません。
大手だから良いとは限らない点
対応地域は運営会社の規模と一致しない
Geeklyの例が示す通り、運営会社の規模と対応地域の広さは連動しません。
首都圏に限定されたサービスは、その範囲では業界の求人に集中して当たれる一方、範囲外では使えません。
規模と対応力は別の軸として見る必要があります。
また「全国対応」と表示されていても、紹介できる求人が全国に均等にあるとは限りません。
ゲーム開発やWeb制作の会社は都市部に集中する傾向があり、地方での求人数は、表示上の対応地域から受ける印象と差が出ることがあります。
対応地域の見方は転職サービスは地方でも使える?にまとめています。
面談を前提とするサービスが多い
大手が運営する3つのうち2つは面談型です。
面談型は経験を評価してもらいながら進められる反面、話す準備が整っていない段階では進めにくい形式でもあります。
ゲーム・クリエイティブ分野は経験と実績が重視されるため、ポートフォリオが発展途上のまま面談に進むと、求められる水準とのギャップだけが確認されて終わることがあります。
先に求人票のスキル要件を見比べ、自分の作品との差を把握してから面談に進む方が、話が具体的になります。
登録型を使った進め方はゲーム業界は面談なしで求人を見られる?にまとめています。
得意な職域は会社の規模では決まらない
クリエイターと一括りにされる職種は幅が広く、3DCGモデリング、アニメーション、エフェクト、サウンド、シナリオ、UIデザイン、Webデザイン、ディレクションと分かれています。
先ほどの表の「扱う領域」を見ると、3つとも守備範囲が違うことが分かります。
大手だから何でも扱っている、とは限りません。
見るべきなのは、自分の職域がそのサービスの中心にあるかどうかです。
Webデザイン中心のサービスにゲームのサウンド職で登録しても、提示される求人の数は期待通りにならない可能性があります。
未経験からの転職は別の入口になる
大手が運営するサービスは、いずれも経験者向けの求人が中心です。
未経験からWebデザインやCG制作を目指す場合は、転職サービスとは別のルートを検討することになります。
いま自分がどちらの段階にいるかを先に整理しておくと、登録先の選択で迷いにくくなります。
業界の採用傾向はゲーム業界への転職はどう進める?にまとめています。
規模より合っているかで選ぶ
先に3つの条件を決める
社名から入るのではなく、条件を先に決めます。
ゲーム・クリエイティブ分野の場合、決めておくべきなのは次の3つです。
| 決めること | 見る点 |
|---|---|
| 勤務地 | 首都圏に限定してよいか、それ以外の地域も含めるか |
| 面談の要否 | いま担当者と話したいか、まず求人だけ見たいか |
| 職域 | ゲーム開発寄りか、Web制作寄りか |
この3つは、前掲の表の「対応地域」「進み方」「扱う領域」にそのまま対応します。
決めてから表に当てはめると、候補は自然に絞られます。
逆に社名から入ると、知っている会社だからという理由で、対応地域の合わないサービスに登録してしまうことが起こります。
雇用形態はこの分野では選ぶ軸になりません。
当サイトが扱っているゲーム・クリエイティブ向けサービス16件は、入口の形を問わずいずれも正社員の求人が対象だからです。
フリーランスとして案件を受ける働き方や、業務委託を中心に探す進め方は、この経路の外にあります。
働き方そのものを比べたい場合は、収入の受け取り方・仕事の獲得経路・事務作業の3点で違いが出ます。
この構造は職種を問わず共通するため、フリーランスと正社員、エンジニアはどちらを選ぶ?が参考になります(ITエンジニア向けにまとめたものです)。
ただし、正社員の求人であっても契約期間の欄は別に読みます。
株式会社コンフィデンスが2022年9月に実施した社員アンケート(回答者321人)では、ゲーム業界は有期雇用契約が多く、正社員雇用の安定性を理由に転職する動きも一定数見られると整理されています(出典: 株式会社コンフィデンス)。
求人票では雇用形態の欄と契約期間の欄を分けて見る習慣をつけておくと、条件を並べたときに取り違えません。
契約の形ごとの違いはゲーム業界に多い有期雇用契約とは?にまとめています。
登録型から始めて面談型につなぐ
条件のうち「面談の要否」で迷う場合は、登録型から始める方法があります。
会員登録の時点で求人を見られるサービスで必須スキルを10件ほど見比べ、自分のポートフォリオに足りない部分を把握します。
この段階では応募する必要はありません。
足りない部分が具体的になり、経験を評価してもらいたい段階になってから面談型に進みます。
順番を逆にしても進められますが、先に求人票を見ておいた方が、面談で交わす話の解像度が上がります。
複数を並行して使い、合わなければ止める
1社だけに登録すると、そのサービスが持っている求人が業界全体の相場だと錯覚しやすくなります。
同じ条件で複数のサービスを見比べると、提示される求人の傾向や量の違いが見えてきます。
特に選択肢が限られる分野では、大手と業界特化型を1つずつ併用する形が現実的です。
登録後に対応や求人の傾向が合わないと感じた場合、無理に使い続ける必要はありません。
この分野のサービスも登録・利用は無料であることが一般的で、退会や利用停止の手続きは問い合わせフォームや電話で完結します。
乗り換えのハードル自体は高くありません。
迷ったときに戻る基準
判断に迷ったら、運営会社の知名度ではなく、自分が決めた3つの条件に戻ります。
勤務地が合わないサービスは、どれだけ有名でも候補になりません。
逆に、条件が合っていれば、社名を知らないという理由だけで外す必要もありません。
規模は判断材料の一つであって、判断そのものではないという位置づけで扱います。
まとめ
- ゲーム・クリエイティブ分野にも、マイナビ・レバレジーズなど他分野でも事業を展開する企業が運営するサービスがある
- クリエイター職では個人情報に加えてポートフォリオという成果物を預けるため、情報の扱いは重い判断材料になる
- ただし当サイトのデータでは大手が運営するものは4件で、選択肢がそもそも少ない
- 3サービスのうち2つが面談型で、全国対応かつ登録型は1つ。
大手であることと使いやすさは別 - 対応地域・扱う職域は運営会社の規模と一致しないため、規模だけで選ばない
- 勤務地・面談の要否・職域の3条件を先に決め、条件に合うものを選ぶ
- この分野で当サイトが扱う16件はいずれも正社員の求人が対象で、フリーランスの案件探しとは経路が違う



