ITエンジニアとして数年働くと、フリーランスという選択肢が視野に入ってくることがあります。
周囲で独立した人がいた、報酬の水準を聞いた、いまの働き方に区切りをつけたい、といったきっかけはさまざまです。
ただ、正社員とフリーランスは収入の額だけが違うわけではありません。
ここでは、両者で実際に何が変わるのかを整理したうえで、判断する前に確認しておくことをまとめます。

フリーランスという選択肢が視野に入る背景

転職を決めた理由の1位は収入アップ

エンジニアが転職を決めた理由を尋ねた調査では、1位が「収入アップのため」で42.4%、2位が「会社や業界の将来性に不安を感じて」で22.4%、3位が「キャリアアップのため」で16.5%、4位が「技術スキルが伸ばせないと感じたから」で14.7%となっています(レバテック株式会社調査、社会人エンジニア300名、2022年9月実施 https://levtech.co.jp/research/374117/ )。

これは転職に関する調査であって独立に関する調査ではありませんが、収入が動機の最上位にあるという点は、フリーランスを検討する動機とも重なります。
ただし、転職とフリーランスは同じ「収入を上げたい」という動機から出発しても、その先の構造がまったく違います。
動機が同じであることと、手段として同じであることは別です。

需要は先端領域に偏っている

経済産業省の試算では、IT人材の需要が中位から高位で伸びた場合、2030年に最大約79万人が不足するとされています(出典: 日本経済新聞)。
ただし不足しているのはAI・クラウド・セキュリティといった先端領域で、基礎的な領域の人材はむしろ供給が増えています(出典: コエテコキャンパス)。

この偏りは、フリーランスとして案件を取り続けられるかどうかにも関わります。
自分の技術領域が需要の厚い側にあるのか、供給が増えている側にあるのかによって、独立後の案件獲得の難しさは変わると考えられます。
独立を検討する前に、自分の領域がどちら側かを求人票の要件から確認しておく価値があります。

正社員とフリーランスで変わるもの

収入の受け取り方と、その変動

正社員の給与は、働いた成果と受け取る金額の間に評価制度や賞与といった仕組みが挟まります。
金額は事前に決まっており、月ごとに大きく変動しません。
フリーランスの場合、契約した案件の報酬が直接収入になるため、稼働した分がそのまま反映される一方、案件が途切れれば収入も途切れます。

比較するときに「月あたりの金額」だけを並べると判断を誤りやすくなります。
正社員には賞与・退職金・各種手当が含まれる場合があり、フリーランスの報酬にはそれらが含まれません。
年単位の総額と、そこから差し引かれるものを揃えたうえで比べる必要があります。

仕事をどう獲得するか

正社員は所属先が仕事を用意します。
フリーランスは案件を自分で探すか、仲介するサービスや知人からの紹介を経由して獲得します。
この獲得活動そのものが、稼働時間の一部を占めるという点は、独立前に見落とされやすい部分です。

契約が単位になるため、契約期間の終わりごとに次を探す作業が発生します。
同じ現場が長く続く場合もあれば、数ヶ月単位で移る場合もあり、そのリズムは案件によって変わります。
正社員として一つの職場に長く在籍する働き方と比べると、環境が変わる頻度は高くなりやすいと考えられます。

事務作業と手続きが増える

フリーランスになると、契約書の確認、請求、経費の管理、確定申告といった事務作業が自分の仕事に加わります。
社会保険についても、会社員として加入していた制度から切り替える手続きが必要になります。

これらの手続きの内容は個人の状況によって変わるため、具体的な判断は税務署や社会保険労務士、税理士といった専門家に確認するのが確実です。
ここで押さえておきたいのは、技術以外の作業に一定の時間が取られるようになるという事実です。
この時間を稼働可能時間から差し引いたうえで収入を見積もらないと、独立後に想定と合わなくなります。

