ITエンジニアの求人を眺めていると、勤務地の欄が東京で埋まっていくことに気づきます。
地方に住んでいる場合、転職サービスに登録しても紹介できる求人がないのではないか、という不安が先に来ます。
ここでは、当サイトが扱うITエンジニア向けサービスの対応地域を実際に数え、地方から探すときに何を確認すればよいかを整理します。

求人が都市部に集まる理由と、集まらない部分

不足しているのは先端領域の人材

経済産業省の試算では、IT人材の需要が中位から高位で伸びた場合、2030年に最大約79万人が不足するとされています(出典: 日本経済新聞)。
不足はAI・クラウド・セキュリティといった先端領域に偏っており、基礎的な領域の供給はむしろ増えています(出典: コエテコキャンパス)。

先端領域に投資している企業は都市部に本社を置いていることが多く、その募集も都市部に集まります。
不足の偏りが、そのまま求人の地理的な偏りとして現れるという関係です。

高い求人倍率は全国を単位にした数字

2026年6月時点で、IT人材の転職求人倍率は9.1倍という水準にあります(出典: レバテック株式会社)。
この数字は全国を一つの単位として集計されたもので、都道府県ごとの内訳を示すものではありません。

倍率が高いことと、自分の住む市で応募できる求人があることは別の話です。
全国の数字を自分の状況に読み替えないところから始めます。
市場全体の動きはIT人材は不足している?にまとめています。

業務システムの担い手は地方にもいる

一方で、ITの仕事がすべて都市部にあるわけではありません。
地方の製造業・金融機関・自治体・病院にも情報システムを担う部署があり、その運用を請け負う地元のシステム会社があります。
自社開発のWebサービスを東京で探すのと、地元企業の業務システムを担当するのとでは、見る求人がまったく違います。

どの領域で探すかを決めていないと、地域の問題と領域の問題が混ざります。
「地方には求人がない」と感じている状態には、この2つが同時に含まれていることがあります。

57件のうち7件が地域限定

地域が限定されている7件の内訳

当サイトが扱うITエンジニア向けサービスは57件です。
このうち、対応地域が限定されているものは7件でした。
内訳は次のとおりです。

サービス 進み方 対応地域
ユニゾンキャリア 面談実施型 東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪
ユニゾンキャリア転職 面談実施型 東京・神奈川・埼玉・千葉
TECH-BASE 申込型 東京・神奈川・埼玉・千葉
キャリアカンパニー 面談実施型 東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪
就労移行支援manaby 申込型 宮城・山形・福島・茨城・埼玉・千葉・東京・神奈川・京都・大阪・兵庫・鹿児島(12県)
IT転職エージェント@PRO人 面談実施型 東京・神奈川・埼玉・千葉
IT専門転職エージェント@PRO人 面談実施型 東京・神奈川・埼玉・千葉

7件のうち5件が一都三県を中心とした範囲で、うち2件が大阪を加えた形です。
就労移行支援manabyだけが東北や九州を含んでおり、これは就労移行支援という枠組みで提供されているサービスにあたります。

7件を重ねても12都府県にとどまる

この7件の対応地域を重ね合わせると、宮城・山形・福島・茨城・埼玉・千葉・東京・神奈川・京都・大阪・兵庫・鹿児島の12都府県になります。
manabyの対象地域が他の6件をすべて含んでいるため、合計しても数が増えません。

裏を返すと、残る35道府県は地域限定サービスの対象に一つも入っていません。
北海道・愛知・福岡といった、IT企業の集積があるとされる地域も含まれていない点は見落とされがちです。
札幌・名古屋・福岡で探す場合でも、地域を絞ったサービスが候補に上がるわけではありません。

残る50件は全国対応

一方、57件のうち50件は全国を対象としています。
数のうえでは、地方在住から選べる候補が極端に少ないわけではありません。
地域限定のサービスは、選択肢の中では少数側にあたります。

したがって、地方で考えるべきことは「使えるサービスがあるか」ではなく、全国対応の50件をどう絞り込むかになります。
地域の条件の一般的な見方は転職サービスは地方でも使える?にまとめています。

「全国対応」の読み方

掲載している範囲と紹介できる範囲は違う

全国対応と表示されていても、担当者が付いて紹介できる範囲は別のことがあります。
拠点のある地域では求人の厚みがあり、拠点から遠い地域では扱いが薄くなる、という差が出ます。

対応地域の表示は「対象外ではない」ことの確認には使えますが、「自分の市に求人がある」ことの確認には足りません。
この差を埋めるのは、登録後に自分で数えた件数です。

対象が居住地か勤務希望地かを確認する

対応地域が何を指しているかも確認が要ります。
住んでいる場所を指す場合と、働きたい場所を指す場合があります。
地方に住んだまま首都圏の求人に応募したい場合、この扱いによって候補に入るサービスの数が変わります。

