「自分の市場価値を知りたい」という言い方は広く使われますが、何をすれば知ったことになるのかは曖昧なままです。
診断ツールで金額が出れば分かったことになるのか、スカウトが届けば高いということなのか。
ここでは、調べる方法を4つに分けて、それぞれ何が分かり何が分からないかを整理します。
断片的な言及は大手の転職サービスはどれ?やスカウト型の転職サービスとは?にもありますが、この記事は調べる行為そのものを主題にします。
市場価値という言葉が指しているもの
能力の絶対値ではない
市場価値は、その人の能力を点数化したものではありません。
いま人を探している企業が、その経験に対していくら出す用意があるかという関係の話です。
したがって、同じ経歴でも業界が変われば金額が変わります。
需要が集中している領域では上がり、供給が多い領域では下がります。
自分は変わっていないのに数字が動くのは、この構造によるものです。
だから金額ではなく範囲で出る
関係で決まる以上、1つの金額として確定することはありません。
出てくるのは「この経験なら、この範囲の募集が多い」という幅です。
診断の結果に金額が表示されても、それは幅の中央付近を示しているに過ぎません。
幅の広さそのものが情報であり、幅が広い職種は経験や担当範囲によって扱いが大きく変わるということです。
調べる目的を先に決める
方法を選ぶ前に、何のために調べるのかを決めます。
目的によって、必要な精度も使う方法も変わります。
| 目的 | 必要なもの |
|---|---|
| 動くかどうかを決めたい | いまの条件が市場のどのあたりかが分かればよい |
| 年収交渉の材料にしたい | 同じ役割の募集で示されている金額の根拠 |
| 進む方向を決めたい | どの業界・職種で自分の経験が要件になっているか |
目的を決めないまま診断を受けると、出た数字に一喜一憂して終わります。
方法1:求人の提示レンジを自分で並べる
やること
同じ職種・同じ経験年数の求人を10件検索し、金額の下限と上限、必須要件を書き写します。
表計算でも紙でも構いません。
登録も費用も要らず、その日のうちに終わります。
最も手間がかからないのに、最も具体的な数字が手に入る方法です。
分かること
10件並べると、募集がどの範囲に集中しているかが見えます。
加えて、必須要件の欄を見ると、自分の経験がその範囲に入るための条件になっているかが分かります。
金額の幅が広い場合、その職種は担当範囲によって扱いが変わります。
幅の下限に近い求人と上限に近い求人で、必須要件がどう違うかを見ると、何を持っていれば上のほうに入るのかが読み取れます。
欄ごとの見方は求人票のどこを読むかにまとめています。
分からないこと
分かるのは「募集がいくらで出ているか」であって、自分にいくら提示されるかではありません。
求人票の年収は幅で書かれ、どこに位置づけられるかは選考を経ないと決まりません。
また、非公開で募集されている求人はこの方法では見えません。
担当者を介して紹介される求人が別にあるため、公開されている求人だけを見た結果は、市場の一部です。
方法2:診断ツールの結果を使う
やること
経歴や希望条件を入力すると、近い経歴の人がどの程度の条件で採用されているかの目安が示される形式です。
当サイトのデータでは、ミイダスがこの機能を入口に持つサービスとして掲載されており、会員登録で使い始められる登録型、対応地域は全国、扱う雇用形態は正社員です。
入力を終えれば結果が出るため、時間はかかりません。
転職するかどうかを決めていない段階でも使えます。
分かること
自分と近い経歴の人がどの範囲で扱われているかが、数字で示されます。
方法1と違い、自分の経歴を入力したうえでの結果になるため、あてはめる作業が要りません。
分からないこと
入力した情報以上のことは出てきません。
経歴の記入が粗ければ、粗い前提での結果になります。
担当した業務や扱った規模を書き込むほど、示される範囲は自分の状況に近づきます。
また、示されるのは目安であり、実際の提示条件は応募先と選考の結果によって変わります。
この点はサービス側も明示しています。
方法3:企業からのオファーで反応を見る
やること
職務経歴を登録し、企業や担当者からの連絡を待つ形式です。
当サイトのデータでは、リクルートダイレクトスカウトが登録型・全国対応で掲載されており、職務経歴(レジュメ)の登録が利用の起点になります。
登録したあとは、届いた連絡を読むだけです。
面談の日程を押さえる必要がないため、在職中でも進めやすい形になります。
分かること
届く連絡に並ぶ職種名と条件が、自分の経歴がどう見られているかを示します。
自分では候補に入れていなかった業界から声がかかることもあり、方向を決めるための材料になります。
金額そのものより、どの職種として声がかかるかのほうが情報量があります。
想定していた職種と違う名前で届き続ける場合、経歴の見え方が自分の認識とずれています。
分からないこと
連絡が来ないことは、市場価値が低いことを意味しません。
登録した情報が少なければ、そもそも検索の対象に入っていない可能性があります。
