調剤や店舗の業務から、在宅医療や治験関連の領域へ移れるかという問いは、薬剤師の転職相談でよく挙がります。
ただし「未経験でも可能か」という問いに数字で答えられる材料は限られています。
ここでは、出典が確認できる需給の事実と、確認できていないことを分けたうえで、求人から自分で確かめる方法を整理します。
在宅医療は不足が続くと見られている領域
需給の偏りには出典がある
薬剤師全体の有効求人倍率は、2015年の7.18倍から2021年には2.68倍まで下がりました(出典: Method Innovation)。
全体としては求人が絞られてきた一方で、領域による差が残っています。
都市部は飽和の傾向にある一方、地方や在宅医療・病院の領域では慢性的な不足が続くと見られています(出典: ジョブジョブ)。
在宅医療は、不足が指摘されている側に名前が挙がっている領域です。
全体の数字が下がっていることと、在宅の求人が減っていることは同じではありません。
在宅対応の求人がどのくらい出ているかは、勤務地の範囲を固定して検索すれば数えられます。
全国の傾向より、自分が通える範囲の件数のほうが判断に使えます。
件数が少なければ、範囲を広げるか時間をかけて待つかという次の選択に移れます。
治験関連の需給を示すデータは確認できていない
一方で、治験に関わる領域の需給について、当サイトで出典の確認できるデータは見つかっていません。
求人数が増えているという説明を掲げている記事はありますが、集計の対象や実施主体が明示されていないものが多く、根拠として使える状態ではありませんでした。
そのため、この記事では治験関連について「求人が増えている」とも「減っている」とも書きません。
確認できていないことは確認できていないと示したうえで、応募要件から個別に確かめる方法に進みます。
求人の数そのものは、検索条件を絞れば自分で数えられます。
治験に関わる求人がどの程度出ているかは、勤務地と雇用形態を固定して検索し、件数を控えるだけで把握できます。
出典のない一般論を読むより、この数字のほうが具体的です。
未経験の評価のされ方を示す調査は見つかっていない
資格や経験がどう評価されるかの出典がない
薬剤師の資格や経験が採用の場面でどう評価されるかについても、当サイトで調べた範囲では出典の確認できる調査データは見つかりませんでした。
未経験者の採用比率を示した数字を掲げている記事は存在しますが、根拠までたどれるものではありませんでした。
このため、「未経験でも移りやすい」「未経験では難しい」のどちらの立場も取りません。
判断に使えるのは、実際に公開されている求人の応募要件です。
ここには、その求人が誰を対象にしているかが直接書かれています。
応募要件は、そのまま準備の材料にもなります。
要件に出てくる語と、自分の経歴に書ける語を突き合わせると、足りない部分がどこかが見えてきます。
書類はこの突き合わせをしながら作るほうが進みます。
必須要件と歓迎要件を分けて数える
求人票の応募要件は、多くの場合「必須」と「歓迎」に分かれています。
在宅の経験や治験関連の実務経験が、どちらに書かれているかで位置づけが分かります。
必須要件に入っていれば選考に進む条件ですが、歓迎要件であれば加点材料という扱いです。
自分が応募できる勤務地の範囲で求人を20件ほど集め、経験が必須要件に何件、歓迎要件に何件、記載がないものが何件あるかを数えます。
この作業で出てくる数字は、どこかの記事に書かれた一般論より、自分にとって正確な材料になります。
数え方は地域と業態で結果が変わるため、一般的な条件ではなく自分の希望条件で行います。
必須要件に経験が入っている求人が大半であれば、現時点では対象が限られていると判断できます。
その場合も、歓迎要件にとどめている求人が何件あるかを見ておけば候補は残ります。
ゼロかどうかを確かめてから判断するという順序にします。
在宅の求人で確認すること
訪問の形態と件数
在宅対応と一口に書かれていても、中身は求人によって違います。
訪問が個人宅中心なのか施設中心なのか、1日あたりの訪問件数がどのくらいかは、勤務の形を大きく左右する項目です。
記載がない場合は、応募前に確認しておく項目になります。
件数の目安が示されていない求人では、入職後の想定が大きくずれる可能性があります。
求人票のどこまでが書かれていて、どこから書かれていないかを意識して読みます。
