転職の日程を考えていると、賞与のところで手が止まります。
あと1ヶ月待てば支給日だが、入社日は動かせない。
逆に、転職先の初回の賞与がいつ、どのくらい出るのかが分からないまま入社日を決めてよいのか。
金額が大きいだけに、判断を保留にしたまま日程だけが進んでしまいがちな部分です。
ここでは、退職と入社をまたぐときの賞与について、何をどの順番で確認すればよいかを整理します。
求人票の賞与欄の読み方は求人票のどこを読むか、提示された年収の分解の仕方は複数の内定が出たときの比較軸、退職を伝える手順そのものは退職はどう伝える?にまとめています。
この記事は、その3つの間に落ちる「賞与と日程の関係」に絞ります。
賞与は企業ごとの制度である
支給の根拠は就業規則や賞与の規定にある
賞与は、すべての勤務先が同じ形で支給するものではありません。
支給の有無、算定の方法、対象となる期間、支給の時期は、企業ごとに就業規則や賞与に関する規定で定められています。
そのため「転職するとボーナスはどうなるのか」という問いに、職種や業界を問わず通じる一般的な答えはありません。
答えが書かれているのは自分の勤務先の規定であり、そこを読むところから始まります。
ネット上の説明や他社に勤める知人の話は、自分の会社の規定と一致しているとは限りません。
支給日の在籍を条件とする定めが置かれることがある
規定の中に、支給日の時点で在籍していることを支給の条件とする定めが置かれていることがあります。
この定めがあるかどうかで、退職日をいつにするかの意味が変わります。
一方、そうした定めが無い企業もあります。
算定期間のうち在籍していた期間に応じて計算する仕組みを持つ企業もあります。
どの形なのかは、規定を読まなければ分かりません。
扱いは規定の内容と個別の事情によって変わります。
読んでも判断がつかない場合は、後述する公的な窓口で相談できます。
規定はどこで読めるか
就業規則は、そこで働く人が見られる状態にしておくことが求められています。
社内のポータル、共有のフォルダ、総務や人事の窓口といった形で、閲覧の方法が案内されているのが一般的です。
賞与について別の規定が設けられている場合もあります。
就業規則の本体に「賞与については別に定める」とだけ書かれているときは、その別の規定を探します。
ここを読まずに日程を決めると、後から前提が違ったことに気づいて調整をやり直すことになります。
判断に迷う内容が出てきたとき
規定の書き方が曖昧だったり、実際の運用と食い違っているように見えたりすることがあります。
この場合、社内で口頭のやり取りを重ねるより、記載を確認したうえで公的な窓口に相談するほうが早く整理できます。
都道府県労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署は、こうした相談を受け付けている窓口です。
個別の事情によって扱いが変わる領域のため、この記事では確認すべき項目までを扱い、結論の判断は窓口に委ねます。
退職の日程を決める前に確認すること
算定期間と支給日を書き出す
最初にやるのは、賞与の算定期間と支給日を紙に書き出すことです。
算定期間とは、どの期間の勤務を対象として賞与を計算するかという期間のことで、規定に定められています。
この2つを書き出すと、自分の退職日がどこに位置するのかが目で見えます。
算定期間の途中なのか、算定期間は終わっているが支給日の前なのか、支給日の後なのか。
位置が違えば確認すべき項目も変わります。
頭の中だけで考えると、この3つが混ざります。
支給日を待つかどうかは入社日とセットで決める
賞与の支給日まで在籍したい場合、退職日はその後になります。
すると最終出社日も、有給休暇を消化する日程も、転職先の入社日も後ろにずれます。
転職先が入社日を待てるかどうかは、募集の事情によって変わります。
欠員の補充で急いでいる企業と、数ヶ月先でも構わない企業では回答が違います。
賞与のためだけに入社日を延ばせるとは限りません。
内定の段階で、入社日にどの程度の幅があるのかを先に確認しておくと、支給日を待つかどうかの判断材料がそろいます。
口頭の説明ではなく規定の記載で確認する
上司や同僚から「退職予定でも出るはず」「途中で辞めると出ない」といった説明を受けることがあります。
こうした説明は、その人の記憶や過去の一例に基づいていることがあります。
確認するのは規定の記載です。
記載と説明が食い違う場合は、人事部門に対して、どの条文に基づく扱いなのかを聞く形にします。
口頭のやり取りは後から確認できないため、重要な内容はメールなど記録の残る手段に移しておきます。
支給額が決まる時期も確認する
支給の有無だけでなく、金額がいつ確定するのかも確認の対象です。
業績や個人の評価によって変動する仕組みの場合、支給日の直前まで金額が分からないことがあります。
金額が確定していない段階で「賞与を待つ」という判断をすると、待った結果が想定と違うということが起こりえます。
確定の時期が分かるなら、その日を日程表に書き込んでおきます。
転職先の初回の賞与をどう見込むか
入社した年度は満額にならないことがある
賞与が算定期間の勤務を対象にする仕組みである以上、期の途中で入社した場合、その期間のすべてに在籍しているわけではありません。
初回の賞与が満額にならない、あるいは寸志という形になる、支給の対象にならない、といった扱いが規定で定められていることがあります。
