退職してから次の勤務先が決まるまでの間、収入がどうなるのかは日程を決める前に確認しておきたい部分です。
ただ、この制度は日常の呼び名と正式な名称が違い、条件も離職の理由によって変わります。
調べ始めると用語のところで止まります。

ここでは、雇用保険の基本手当について、誰が対象になるのか、自己都合と会社都合で何が変わるのか、手続きはどう進むのかを整理します。
個別の受給資格の判断はハローワークが行います。
この記事は、窓口へ行く前に何を聞けばよいかが分かる状態にするところまでを扱います。

「失業保険」の正式な名称は基本手当

制度の位置づけ

日常的に「失業保険」と呼ばれているのは、雇用保険の給付のうち、求職者給付の基本手当にあたります。
窓口はハローワーク(公共職業安定所)です。

名称が違うため、調べるときは「基本手当」で探すほうが公的な資料に行き当たります。
厚生労働省とハローワークの案内が一次の情報であり、そこに書かれた要件が判断の基準になります。

受け取れるのは「失業の状態」にある人

基本手当は、退職した人へ自動的に支払われるものではありません。
働く意思と能力があり、求職の活動をしているにもかかわらず職業に就けない状態にあることが前提とされています。

したがって、次の勤務先が既に決まっている場合や、当面働く予定がない場合は前提から外れます。
退職したという事実だけで受け取れる制度ではありません。

受給資格には被保険者期間の要件がある

離職の前に一定の期間、雇用保険の被保険者であったことが要件とされています。
必要な期間については、離職の理由によって異なる扱いが設けられています。

自分がその要件を満たすかどうかは、離職票を持ってハローワークで確認します。
ここは記事の一般論で判断できる部分ではありません。
加入していた期間が短い場合ほど、先に窓口で確認する価値があります。

在職中に決まれば関係しない

在職しながら活動し、退職日と入社日をつなげた場合、失業の状態が生じないため基本手当の話にはなりません。
収入の空白も生じません。

どちらの進め方にするかは、この制度の有無より前の判断です。
在職中に進める場合の時間の作り方は在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。

自己都合と会社都合で変わるのは受給の開始時期

どちらにも7日の待期がある

受給資格の決定を受けた後、失業の状態にあった日が通算して7日間経過するまでは、基本手当は支給されません。
この期間を待期といいます。

待期は離職の理由を問いません。
会社都合であっても、この7日は置かれます。

会社都合は給付制限が原則不要

倒産や解雇など、会社側の事情による離職の場合、待期の7日が終われば支給の対象になります。
給付制限の期間は原則として設けられません(出典: 厚生労働省・ハローワーク)。

離職の理由がどちらに分類されるかは、離職票の記載と事実関係をもとにハローワークが判断します。
この分類が、受給の開始時期を左右します。

自己都合には給付制限期間が加わる

正当な理由がない自己都合による離職の場合、待期の7日に加えて給付制限の期間が設けられます。
この期間が終わるまで基本手当は支給されません。

2025年4月の法改正により、この給付制限期間は原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されました(出典: 厚生労働省)。
改正の前後で扱いが変わるため、古い時期に書かれた説明では2ヶ月と記載されていることがあります。
制度の内容を確認するときは、いつ時点の情報かを見ます。

違いを1枚で見る

区分 待期 給付制限
会社都合による離職 7日 原則として設けられない
自己都合による離職 7日 原則1ヶ月(2025年4月の改正による)
自己都合で教育訓練を受講した場合 7日 解除される
過去5年以内に自己都合の受給資格決定が2回以上 7日 3ヶ月

出典は厚生労働省とハローワークの案内です。
表の下2行は次の章で扱います。

給付制限が解除される場合と長くなる場合

教育訓練を受講すると解除される

離職の日の前1年以内、または離職の後に、厚生労働大臣が定める教育訓練を自主的に受講した場合、給付制限が解除される扱いが設けられています(出典: 厚生労働省)。
この場合は7日の待期のみで受給が始まります。

対象になる訓練の範囲や、受講をどう証明するかは制度上定められています。
受講した後に知るのではなく、退職を考えている段階で確認する価値がある項目です。
要件はハローワークで確認できます。