判断を分けるのは「何を安定と考えるか」

案件が途切れたときに何が起きるか

正社員とフリーランスの違いを一言でまとめるなら、収入が途切れたときの受け止め方の設計が違うということです。
正社員は雇用契約によって一定の保護がありますが、フリーランスは契約が終われば収入も終わります。
その空白期間をどれだけ支えられるかが、そのまま取れるリスクの上限になります。

そのため、判断の前に必要なのは金額の比較よりも、生活費の何ヶ月分を手元に確保できているかの確認です。
ここが薄い状態で独立すると、条件の良くない案件でも受けざるを得なくなり、結果として収入を上げるという当初の目的から遠ざかります。

技術の伸ばし方が変わる

正社員であれば、社内の研修や、自分の担当外の領域に関わる機会が用意されることがあります。
フリーランスの場合、契約した範囲の業務が中心になるため、新しい技術に触れる機会を自分で作る必要が出てきます。

前述の調査で「技術スキルが伸ばせないと感じたから」が転職理由の4位に入っていたことを踏まえると、この点は軽視できません。
需要が先端領域に偏っている以上、いま持っている技術で案件を取り続けられる期間には限りがあります。
学ぶ時間をどう確保するかは、独立するかどうかにかかわらず決めておく必要があります。

当サイトが扱っているのは正社員向けのサービス

掲載しているITエンジニア向けサービスの雇用形態

当サイトで整理しているITエンジニア向けサービスは、いずれも雇用形態が正社員として登録されています。
レバテックダイレクトとレバテックキャリアはどちらも登録型で全国が対象、メイテックネクストとエンワールド・ジャパンは面談実施型で全国が対象です。
ウズカレエージェントも面談実施型で全国が対象になっています。

フリーランス向けの案件紹介サービスについては、当サイトのデータでは掲載を確認できていません。
そのため、この記事では特定のフリーランス向けサービスの比較は行っていません。
独立を前提に案件紹介サービスを探す場合は、別途ご自身で運営会社と契約条件を確認してください。

正社員のまま市場価値を測るという使い方

独立するかどうかを決めていない段階であれば、正社員向けの登録型サービスで求人を見ること自体が判断材料になります。
同じ技術領域・同じ経験年数の求人がどの年収レンジで出ているかが分かれば、フリーランスの報酬水準と比較する基準ができます。

比較の基準がないまま「フリーランスのほうが高い」と判断すると、賞与や社会保険料の会社負担分を差し引いていない数字で比べてしまいがちです。
まず正社員側の相場を確定させてから比べるほうが順番として確実です。
面談を伴わずに求人を見る方法はITエンジニアは面談なしで転職活動できる?にまとめています。

決める前にやること

直近12ヶ月の収入と支出を書き出す

月単位ではなく年単位で、実際に入ってきた金額と出ていった金額を並べます。
賞与や各種手当を含めた総額を出すと、フリーランスとして必要な年間報酬の目安が具体的な数字になります。
この作業をせずに月額の単価だけで比べると、判断がずれます。

両方の入口を同時に見ておく

独立を検討している場合でも、正社員としての転職という選択肢を閉じる必要はありません。
転職で条件が改善するなら、独立のリスクを取らずに目的を達成できる可能性があります。
年収が上下する条件については転職で年収は上がる?で整理しています。

年代によって選べるサービスや問われる内容も変わるため、あわせて30代・40代のITエンジニア転職も参考にしてください。

まとめ

  • 転職を決めた理由の1位は収入アップで42.4%。
    フリーランスを検討する動機とも重なる
  • 正社員とフリーランスでは、収入の受け取り方・仕事の獲得経路・事務作業の3点が変わる
  • 判断を分けるのは金額の比較ではなく、収入が途切れた期間をどれだけ支えられるかである
  • 需要は先端領域に偏っているため、自分の技術領域がどちら側かを求人票で確認しておく
  • 当サイトが扱うITエンジニア向けサービスはいずれも正社員が対象で、比較の基準として使える