子どもができてから働き方が合わなくなり、転職を考え始める。
この経路で情報を探している人は多くいます。
ただ、調べると出てくるのは「育児に理解のある職場を選びましょう」という助言で、理解があるかどうかをどこで判断するのかは書かれていません。

ここでは、まず調査データで何が起きているかを確認し、そのうえで求人票のどの欄を見て、何を質問すれば判断できるかという手順に落とします。
対象を女性に絞った転職サービスの話は女性向けの転職サービスはある?で扱っており、この記事はサービスの選択ではなく応募先の条件の見方を主題にします。

育児を理由に辞めている人は男女ともにいる

経験率は男性19.4%・女性27.3%

マイナビ転職が2026年2〜3月に20〜50代の正社員800名を対象に実施した調査では、育児離職の経験率は男性19.4%、女性27.3%でした(出典: マイナビ転職)。

女性のほうが高い一方で、男性も約2割が経験しています。
育児を理由に働き方が変わるのは、片方の性別に限られた事情ではないという点が、この数字から読み取れるところです。

辞めた理由は男女で方向が違う

同じ調査で離職の理由を見ると、男性は「今の給与ではやっていけない」が48.9%と高く、給与に関する項目が上位に並びます。
女性は「子どものお迎えに間に合わない」が36.4%で最多でした(出典: 同調査)。

男性は金額、女性は時刻という、まったく別の方向を向いています。
同じ「育児が理由の離職」でも、解決に必要な条件が違うということです。

続けたい人が大半である

同じ調査では、正社員女性の約9割が子育てをしながら正社員を続けたいと回答しています(出典: 同調査)。

辞めた人の多くは、正社員として働くこと自体を望まなくなったのではありません。
いまの条件では続けられなかった、という順序です。
変えるべきは働き方そのものではなく、条件のどれか1つである可能性があるという見方ができます。

数字から出てくる2つの軸

時間の軸と金額の軸

上の数字を並べると、確認すべき軸が2つに分かれます。
時刻に間に合うかという時間の軸と、その働き方で生活が成り立つかという金額の軸です。

軸 具体的に決まる条件 求人票で確認できるか
時間 終業時刻、通勤時間、突発の休みの扱い 終業時刻と通勤時間は確認できる
金額 所定労働時間に対する給与、時短時の扱い 所定労働時間の給与は確認できる

時間の軸だけを見て転職すると、金額が下がって続かなくなります。
金額の軸だけを見ると、お迎えに間に合わない働き方に戻ります。
どちらか一方を解決した転職は、数年後にもう一方の理由で動き直すことになりがちです。

自分の制約を時刻で書き出す

軸を決めたら、抽象的な希望ではなく数字にします。
「17時30分までに退勤して18時15分に到着する必要がある」という形であれば、求人票の終業時刻と就業場所から判断できます。

「育児に理解がある会社」という条件では、求人票と照らし合わせられません。
時刻と分単位で書き出すと、候補が自動的に絞られます。

求人票で判断できること

終業時刻と所定労働時間

始業と終業の時刻、所定労働時間は求人票に記載されます。
ここから逆算して、お迎えの時刻に間に合うかを判断します。

フレックスタイム制の場合、コアタイムの終わりが実質的な退勤可能時刻になります。
コアタイムの記載が無ければ、質問の対象です。
制度の名前だけでは、何時に出られるかは決まりません。

就業場所と通勤時間

勤務地の欄に書かれているのが会社の所在地なのか、実際の就業場所なのかを確認します。
通勤時間は就業場所で決まるため、ここを取り違えると計算が崩れます。

候補地が複数挙がっている場合は、最も遠い場所を前提に見ます。
配属先が入社後に決まる企業では、通勤時間が確定しないまま入社することになります。
欄の見分け方は求人票のどこを読むかにまとめています。

年間休日と時間外労働の記載

年間休日数は数字で書かれるため、比較できます。
時間外労働については「あり」「なし」の記載に加えて、平均時間が示されていることがあります。

固定残業代が設定されている場合、その時間数が実質的な想定残業時間です。
時短で働く前提の人にとって、固定残業代を含む給与提示は前提が合っていない可能性があります。
何時間分に相当するかは求人票に記載されます。

在宅勤務の記載

在宅勤務が可能と書かれていても、頻度までは書かれないことがほとんどです。
週に何日なのか、部署によって違うのかは質問の対象になります。

在宅であっても、子どもの発熱時に業務ができるとは限りません。
在宅の可否と、突発の休みの扱いは別の項目として確認します。

求人票では分からないこと

短時間勤務制度は「入社直後から使えるか」を確認する

育児・介護休業法では、3歳に満たない子を養育する労働者について、事業主が所定労働時間の短縮措置を講じることとされています。
制度としては、法令に基づいて置かれているものです。