訪問の担当が固定なのか輪番なのかも、確認しておくと働き方の想像がつきます。
担当が固定であれば継続的な関わりが生まれ、輪番であれば情報の引き継ぎが業務に含まれます。
どちらが向いているかは人によって違うため、事実として確認しておく項目になります。
移動の手段と範囲、緊急時の対応
訪問に使う移動手段が社用車か自転車か、担当するエリアの範囲がどのくらいかは、日々の負担に直結します。
運転が必要な求人では、免許の条件が応募要件に入っていることもあります。
あわせて、時間外の連絡当番があるかどうかは確認しておく項目です。
当番の頻度と手当の扱いは募集要項に書かれていないことも多く、面談の場で聞くほうが確実です。
訪問に出ている間の薬局側の体制も見ておく項目です。
店舗を任せられる人員がいるかどうかで、1日の組み立ては変わります。
人員体制の記載がない求人では、確認が必要な項目として控えておきます。
治験関連の求人で確認すること
職種名で募集の中身が変わる
治験に関わる仕事は複数の職種に分かれており、求人票の職種名によって業務も応募要件も変わります。
名称だけで判断せず、業務内容の欄に何が書かれているかを読む必要があります。
同じ「治験」という語が入っていても、医療機関側の業務なのか、企業側の業務なのかで求められる経験が異なります。
応募先の所属がどこになるのかは、募集要項の勤務地や雇用形態の欄から読み取れることがあります。
雇用形態が派遣や契約となっている求人もあります。
当サイトのデータでは、正社員と派遣の双方を含む複合として登録されているサービスもあるため、雇用形態を限定して探す場合はサービス側の対象もあわせて確認しておきます。
経験年数の条件があるかを見る
応募要件に経験年数の条件が入っているかどうかは、未経験から検討する場合の最初の分かれ目になります。
年数の指定がある求人は、その時点で対象が絞られています。
一方で、経験の記載がない求人や、歓迎要件にとどめている求人も存在します。
数えてみないと比率は分からないため、前述の20件を数える作業をここでも行います。
業態そのものを変える場合の考え方は薬剤師の業態変更はできる?で扱っています。
応募できる求人がすぐに見つからないこともあります。
その場合は、いまの勤務先で近い経験を積めるかを先に確認するという選択肢もあります。
在宅であれば、現在の職場で訪問に関わる機会があるかどうかが分かれ目になります。
サービス側で確認できること
面談実施型では求人票の外側を聞ける
当サイトが整理している薬剤師向けサービス12件のうち、面談の実施を伴う面談実施型は6件です。
薬剤師の派遣・転職 お仕事ラボ、ファルマスタッフ、アイリード、ヤクジョブ、MC─ファーマネット、セルワーク薬剤師が該当します。
面談を伴うサービスでは、「この領域の求人で、経験が必須になっていることはあるか」と直接尋ねることができます。
求人を日常的に扱っている相手からの回答は、一般論より具体的です。
まだ方向が決まっていない段階での相談については薬剤師は相談だけでサービスを使ってよい?で扱っています。
尋ねるときは、領域名だけでなく勤務地の範囲もあわせて伝えます。
同じ領域でも地域によって求人の出方が変わるためです。
範囲を広げれば候補が増えるのかどうかも、その場で確認できます。
対象条件を先に確認する
サービスごとに、対象となる利用者の条件は定められています。
薬剤師免許の保有を条件としているものが中心で、資格の取得見込みの方を対象に含めているサービスもあります。
なお薬剤師向け12件はすべて全国を対象としており、勤務地によって使えるサービスが変わる構成にはなっていません。
領域を変える転職では勤務地の範囲も広がりやすいため、この点は確認しておくと選択肢を狭めずに済みます。
今後の需給の見通しは薬剤師は将来的に供給過剰になる?にまとめています。
まとめ
- 在宅医療は不足が続くと見られる領域に含まれる。
治験関連の需給を示す出典は確認できていない - 未経験がどう評価されるかを示す、出典の確認できる調査は見つかっていない
- 判断材料になるのは求人の応募要件。
必須要件と歓迎要件を20件分数える - 在宅は訪問の形態と件数、治験関連は職種名と経験年数の条件を確認する
- 面談実施型6件では、求人票に書かれていない扱われ方を直接尋ねられる