繰り返しの離職は3ヶ月になる

過去5年以内に、正当な理由のない自己都合による離職で受給資格の決定を2回以上受けている場合、給付制限は3ヶ月とされています(出典: 厚生労働省)。

短い期間での転職を繰り返している場合に関わります。
自分がこれに該当するかは、過去の受給の記録をもとにハローワークで確認します。

離職の理由は離職票の記載から判断される

自己都合か会社都合かは、自分の認識ではなく、離職票の記載と事実関係をもとにハローワークが判断します。
前の勤務先が記入した離職の理由に、本人が異なる認識を持つ場合もあります。

離職票には、離職した本人が記載内容について意見を記す欄が設けられています。
記載に納得できない場合は、署名する前に窓口で相談してください。
この判断は個別の事情によって変わります。

手続きはどう進むか

流れ

段階 やること
退職前 前の勤務先から受け取る書類を確認する
退職後 離職票が届くのを待つ。届かない場合は前の勤務先に確認する
最初の来所 住所を管轄するハローワークで求職の申込みを行い、離職票を提出する
受給資格の決定 要件を満たすかがここで判断される。待期が始まる
説明会 受給に関する説明を受ける
失業の認定 定められた日に来所し、失業の状態にあったことの認定を受ける
支給 認定を受けた日数分が支給される

出典はハローワークの案内です。
起点は離職票であり、これが届かないと手続きが始まりません。

離職票が届かない場合

離職票は、前の勤務先の手続きを経て交付されます。
退職後しばらくしても届かない場合は、まず前の勤務先に確認します。

前の勤務先とやり取りしにくい場合の相談先も含め、ハローワークの窓口で扱われます。
受け取る書類の一覧を退職前に作っておくと、何が来ていないのかを特定できます。
書類の整理は退職から入社までの社会保険と年金とあわせて行うと一度で済みます。

求職の活動を続けることが前提になる

基本手当は、失業の状態にあることを定期的に確認しながら支給されます。
認定の日ごとに、求職の活動を行ったことを申告する形です。

つまり、受給しながら転職活動を進めることが制度の想定です。
活動を止めた状態で受け取り続ける制度ではありません。
求人の見方は求人票のどこを読むかにまとめています。

支給される期間や金額は人によって違う

受け取れる日数や1日あたりの金額は、離職時の年齢、被保険者であった期間、離職前の賃金などによって決まる仕組みです。
全員が同じ額を同じ期間受け取るものではありません。

自分の場合にどうなるかは、受給資格の決定を受けた段階で示されます。
ここを見込みで計算して生活費の計画を立てると、想定と食い違う可能性があります。

早く決まった場合の再就職手当

早く決まると損になるわけではない

基本手当を受給できる日数を残して再就職した場合に、再就職手当という給付が設けられています。
給付の日数を使い切るまで待たなければ受け取れない、という仕組みにはなっていません。

「早く決めると受け取れる額が減るから待つ」と考える前に、この制度の要件を確認します。
待つことが有利とは限りません。

支給には要件がある

再就職手当には、残っている給付の日数、就いた職業の安定性、前の勤務先との関係など、いくつかの要件が定められています。
要件を満たすかどうかはハローワークが判断します。

内定が出た段階で窓口に相談すると、手続きの順序も含めて案内を受けられます。
順序を誤ると要件から外れることがあるため、決まってからではなく決まりそうな段階で確認します。

収入の空白をどう見込むか

給付制限がある場合、退職から支給が始まるまでに一定の期間が空きます。
その間の生活費は自分で用意することになります。

日程を決める段階で、この期間を計算に入れます。
同じ時期に、健康保険料や国民年金の保険料も発生します。
手続きと負担の整理は退職から入社までの社会保険と年金にまとめており、退職日を決める前の確認は退職はどう伝える?で扱っています。

まとめ

  • 「失業保険」と呼ばれる制度の正式な名称は雇用保険の基本手当で、窓口はハローワーク
  • 対象になるのは、働く意思と能力があり求職の活動をしている「失業の状態」にある人
  • 離職の理由を問わず7日の待期がある
  • 会社都合による離職は、給付制限が原則として設けられない
  • 自己都合による離職には給付制限があり、2025年4月の改正で原則2ヶ月から1ヶ月に短縮された
  • 離職日前1年以内または離職後に、厚生労働大臣が定める教育訓練を自主的に受講した場合は給付制限が解除される
  • 過去5年以内に自己都合の受給資格決定を2回以上受けている場合は3ヶ月になる
  • 離職の理由はハローワークが判断する。
    離職票の記載に納得できない場合は署名の前に相談する
  • 給付の日数を残して再就職した場合の再就職手当がある。
    決まりそうな段階で窓口に確認する