ただし、労使協定によって、継続して雇用された期間が1年に満たない労働者などを対象から除外できる定めがあります(出典: 厚生労働省「育児・介護休業法」)。
つまり、制度があることと、入社直後の自分が使えることは別の話です。
転職して最初の1年をどう働くかは、選考の段階で確認しておく項目になります。

なお、この分野の法令は改正が続いています。
対象となる子の年齢や措置の内容は、厚生労働省の資料と応募先の就業規則で確認してください。
個別の適用については、都道府県労働局の窓口でも相談できます。

制度が使われているかを人数で聞く

規程に書かれていても、実際に使っている人がいなければ運用は分かりません。
配属予定の部署でいま何人が利用しているかを聞くと、数字で返ってきます。

数字が返ってこない、あるいは「相談に応じています」という回答だけの場合、その回答自体が運用の実態を示していることがあります。
制度の有無は求人票、運用の実態は質問という切り分けにすると、聞くべきことが絞れます。

突発の休みがどう扱われるか

子の急な発熱で当日に休む必要が出たとき、誰が業務を引き受けるのかは規程には書かれていません。
担当が1人に固定されている部署と、複数人で分担している部署では、休みやすさがまったく違います。

聞き方は「配属予定の部署は何人体制で、担当は分けていますか」という形になります。
休みやすさを直接聞くより、体制を聞くほうが具体的な回答が得られます。

学齢期以降の見通し

子の年齢が上がると、法令に基づく措置の対象から外れます。
就学後に必要になるのは、短時間勤務よりも学校行事や長期休暇への対応です。

いま必要な条件だけで選ぶと、数年後に同じ理由で動くことになります。
企業が独自に設けている制度が、法令の定めより長い期間を対象にしているかどうかは確認できます。

時短のまま転職する場合

所定労働時間そのものが変わる

短時間勤務は、残業をしないという意味ではなく、所定労働時間が短くなる働き方です。
給与は通常、短くなった時間に応じて計算されます。

そのため、提示される金額は、フルタイムを前提とした求人票の記載とは異なります。
求人票の年収は、原則としてフルタイムを前提に書かれているという点を踏まえて読む必要があります。
年収がどう決まるかの全体像は転職で年収は上がる?にまとめています。

選考で伝える順序

時短を前提に転職する場合、伝えるのは選考の早い段階です。
内定後に条件として出すと、前提が変わったという扱いになります。

伝え方は、事実と必要な条件を分けます。
「未就学児がおり、17時30分までの勤務を希望します」という形であれば、企業側は受け入れられるかどうかを判断できます。
配慮を求める言い方ではなく、条件の提示として伝えるほうが話が進みます。

正社員以外の選択肢も比較に入れる

所定労働時間の短い働き方は、雇用形態を変えることでも実現できます。
契約社員や派遣という形であれば、勤務時間が最初から短く設定された求人があります。

一方で、昇給や賞与の扱いは変わります。
どちらが良いという話ではなく、両方を比較の表に入れたうえで決めるという進め方になります。
雇用形態ごとの違いは正社員以外(契約・派遣)で探す選択肢にまとめています。

書面で確定させる

勤務時間の条件は、口頭の説明ではなく書面で確認します。
労働条件を明示する際には、始業と終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無が示されます。

面接で聞いた内容と書面の記載が違う場合は、入社前に確認します。
確認の手順は労働条件通知書の確認ポイントにまとめています。

まとめ

  • 育児離職の経験率は男性19.4%・女性27.3%。
    片方の性別に限られた事情ではない
  • 離職の理由は、男性が給与(「今の給与ではやっていけない」48.9%)、女性が時刻(「子どものお迎えに間に合わない」36.4%)と方向が違う
  • 正社員女性の約9割は、子育てをしながら正社員を続けたいと回答している
  • 確認する軸は時間と金額の2つ。
    片方だけを解決すると、もう一方の理由で動き直すことになる
  • 制約は「理解のある職場」ではなく時刻と分で書き出すと求人票と照らせる
  • 短時間勤務制度は、労使協定で継続雇用期間1年未満の労働者を対象外にできる定めがある。
    入社直後から使えるかは確認する
  • 運用の実態は、配属予定の部署でいま何人が使っているかを人数で聞く
  • 時短は所定労働時間そのものが変わる。
    求人票の年収はフルタイムを前提としている