複数の会社を同時に受けることは、転職活動では珍しい進め方ではありません。
ただ、実際に3社4社と選考が並行し始めると、面接の日程が重なり、どの会社に何を話したか分からなくなり、書類の内容がどれも同じになっていきます。
ここでは、応募社数の目安をまず数字で確認し、そのうえで同時に走らせるための具体的な管理の方法を整理します。
何社に登録するかという話ではなく、応募した先をどう並行させるかが主題です。
登録するサービスの数については転職エージェントは何社まで併用してよいかで扱っています。
平均応募社数には2つの数字がある
27.0社という数字
dodaの調査では、転職に成功した人の平均応募社数は27.0社とされています(出典: doda)。
1桁を想定していた人にとっては、かなり大きな数字に見えるはずです。
この27.0社には、エージェントの担当者を通じて応募したもの、非公開求人へ出したもの、担当者からの提案を受けて応募したものが含まれています。
つまり、自分で探して自分で出した件数だけではありません。
8.8社という数字
一方、マイナビの「転職動向調査2024年版」では、転職者は活動期間中に平均28.4件の求人を閲覧し、平均8.8件に応募したとされています(出典: マイナビ「転職動向調査2024年版」)。
こちらは自主応募が中心のデータです。
同じ「平均応募社数」という言葉なのに、27.0社と8.8社では3倍以上の開きがあります。
片方だけを見て「27社も出さないといけないのか」と身構えたり、「8社で足りるのか」と安心したりすると、判断を誤ります。
差は集計の対象から生まれている
この2つは矛盾していません。
集計している範囲が違います。
エージェント経由の応募を含めた数字と、自分で求人を探して出した数字を並べているだけです。
担当者が付いている場合、1回のやり取りで複数の求人に応募することがあります。
提案された求人にまとめて意思表示をすれば、件数はすぐに増えます。
自分で1件ずつ求人票を読んで応募する場合、同じペースにはなりません。
件数が多いことは、それだけ手間をかけたという意味ではありません。
自分の目安は経路から決める
したがって、目安の数字は「何社出すか」ではなく「どの経路で進めるか」から逆算することになります。
| 進め方 | 参考になる数字 | 前提 |
|---|---|---|
| 担当者からの紹介を中心に進める | 27.0社(doda) | 提案された求人への応募を含む |
| 自分で求人を探して応募する | 8.8社(マイナビ) | 自主応募が中心 |
| 両方を併用する | 上記の中間 | 経路ごとに分けて数える |
両方を使う場合、経路ごとに分けて数えないと自分の進み具合が把握できません。
紹介経由で20件、自主応募で5件という状態と、自主応募だけで25件という状態は、同じ25件でもかけた時間がまったく違います。
同時進行は「一斉に出す」ことではない
一斉応募は日程が重なる
複数社を同時に進めると決めたとき、最初に思いつくのは候補をまとめて出すことです。
ただ、書類選考の期間は各社でおおむね似た長さになるため、同じ日にまとめて出すと面接の依頼も同じ週にまとまって届きます。
在職中であれば、平日の日中に3件の面接を入れることはできません。
日程調整で断りが増えると、選考の進みが遅くなるだけでなく、日程を優先して志望度の低い会社を先に受けることにもなります。
応募日を週単位でずらす
現実的なのは、応募する日を週ごとに分ける進め方です。
1週目に第2志望群を2〜3社、2週目に第1志望群を2〜3社、という形にすると、面接の依頼も週をずらして届きます。
志望度の高い会社を先に出したくなりますが、順番は逆のほうが噛み合います。
先に受けた面接で聞かれた質問や、自分が答えに詰まった箇所が、後の面接の準備になるためです。
準備の組み立て方は転職面接の準備にまとめています。
内定の期限から逆算する
日程をずらすときに見るのは、最初に内定が出る時期です。
内定には回答の期限があり、その時点で他社が書類選考の途中だと、比較ができないまま返事をすることになります。
そのため、ずらす幅は無制限には取れません。
1社目の応募から最後の1社の応募まで、2〜3週間程度に収めておくと、結果が出る時期が近づきます。
それでも完全にはそろわないため、期限が来たときの相談の仕方は複数の内定が出たときの比較軸にまとめています。
出す数より、出せる状態を先に作る
応募の数を増やすと、志望動機を書く回数が増えます。
ここで内容が使い回しになると、書類選考の通過率が下がり、結局は数を出した意味が薄れます。
先に用意しておくのは、経歴の記述と、応募先ごとに差し替える段落の切り分けです。
担当した業務・扱った規模・在籍期間といった事実の部分は共通で使えます。
書き出す順序は職務経歴書はいつ作ればよいかにまとめています。
進捗を1枚で管理する
記録する列は5つで足りる
複数社が並行すると、記憶では追えなくなります。
表計算でも紙でも構いませんが、1件を1行にして次の5つを埋めます。
| 列 | 書く内容 |
|---|---|
| 会社名・求人名 | 同じ会社で複数の求人に出す場合があるため求人名まで |
| 経路 | 自主応募か、どのサービス経由か |
| 段階 | 書類提出済/書類通過/一次/二次/最終/結果待ち |
| 直近の日付 | 最後に動きがあった日 |
