配送の仕事を探していると、正社員の求人と並んで「業務委託」「開業サポートあり」といった募集を見かけます。
同じように荷物を運ぶ仕事に見えても、この2つは契約の性質がまったく違います。
ここでは制度としてどう分かれているのかを確認し、募集を見るときに何を確かめればよいのかを整理します。

軽貨物で荷物を運ぶには届出が必要になる

貨物軽自動車運送事業は届出制

軽トラックや二輪車を使って、他人の荷物を有償で運ぶ事業を営むには、貨物軽自動車運送事業の届出が必要です。
手続きは運輸支局に対して行います(出典: 国土交通省)。

届出を済ませたうえで、事業用の自動車として登録し、いわゆる黒ナンバーの交付を受けます。
自家用のナンバーのままで他人の荷物を有償で運ぶことはできないという点が、制度上の出発点になります。

一般貨物自動車運送事業は許可制

軽自動車ではないトラックを使う一般貨物自動車運送事業は、届出ではなく許可が必要です。
許可の審査には3〜4か月ほどかかるとされており、車両数や資金など複数の要件が定められています。

区分 手続き 審査
貨物軽自動車運送事業 届出 審査の期間を要しない
一般貨物自動車運送事業 許可 3〜4か月程度

軽貨物の側が届出で済むのは、参入の負担が軽く設計されているためです。
裏を返せば、始めやすいということは競争相手も入りやすいということでもあります。
始められるかどうかと、続けられるかどうかは別に考えます。

開業と就職は手続きの向きが違う

届出が必要になるのは、自分が事業者として荷物を運ぶ場合です。
運送会社に雇われて会社の車で配送するのであれば、届出をするのは会社であり、働く側が行う手続きではありません。

募集の内容がどちらを指しているのかは、この点で見分けられます。
自分で届出をして車両を用意する話が出てくるのであれば、それは雇用ではなく事業者として働く形の募集です。

業務委託と雇用は契約の名称では決まらない

労働者に当たるかは実態から判断される

契約書に「業務委託」と書かれていても、それだけで労働基準法上の労働者に当たらないと決まるわけではありません。
厚生労働省が示している判断の考え方では、仕事の依頼を断る自由があるか、業務の進め方に具体的な指揮監督を受けているか、報酬が労務の対価としての性格を持つかといった複数の要素から、総合的に判断されるとされています。

つまり、同じ「業務委託」でも実態によって結論が変わるということです。
個別の契約がどちらに当たるかは、この記事で判定できるものではありません。
判断に迷う場合は、労働基準監督署などの公的な窓口や専門家に相談するのが確実です。

募集の書き方で見分ける

募集を見る段階では、雇用形態の欄に何と書かれているかを最初に確認します。
正社員・契約社員と書かれていれば雇用の募集で、業務委託・委託ドライバー・開業支援といった言葉が使われていれば、事業者として働く形の募集である可能性が高くなります。

同じ求人サイトの中に両方が並んでいることがあります。
募集の見出しではなく、雇用形態の欄で判断するようにします。
求人票の項目ごとの読み方は求人票のどこを読むかで扱っています。

契約書のどこを見るか

募集の段階で確認できるのは、報酬がどう計算されるか、どの費用を自分が負担するか、期間や解除の条件がどうなっているかといった項目です。
口頭の説明だけで進めず、書面で示された内容を読む段階を省かずに挟みます。

雇用であれば、労働条件は書面で示されます。
確認する項目は労働条件通知書の確認ポイントに整理しています。
業務委託の契約書は労働条件通知書とは別の書面ですが、条件を書面で確かめるという手順そのものは変わりません。

保険と補償の扱いが変わる

雇用されている場合、社会保険や労働保険の適用は勤務の条件に応じて決まります。
事業者として働く場合は、これらの扱いが変わり、自分で加入の手続きをすることになります。
仕事中の事故や病気で働けなくなったときの補償の考え方も同じではありません。

制度の詳細は個別の状況によって変わるため、加入の要否は年金事務所や保険の窓口で確認します。
退職から次の就業までの手続きの流れは退職から入社までの社会保険と年金にまとめています。
雇用保険を前提とした給付の仕組みは失業保険とは?で扱っています。

