勤務地が遠い会社に転職すると、選考と並行して住む場所を決めることになります。
内定が出た時点から入社日までの間に、物件を探し、契約し、荷物を運び、住所に関する手続きを済ませる。
現職の引き継ぎもこの期間に重なります。
ここでは、この日程をどう組むかを扱います。
退職に伴う健康保険と年金の手続きは退職から入社までの社会保険と年金にまとめており、この記事は住まいと住所に関する手続きを対象にします。
先に引っ越すか、入社してから引っ越すか
3つのパターンがある
転居のタイミングは、大きく3つに分かれます。
| パターン | 向く場面 | 主な負担 |
|---|---|---|
| 入社前に引っ越す | 入社日まで期間があり、引き継ぎが早く終わる | 家賃が二重になる期間が出る |
| 入社後しばらくして引っ越す | 配属先が確定していない、入社日が近い | 当面は長距離の通勤か仮住まいが要る |
| 単身で先に移り、家族は後から | 家族の学校や勤務の都合がある | 二重の生活費がかかる |
どれが正解ということはありません。
決め手になるのは、配属先が確定しているかと、引き継ぎにどれだけかかるかの2つです。
内定が確定するまで引っ越さない
順序として動かせないのは、内定の承諾と労働条件の書面での確認が済むまで、住居の契約をしないという点です。
住居の賃貸借契約は、選考の結果とは無関係に成立します。
条件が想定と違って辞退することになった場合でも、契約は残ります。
求人票と書面の記載が食い違うことは起こり得るため、確認を済ませてから契約に進みます。
書面で何を見るかは労働条件通知書の確認ポイントにまとめています。
配属先が確定していない場合
内定の時点で配属先や就業場所が決まっていない企業があります。
この場合、入社前に住居を決めると、配属によって通勤時間が大きく変わる可能性が残ります。
確定していないと分かったら、入社後に引っ越すパターンを検討します。
未確定であることも判断材料であり、確定する時期を確認しておくと日程を組めます。
入社日から逆算する
押さえる期間は5つ
逆算に使うのは、次の5つです。
これらは並行できるものと、順番が決まっているものが混ざります。
| 期間 | 目安 | 並行できるか |
|---|---|---|
| 物件を探して内見する | 2〜4週間 | 引き継ぎと並行できる |
| 契約と審査、初期費用の支払い | 1〜2週間 | 物件決定後に順番に進む |
| 引っ越し業者の手配と搬出入 | 手配から実施まで数週間 | 契約後 |
| 現職の引き継ぎ | 就業規則の申し出期間による | 転居の準備と並行できる |
| 有給休暇の消化 | 残日数による | 最終出社日の後 |
物件探しと契約は順番が決まっているため、短縮しにくい部分です。
ここを甘く見積もると、入社日に間に合いません。
繁忙期は業者が押さえられない
引っ越し業者は、3月から4月にかけて依頼が集中します。
この時期は、希望した日に手配できないことがあります。
そのため、逆算で出した「最短でできる日」ではなく、「業者を押さえられる日」で組みます。
日程が決まっていない状態でも、候補日を伝えて仮の予約を取れるか確認しておくと、後の調整が楽になります。
有給消化の期間を転居に充てるかどうか
最終出社日と退職日の間に有給休暇の消化期間があれば、そこを転居の作業に充てられます。
残日数が20日あれば、おおむね1か月の余裕が生まれます。
ただし、この期間を前提に日程を組むと、消化の日数が減ったときに崩れます。
消化の相談は早めに行い、確定してから逆算に組み込みます。
進め方は有給休暇は拒否される?にまとめています。
間に合わない場合は入社日を相談する
逆算の結果、入社日に間に合わないと分かった場合は、その時点で相談します。
転居が理由であれば、企業側も事情として理解しやすい部分です。
伝えるときは、希望日と、その日になる理由をセットにします。
入社日の決め方と伝え方は転職の入社日は交渉できる?にまとめています。
費用は自分で持つ前提で組む
補助は制度がある会社とない会社がある
転居に伴う費用を企業が負担する制度は、法令で義務づけられているものではありません。
制度を設けている企業と設けていない企業があり、内容も一様ではありません。
したがって、金額の相場を前提に資金計画を立てることはできません。
自分で全額を負担する前提で見積もり、補助があれば戻ってくるという扱いにしておくほうが安全です。
どこに書かれるか
補助の有無は、求人票の福利厚生の欄に記載されていることがあります。
ただし、名称だけが並んで対象や条件が書かれていないことも多くあります。
確定した条件は、内定後に交付される書面で確認します。
求人票は募集の条件であり、契約の内容は別に示されるためです。
福利厚生の欄の読み方は求人票のどこを読むかにまとめています。
確認するタイミング
補助について聞くのは、内定後の条件面の面談です。
選考の途中で待遇の細部を聞くと、話の順序が入れ替わります。
聞く内容は3つです。
制度があるか、対象となる費用の範囲はどこまでか、支給の時期はいつか。
支給が入社後の給与に上乗せされる形であれば、引っ越しの時点では自分で立て替えることになります。