判断の基準になるのは現住所ではなく、どこで働きたいかです。
ここが決まっていないと、対応地域の欄を読んでも自分が対象かどうかを判定できません。

リモート可の求人は対応地域の欄に出てこない

勤務地を変えずに働きたい場合、対応地域よりも、リモート可の求人をどれだけ扱っているかが判断材料になります。
この情報は対応地域の表示には現れないため、求人検索の条件で確かめます。

登録型のサービスであれば、会員登録の時点で件数を自分で数えられます。
数えたうえで、扱いの少ないサービスは候補から外すという判断ができます。
登録型の使い方はITエンジニアは面談なしで転職活動できる?で扱っています。

件数は条件をそろえて数える

希望地域の件数を数えるとき、検索条件がそろっていないとサービス間の比較になりません。
都道府県・職種・雇用形態・リモートの可否を同じ設定にしてから件数を見ます。

そのうえで、同じ求人が複数のサービスに載っていることも織り込みます。
会社名と職種名が一致するものを1件として数え直すと、実際に選べる候補の数に近づきます。
数えた結果は日付とともに残しておくと、時期による増減も分かります。

地方から取る3つの進め方

通える範囲で探す

自宅から通勤できる範囲で探す進め方です。
地元のシステム会社や、事業会社の情報システム部門が対象になります。
求人の絶対数は都市部より少なくなりますが、応募する側も限られるため、競争の構造が違います。

この場合、IT特化のサービスだけでなく、その地域の求人を扱う一般的な媒体も併せて見ます。
掲載費用をかけずに募集している企業もあるため、経路を1つに絞ると候補が出そろいません。

地元の企業は、求人サイトへの掲載を通年で行っていないことがあります。
自社の採用ページだけで募集している場合もあるため、気になる会社は直接ページを見に行くほうが早いことがあります。

リモート可の求人で探す

住む場所を変えずに、都市部の企業に所属する進め方です。
ただし、リモートを認めるかどうかは会社ごとの方針であり、求人票の記載を個別に確認するしかありません。

出社の頻度、打ち合わせの形、入社直後の扱いは求人ごとに違います。
「リモート可」と書かれていても、月に数回の出社が前提になっていることがあります。
面談を伴うサービスであれば、この点は担当者に尋ねられます。

求人票でリモートの記載を見るときは、対象になる条件も確認します。
入社後の一定期間は出社、職種によって可否が分かれる、といった但し書きが備考欄に入っていることがあります。
備考欄の読み方は求人票のどこを読むかにまとめています。

都市部への移動を前提にする

勤務地を都市部に移す進め方です。
対象になる求人が最も多く、前掲の地域限定7件も候補に入ります。
一方で、住居や家族の事情という仕事以外の条件が絡みます。

この場合、いつまでに移れるかを先に決めておきます。
入社できる時期は選考の過程で聞かれる項目にあたり、答えが決まっていないと話が進みません。

登録する前に決めておくこと

3つのうちどれを軸にするかを先に決める

通う・リモート・移動のどれを軸にするかで、見るべき求人も登録すべきサービスも変わります。
決めないまま登録すると、対応地域の合わないサービスに登録したり、リモート求人をほとんど扱わないサービスで時間を使ったりすることになります。

途中で変えても構いません。
ただし決めていない状態で複数に登録すると、提示される求人がばらつき、比較の基準が作れなくなります。

全国対応の登録型で母数を作る

まず全国対応の登録型で求人の絶対数を確保し、自分の希望地域で何件出るかを数えます。
複数を並行して見ると、同じ地域でも扱っている求人が違うことが分かります。
1社だけを見ていると、そのサービスの在庫が地域の相場だと感じてしまいます。

そのうえで、希望勤務地が前掲の7件の対象に含まれていれば、地域を絞ったサービスも候補に加えます。
範囲を限定しているぶん、その地域の企業とのつながりが相対的に強いことがあります。
運営会社の確認方法は大手が運営するITエンジニア転職サービスにまとめています。

提示される条件は地域ごとに見る

同じ職種でも、募集の条件は地域によって変わります。
都市部の提示額を基準にして地方の求人を並べると、どれも見劣りして見えます。
一方で、住居費をはじめとする生活の費用も地域で違います。

比べるなら、勤務地ごとに求人を集め、その中で幅を見ます。
提示された額をどう分解して読むかは転職で年収は上がる?にまとめています。
地域をまたいで1つの物差しを当てないようにすると、判断の材料が整います。

まとめ

  • ITエンジニア向けサービス57件のうち、地域限定は7件で、残る50件は全国対応
  • 7件の対応地域を重ねても12都府県にとどまり、35道府県は地域限定サービスの対象に入らない
  • 名古屋・福岡・札幌のようにIT企業の集積がある都市も、地域限定サービスの対象には含まれていない
  • 「全国対応」でも紹介できる範囲は拠点に左右されるため、登録後に希望地域の件数を数える
  • 通う・リモート・移動のどれを軸にするかを先に決めてから、サービスを選ぶ