収入と働き方の見え方が違う

売上と手取りは同じではない

業務委託の募集では、月に受け取れる金額の目安が示されることがあります。
この数字は売上に当たるもので、そのまま手取りになるわけではありません。
車両の費用、燃料代、保険料、駐車場の費用などを自分で負担するためです。

比較するときは、募集に示された金額から、自分が負担する費用を差し引いた形に直します。
同じ数字を並べても、負担する費用が違えば比較にならないという点は最初に押さえておきます。
年収がどこで決まるかの一般的な整理は転職で年収は上がる?下がる?にまとめています。

仕事が途切れたときの扱い

雇用であれば、荷物の量が減っても契約で定められた条件に基づいて賃金が支払われます。
業務委託では、配送した件数や距離に応じて報酬が決まる形が多く、仕事が途切れた期間の扱いは契約の内容によります。

収入の安定を重視するのか、働く時間の自由度を重視するのかで、どちらが合うかは変わります。
どちらが優れているという話ではなく、収入の変動を誰が引き受けるのかが違うという構造の話です。
雇用形態ごとの違いは正社員以外(契約・派遣)で探す選択肢でも扱っています。

収入の管理も自分で行う

事業者として働く場合、収入の申告や経費の管理を自分で行うことになります。
雇用されていれば勤務先がまとめて処理していた部分が、自分の作業として増えるということです。
手続きの詳細は個別の状況によって変わるため、税務署や専門家に確認します。

この負担は金額には表れませんが、時間としては確実にかかります。
手取りを比べるときは、この作業にかかる時間も含めて考えるほうが実態に近くなります。

労働時間のルールの適用も変わる

雇われて運転する場合、労働時間については事業者が守るべき基準が定められています。
2024年4月から適用されている基準の内容はトラックの2024年問題とは?に整理しました。
事業者として働く場合、この枠組みがそのまま当てはまるわけではありません。

長く続けられるかどうかを考えるうえで、労働時間の枠が制度として用意されているかどうかは判断材料になります。
募集を見比べるときは、報酬の数字だけでなくこの点も並べておきます。

当サイトが扱っているのは正社員の求人

8件すべてが正社員雇用の求人を扱う

当サイトが整理している物流・ドライバー向けのサービスは8件です。
パーソルイノベーション転職エージェント、レバジョブ、ドライバーズワーク、日本ドライバー人材センター、BtoC、カラフルエージェントドライバー、および「タクシー」「トラック」という名称の2件が該当します。

これらはいずれも正社員雇用の求人を扱うサービスです。
業務委託の軽貨物の案件を紹介するものではありません。
業務委託の形を検討する場合は、この記事で扱った制度の確認を自分で行い、契約書の内容を個別に確かめる必要があります。

入口の形と対象地域

8件のうち5件は会員登録から始まる登録型で、パーソルイノベーション転職エージェント、レバジョブ、ドライバーズワーク、日本ドライバー人材センター、BtoCがこれに当たります。
求人紹介の申込から始まる申込型はカラフルエージェントドライバーの1件です。
残る2件は、当サイトのデータでは入口の形が確認できていません。

対象地域は全国とは限りません。
当サイトのデータでは、パーソルイノベーション転職エージェントが東京・埼玉・千葉・神奈川・静岡・愛知・大阪などを対象とし、対象年齢は18〜49歳です。
日本ドライバー人材センターは東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・群馬・静岡・大阪・京都、レバジョブは東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪・京都、ドライバーズワークは東京・神奈川・埼玉・千葉が中心、カラフルエージェントドライバーは東京・神奈川・埼玉・千葉・愛知・大阪が対象です。
全国を対象としているのはBtoCとタクシー・トラックの3件になります。
対応地域の調べ方は転職サービスは地方でも使える?で扱っています。

まとめ

  • 軽貨物で他人の荷物を有償で運ぶには、貨物軽自動車運送事業の届出と黒ナンバーの交付が必要
  • 一般貨物自動車運送事業は許可制で、審査に3〜4か月程度かかる
  • 業務委託か雇用かは契約の名称ではなく、働き方の実態から総合的に判断される
  • 業務委託では売上から自分が負担する費用を差し引いて比較する
  • 判断に迷う契約は、労働基準監督署などの公的な窓口や専門家に確認する
  • 当サイトが整理している8件のサービスは、いずれも正社員雇用の求人を扱っている