時期を確認しないと、資金の計画が崩れます。
住宅手当は別の話
転居の一時費用と、毎月の住宅手当は別の制度です。
手当があっても一時費用の補助は無い、あるいはその逆ということが起こります。
住宅手当は毎月の金額に効くため、複数の内定を比べる際の項目にも入ります。
給与に表れない項目の並べ方は複数の内定が出たときの比較軸にまとめています。
行政手続きは期限のあるものから
期限があるものと後回しにできるもの
住所が変わると手続きが発生しますが、すべてが同じ緊急度ではありません。
期限が定められているものから順に片づけます。
| 手続き | 窓口 | 優先度 |
|---|---|---|
| 転出届 | 旧住所の市区町村 | 高(引っ越し前に行う) |
| 転入届 | 新住所の市区町村 | 高(転入した日から14日以内) |
| マイナンバーカードの住所変更 | 新住所の市区町村 | 高(転入届と同時に行える) |
| 国民健康保険・国民年金 | 市区町村 | 高(退職して空白がある場合) |
| 運転免許証の住所変更 | 警察署・運転免許センター | 中 |
| 郵便物の転送届 | 郵便局・オンライン | 中(早いほど取りこぼしが減る) |
| 金融機関・カードの住所変更 | 各社 | 低(後日でよい) |
| 各種サービスの登録住所 | 各社 | 低 |
転入の届出は、転入した日から14日以内に行うこととされています(住民基本台帳法)。
転出届と転入届は別の窓口であり、旧住所の手続きを済ませてから新住所の手続きに進みます。
手続きの詳細や必要な持ち物は自治体によって異なるため、市区町村の窓口で確認してください。
一度で済ませられるものをまとめる
市区町村の窓口で扱う手続きは、まとめて行えるものがあります。
転入届、マイナンバーカードの住所変更、国民健康保険の加入は同じ庁舎で扱われます。
退職して入社日までに空白がある場合は、健康保険と年金の手続きも同じ時期に発生します。
何をいつまでに行うかは退職から入社までの社会保険と年金にまとめています。
転居と退職が重なる場合、窓口へ行く回数をまとめられるかを先に確認すると、平日の時間を節約できます。
入社手続きの書類との関係
入社時には、住所を記載する書類の提出を求められます。
転入届が済んでいないと、住民票の記載が旧住所のままになります。
住民票の写しの提出を求められる場合があるため、いつまでに必要かを人事の担当者に確認しておきます。
求められる書類の一覧は、内定後の案内で示されるのが一般的です。
郵便物の転送は早めに出す
郵便物の転送届は、旧住所に届く書類を取りこぼさないための手続きです。
前の勤務先から送られる書類や、行政からの通知が旧住所に届くことがあります。
転職に伴う手続きでは、前の勤務先が交付する書類が必要になる場面があります。
転送が有効になるまでには日数がかかるため、引っ越しの前に出しておきます。
住まいを決める前に確認すること
就業場所であって会社の所在地ではない
通勤時間は、実際に働く場所で決まります。
求人票の勤務地の欄に本社の住所だけが書かれている場合、そこが就業場所とは限りません。
所在地の欄と就業場所の欄が別に設けられていれば、見るのは後者です。
候補地が複数挙がっている場合は、最も遠い場所から通える範囲で住まいを探すという判断もあります。
転勤・異動の範囲
労働条件を明示する際には、就業の場所について、雇入れ直後の内容だけでなく変更の範囲もあわせて示すこととされています。
近い将来に異動の可能性がある場合、住居の契約期間との兼ね合いが出ます。
面接で聞いた説明と書面の記載が違うことがあります。
住まいを契約する前に、書面で範囲を確認するという順序にしておくと、判断を戻せます。
在宅勤務の頻度で必要な条件が変わる
在宅勤務が週の大半を占めるなら、通勤時間より作業できる環境のほうが効きます。
逆に毎日出社するなら、通勤時間が生活時間を直接削ります。
在宅の頻度は求人票に書かれないことが多く、質問の対象になります。
制度としてあることと、配属予定の部署で実際に使われていることは別です。
地方へ移る場合
勤務地を地方に変える転職では、扱っている求人がサービスによって偏ることがあります。
対応地域の記載と、実際に紹介できる範囲は別のものです。
地域を条件にして探す場合の注意点は転職サービスは地方でも使える?にまとめています。
まとめ
- 内定の承諾と書面の確認が済むまで住居の契約をしない。
契約は選考の結果と無関係に成立する - 配属先が確定していない場合は、入社後に引っ越すパターンを検討する
- 逆算に要るのは物件探し・契約・搬出入・引き継ぎ・有給消化の5つ。
物件探しと契約は短縮しにくい - 3〜4月は業者を押さえられないことがある。
最短日ではなく手配できる日で組む - 転居費用の補助は法令上の義務ではない。
全額を自分で負担する前提で見積もる - 補助は、制度の有無・対象の範囲・支給の時期の3つを内定後に確認する
- 行政手続きは期限のあるものから。
転入届は転入した日から14日以内 - 住まいを決める前に、就業場所の欄と転勤の範囲を書面で確認する