これは不利な扱いという話ではなく、算定の仕組みから出てくる結果です。
入社1年目の年収は、2年目以降と同じ前提で計算できません。
求人票に書かれた想定年収が2年目以降の姿を示している場合、1年目との差はそのまま手取りの差になります。
「賞与年2回」という記載だけでは金額は分からない
求人票の賞与欄に「年2回」とだけ書かれている場合、支給の回数は分かりますが、金額は分かりません。
支給実績が併記されていれば、過去にどのくらい支給されたかの手がかりになります。
実績の記載が無ければ、金額は確定していないものとして扱います。
この読み方は賞与欄に限らず求人票全体に共通するもので、詳しくは求人票のどこを読むかにまとめています。
内定の段階で聞いておく項目
賞与について確認するなら、内定が出て条件の話をする場面が適しています。
聞く項目は次の4つに絞ると、短いやり取りで済みます。
1つ目は算定期間と支給月です。
2つ目は入社した年の初回の賞与がどう扱われるかです。
3つ目は提示された年収に賞与が含まれているか、含まれているならそれは確定額なのか見込みなのかです。
4つ目は金額がどう決まるか、業績や評価による変動があるかです。
この4つが埋まると、1年目と2年目の見え方が分かれます。
書面で確認する
条件の話は口頭で行われることが多いのですが、判断の材料にするなら書面で示された内容を基準にします。
労働条件を示す書面で何が明示されるのか、面接で聞いた話と食い違いが出やすいのはどこかは労働条件通知書の確認ポイントにまとめています。
書面に書かれていない項目については、書かれていないという事実をそのまま記録しておきます。
確定していない前提で年収を計算すれば、後から下振れしても計画は崩れません。
1年目の収入を幅で見込む
賞与込みの提示とそうでない提示をそろえる
転職先の提示と現職の年収を比べるとき、片方が賞与込み、もう片方が賞与を別にした金額だと、比較になりません。
並べる前に、どちらも同じ構成に直します。
基本給、固定残業代、各種手当、賞与に分けて書き出すと、同じ総額でも中身の違いが見えます。
分解の手順は複数の内定が出たときの比較軸で扱っています。
年収そのものが上がるか下がるかの構造は転職で年収は上がる?にまとめています。
変動する部分は幅で持つ
賞与のように変動する部分は、1つの数字で置かず、下限と上限の幅で持ちます。
判断の材料としては、幅の下限で計算しておくほうが安全です。
下限で計算しても問題ないなら、その転職は賞与の見込みに依存していないことになります。
逆に、上限を前提にしないと成立しない計画であれば、確定していない金額に依存した判断をしていることになります。
支給の谷を先に見込んでおく
現職の賞与を受け取らずに退職し、転職先の初回も満額にならない場合、一定期間は賞与による収入が入らない期間が生じます。
金額の大小にかかわらず、この期間が来ること自体は日程から計算できます。
計算しておけば、対応は事前に取れます。
転職の日程を決める段階でこの谷を見込んでおくと、入社後に想定外として受け取ることがなくなります。
判断が分かれる場面
賞与を待つと入社日が遅れる場合
支給日まで待つと入社が遅れ、転職先の受け入れの都合と合わなくなることがあります。
このとき比べるのは、待って得られる金額と、入社日を動かすことで生じる影響です。
入社日を動かせるかどうかは相手の事情によります。
まず転職先に確認し、動かせないと分かった時点で、賞与を待つ選択肢は無くなります。
選択肢が残っているかを先に確かめるほうが、迷う時間が短くなります。
引き止めで賞与や条件の話が出た場合
退職を伝えた後、賞与の支給や条件の見直しを理由に慰留されることがあります。
この場合に確認するのは、その提示がいつ、どういう形で実施されるのか、書面で示されるのかです。
口頭の提示だけを前提に退職を取り下げると、後から食い違いが起きても確認する材料がありません。
引き止めの型と返答の組み立て方は退職はどう伝える?で扱っています。
在職中に進めて日程の幅を残す
賞与の支給日と入社日の調整は、在職しながら活動している場合のほうが選択肢が広くなります。
退職してから探す場合、日程の主導権は自分にありますが、収入の空白期間が先に始まります。
在職中に進める場合の時間の作り方や、面接の日程をどう入れるかは在職中の転職活動はどう進める?にまとめています。
転職活動の期間は3〜6ヶ月が目安とされており(出典: マイナビ転職)、賞与の支給日から逆算するなら、この幅を見て動き出す時期を決めることになります。
まとめ
- 賞与は法令で一律に定められた支払いではなく、就業規則や賞与の規定に基づく企業ごとの制度
- 支給日の在籍を条件とする定めが置かれていることがあり、有無は規定を読まないと分からない
- 退職日を決める前に、算定期間と支給日を書き出して自分の位置を確認する
- 口頭の説明ではなく規定の記載で確認し、重要なやり取りは記録の残る手段に移す
- 転職先の初回の賞与は満額にならないことがあり、1年目と2年目の年収は分けて見込む
- 内定の段階で、算定期間・支給月・初回の扱い・変動の有無の4項目を確認する
- 変動する部分は下限の幅で計算しておくと、下振れしても計画が崩れない
- 判断に迷う内容は、労働局の総合労働相談コーナーなど公的な窓口で相談できる