反応が薄いときに先に見直すのは、記入量と最終更新日です。
書き方はスカウト型サービスのプロフィールの書き方にまとめています。
また、待つ形式であるため、いつ結果が出るかを自分で決められません。
方法4:面談で査定してもらう
やること
面談を伴うサービスに登録し、担当者に経歴を見てもらう形式です。
日程調整と面談の時間が必要になるため、4つの中では最も手間がかかります。
分かること
人が判断するため、なぜその範囲なのかという理由が付いてきます。
「この工程の経験があるので、この業界ではこの水準になる」という説明は、数字だけの結果からは得られません。
さらに、非公開で扱っている求人を踏まえた話が聞けます。
公開されている求人だけを見た方法1では届かない範囲が含まれます。
分からないこと
聞ける内容は、そのサービスが紹介できる求人の範囲に影響されます。
特定の業界に強いサービスであれば、その業界を前提とした話になります。
したがって、1社の話を市場全体の評価として受け取るのは早すぎます。
複数社に聞くと幅が見えますが、そのぶん面談の回数が増えます。
何社まで使うかの考え方は転職エージェントは何社まで併用してよいかにまとめています。
4つをどう使い分けるか
比較
| 方法 | 主に分かること | かかる時間 | 結果が偏る方向 |
|---|---|---|---|
| 求人のレンジを並べる | 公開されている募集の範囲 | 1〜2時間 | 公開求人に限られる |
| 診断ツール | 近い経歴の人の条件の目安 | 数十分 | 入力した情報の粒度に依存 |
| 企業からのオファー | どの職種として見られているか | 数週間 | 登録内容と更新日に依存 |
| 面談での査定 | 範囲とその理由、非公開の情報 | 面談1回ぶん | そのサービスの求人の範囲 |
最初にやるのは方法1
順序としては、方法1を先にやります。
ここで自分の職種の相場を把握しておくと、他の3つの結果を読む基準ができます。
基準を持たずに診断や面談から入ると、示された数字が高いのか低いのかを判断できません。
比較の相手が無い状態で数字を受け取ると、そのまま信じるしかなくなります。
結果は一致しない
4つを試すと、出てくる数字はばらつきます。
これは正常です。
見ている母集団が違うためです。
ばらつきの理由に情報があります。
公開求人のレンジより面談で言われた範囲が高ければ、非公開の求人が含まれているということです。
逆に低ければ、そのサービスが扱う領域では評価が異なるということです。
一致しない理由を1つずつ説明できる状態が、調べ終わった状態になります。
結果をどう読むか
出た数字は「募集の相場」
どの方法で出た数字も、募集の相場であって、自分に確定した金額ではありません。
実際の提示条件は、書類選考と面接を経て決まります。
そのため、診断の結果をそのまま「自分の年収はこの額であるべきだ」という主張に使うことはできません。
年収交渉の根拠として使えるのは、同じ役割の募集で示されている金額のほうです。
交渉の進め方は転職の年収交渉はできる?にまとめています。
思ったより低かったとき
数字が想定より低い場合、先に確認するのは記入の粒度です。
担当した業務、扱った規模、在籍期間、使ってきた道具が書かれていなければ、判断の材料が渡っていません。
そのうえでなお低い場合、いまの経験が値段になりにくい領域にいるということです。
この場合に見るのは、金額そのものではなく、どの業界で自分の経験が必須要件として書かれているかです。
調べ方は転職の企業研究はどこまでやる?にまとめています。
思ったより高かったとき
数字が高く出た場合も、そのまま受け取らずに内訳を見ます。
上限に近い金額は、より広い担当範囲や役職を前提としていることがあります。
求人票の年収が幅で書かれている場合、下限に近い額を前提に見ておくほうが、後で落差が生まれません。
年収が何で決まるかは転職で年収は上がる?にまとめています。
調べただけでは動かない
市場価値を調べる作業は、判断の材料をそろえる段階です。
数字が出た時点で活動が進んだわけではありません。
材料がそろったら、何を優先して動くかを決める作業に移ります。
優先順位の付け方は転職の軸はどう決める?にまとめています。
まとめ
- 市場価値は能力の絶対値ではなく、需要と供給で決まる相対値。
金額ではなく範囲で出る - 調べる目的(動くか決める/交渉の材料/方向を決める)を先に決めると、選ぶ方法が決まる
- 方法1(求人のレンジを並べる)が最も手軽で具体的。
まずここから始める - 方法2(診断ツール)は入力した情報以上のことは出ない。
当サイトのデータではミイダスが登録型・全国 - 方法3(オファー)で見るのは金額より、どの職種として声がかかるか
- 方法4(面談での査定)は理由が付いてくるが、そのサービスの求人の範囲に影響される
- 4つの結果は一致しない。
一致しない理由を説明できる状態が調べ終わった状態 - 出た数字は募集の相場であり、実際の提示条件は選考を経て決まる