| 次の予定 | 面接日、回答期限、こちらから連絡する日 |
項目を増やすと更新しなくなります。
感想や志望度は別の欄に分け、この5列は事実だけで埋めます。
経路の列が最も重要
5つのうち、忘れられやすく、抜けると実害が出るのが経路です。
複数のサービスを併用していると、同じ企業の求人が別の経路から紹介されることがあります。
経路を記録していないと、同じ企業へ二重に応募していることに気づけません。
企業側では重複として扱われることがあり、どちらの経路で進めるかを後から整理する手間が発生します。
求人名が伏せられていても、勤務地・事業内容・募集職種が一致していれば同じ求人である可能性があります。
気づいた時点で担当者に確認できます。
更新する曜日を決める
表を作っても、更新しなければ意味がありません。
動きがあるたびに更新するのは在職中には難しいため、週に1日、確認する曜日を決めます。
その日にやることは3つです。
段階の列を最新にする、次の予定が入っていない行に印を付ける、印の付いた行に対して自分から連絡するかどうかを決める。
放置されている行を見つけるための作業であって、記録を美しくするための作業ではありません。
書類の控えも一緒に残す
応募した求人票は、掲載が終わると見られなくなります。
内定後に交付される書面と照らし合わせるためには、応募時点の記載が手元に必要です。
行ごとに、送った職務経歴書のファイル名と求人票の控えの保存先を書いておくと、面接前に見返せます。
何を見るかは求人票のどこを読むかにまとめています。
面接で他社の選考状況を聞かれたとき
聞かれるのは前提の確認
「他社も受けていますか」という質問は、多くの面接で出てきます。
これは詮索ではなく、採用側が入社時期と競合の有無を把握するための確認です。
複数社を受けていること自体は、一般的な進め方として扱われます。
隠す必要はありません。
むしろ、進捗が分かれば企業側も日程を調整しやすくなります。
社名を出すかどうか
社名を必ず答える義務はありません。
ただ、業界や職種の傾向まで伏せると、応募先を選んだ基準が説明できなくなります。
現実的なのは、業界・職種の方向性を答え、社名は「差し支えのある企業もあるため控えます」と伝える形です。
自分の軸と一貫していれば、社名を伏せても不自然にはなりません。
軸の作り方は転職の軸はどう決める?にまとめています。
「御社だけです」と答えたときに起きること
1社しか受けていないと答えると、正直に見える一方で、活動が進んでいない印象を与えることがあります。
また、内定を出したときに他社と比較されない前提で条件が組まれることもあります。
事実として1社だけであればそう答えるほかありませんが、意図的にそう答える必要はありません。
事実と違うことを答えると、日程の調整が必要になったときに説明が付かなくなります。
内定が出ている場合の伝え方
他社の内定を持っていることは、伝えて問題のない事実です。
伝えるときは、内定の有無だけでなく、回答の期限をあわせて示します。
期限が具体的であれば、企業側も選考を早めるかどうかを判断できます。
その際、条件を引き上げる材料として使う言い方は避けます。
日程の相談として伝えるのと、条件の交渉として持ち出すのでは、受け取られ方が変わります。
条件面の話をどの段階で出すかは転職の年収交渉はできる?にまとめています。
同時進行が崩れる場面
志望度の順番が入れ替わったとき
面接を重ねると、当初の第3志望が第1志望になることがあります。
これは情報が増えた結果であり、問題ではありません。
問題になるのは、順番が変わったことを表に反映しないまま進めることです。
日程の優先順位が古いままだと、志望度の高い会社の準備に時間を割けません。
順番が変わった時点で、次の予定の列を組み直します。
見送りが続いたとき
書類選考で見送りが続くと、応募先を増やしたくなります。
ただ、同じ書類で数だけ増やしても結果は変わりません。
先に見るのは、応募した求人の必須要件と自分の経歴が合っているかです。
必須要件を満たしていない求人に出し続けていた場合、通過しないのは書類の書き方の問題ではありません。
要件の読み方は求人票のどこを読むかで扱っています。
在職中で時間が足りなくなったとき
並行数を増やすほど、日程調整と面接準備の時間が要ります。
表の「次の予定」が埋まらない行が3つ以上たまったら、並行数が処理能力を超えている合図です。
このときは、応募を止めるのではなく、進行中の案件を優先して新規の応募を1〜2週間止めます。
時間の作り方は在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。
まとめ
- 平均応募社数は**27.0社(doda)と8.8社(マイナビ)**の2つがあり、集計の対象が違うため並べて比べられない
- 目安は件数ではなく経路から決める。
紹介経由と自主応募は分けて数える - 同時進行は一斉応募ではない。
応募日を週単位でずらすと面接の山ができにくい - ずらす幅は2〜3週間に収める。
広げすぎると内定の回答期限に他社が間に合わない - 記録する列は会社名・経路・段階・直近の日付・次の予定の5つ。
経路が抜けると重複応募に気づけない - 表は週に1日だけ更新する。
目的は放置されている行を見つけること - 他社の選考状況は伝えて問題ない事実。
内定がある場合は回答の期限をあわせて示す



