内定が出た後に、他社の選考をすべて辞退するよう求められる。
承諾書にその場で署名するよう促される。
辞退を伝えたら違約金の話を持ち出される。
こうした行為は「オワハラ(就活終われハラスメント)」と呼ばれています。
ここでは、どういう行為がそう呼ばれているのかを整理し、内定と労働契約の関係、そして求められたときに何をすればよいのかをまとめます。
この記事は制度と条文の紹介にとどめ、個別の事案がどう扱われるかの判断には踏み込みません。
相談できる窓口は最後にまとめています。
辞退そのものの伝え方は内定を辞退するときの伝え方で扱っており、この記事は辞退を妨げられた場合に絞ります。
どういう行為がそう呼ばれているか
主な類型
呼び名は一つですが、実際に起きている行為はいくつかに分かれます。
| 類型 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 他社の辞退を求める | 内定の条件として、他社の選考をすべて辞退するよう求める |
| その場での確約を求める | 承諾書への署名や、口頭での入社の確約をその場で求める |
| 時間を拘束する | 他社の選考日に研修や面談を設定し、参加を強く促す |
| 金銭を持ち出す | 辞退した場合に違約金や、かかった費用の返還を求めると伝える |
| 連絡を繰り返す | 辞退の意思を伝えた後も、翻意を求める連絡が続く |
共通しているのは、判断する時間と選択肢を狭めるという点です。
行為の種類が違っても、この一点は変わりません。
「圧力」と「確認」の境目
企業が入社の意思を確認すること自体は、通常の採用活動の一部です。
採用の計画を立てるうえで、辞退の可能性を把握する必要があるためです。
分かれるのは、確認にとどまるか、判断を強いるかです。
回答の期限を示して待つのは確認、その場で答えないと内定を取り消すと伝えるのは別のものになります。
期限を切ること自体が問題なのではなく、期限までの間に他社を検討する余地が残っているかが違いになります。
就職エージェントが主体になる場合がある
この行為の主体は企業だけではありません。
読売新聞は2026年5月10日、就職エージェントによるオワハラが多発しており、違約金の請求事例もあると報じています(出典: 読売新聞 2026年5月10日)。
当サイトは転職・就活サービスを紹介する立場ですが、この点は伏せずに扱います。
紹介する側にも、決めてほしいという力が働きうるという構造があるためです。
次の節でその仕組みを見ます。
なぜ紹介する側にも力が働くのか
人材紹介は、求職者から手数料を取らない代わりに、採用が決まった時点で企業側が費用を負担する仕組みで成り立っています。
求職者から手数料を取ることは職業安定法で原則として禁じられています(出典: マイナビ転職)。
この仕組み自体は制度に基づくもので、問題があるわけではありません。
ただし、費用が発生するのが「決まったとき」である以上、決まらないと収益にならないという構造は残ります。
構造を知っておくと、強く勧められたときにその背景を理解したうえで判断できます。
無料である理由の詳細は転職支援はすべて無料?にまとめています。
内定と労働契約の関係
内定は契約として扱われるのが一般的な整理
内定は、単なる入社の約束ではなく、労働契約が成立した状態として扱われるのが一般的な説明です。
入社日を始期とし、一定の事由がある場合に解約する権利を企業側が留保している契約、という形で整理されます。
契約として扱われるということは、契約に関する法律の考え方が及ぶということでもあります。
個別の事案がどう扱われるかは、やり取りの内容や事情によって変わります。
期間の定めのない雇用の解約について
民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用について、各当事者がいつでも解約の申入れをすることができ、申入れの日から2週間の経過によって雇用が終了する旨を定めています。
この条文が個別の内定辞退にどう及ぶかは、契約の内容や状況によって変わります。
ここでは条文の内容を紹介するにとどめます。
違約金についての定め
金銭の話を持ち出された場合に関係するのが、労働基準法第16条です。
この条文は、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ定める契約をしたりしてはならない旨を規定しています。
条文としてこうした定めが置かれているという事実は、金銭を求められた場面で知っておく価値があります。
ただし、具体的な請求が適法かどうかは事情によって変わるため、実際に請求を受けた場合は後述の窓口に相談してください。
求められたときにできること
その場で署名も確約もしない
最も実務的な対応は、その場で決めないことです。
署名を求められた場合も、口頭で確約を求められた場合も、持ち帰ると伝えます。
「重要なことなので、持ち帰って検討します」で足ります。
理由を細かく説明する必要はなく、説明を増やすほど、その内容に対する反論が返ってきます。
期限を日付で確認する
「今日中に」「すぐに」と言われた場合、回答の期限がいつなのかを日付で確認します。
書面に期限が書かれているなら、その日付を読みます。
期限の確認は、断ることでも受けることでもありません。
判断のための時間がどれだけあるかを把握する作業です。
日付が示されない場合は、こちらから「◯月◯日までに回答します」と伝える形もあります。
やり取りを記録に残す
日時、相手の氏名と所属、言われた内容を、その日のうちに書き留めます。
メールやメッセージでのやり取りは残しておきます。
電話で言われた内容は、後から「そんなことは言っていない」となりやすい部分です。
通話の後に「本日お話しいただいた内容を確認させてください」とメールを送ると、記録として残ります。
記録は争うためではなく、相談するときに必要になります。
辞退を伝える文面は短くする
辞退すると決めたなら、伝える内容は結論と感謝の2つで足ります。
理由を詳しく述べると、その内容に対する再提案や反論が返ってきます。
引き止めや再提示が返ってきた場合は、相手の言い分を否定しないまま結論だけを繰り返します。
文面の型と手順は内定を辞退するときの伝え方にまとめています。
相談できる窓口
大学のキャリアセンター
在学中であれば、まず大学のキャリアセンターが相談先になります。
同じ企業について過去に相談が寄せられている場合、状況を把握していることがあります。
大学から企業へ働きかけが行われることもあります。
個人で対応するより、窓口を通したほうが動きやすい場面があります。
新卒応援ハローワークと労働局
厚生労働省が設置する新卒応援ハローワークは、学生と既卒者の就職支援を行う公的な窓口です。
就職活動全般の相談を受け付けています。
労働条件や採用に関するトラブルについては、都道府県労働局の総合労働相談コーナーが相談窓口になっています。
いずれも無料で利用できます。
法的な判断が必要な場合
違約金の請求を受けた場合など、法的な判断が必要な場面では、弁護士に相談する選択肢があります。
日本司法支援センター(法テラス)では、相談先の案内を行っています。
この記事は条文と制度の紹介にとどまります。
個別の事案の見通しについては、上記の窓口で相談してください。
サービスの使い方で減らせること
経路を一つに絞らない
一つの経路だけで就職活動を進めると、そこで強く勧められたときに比較の材料がありません。
複数の経路を持っておくと、提示された条件が妥当かどうかを自分で判断できます。
当サイトのデータでは、OfferBox、Lognavi、就活会議、Matcherが登録型で、いずれも全国が対象です。
OfferBoxは2027年・2028年卒業予定の学生に加えて、卒業後1年以内の既卒学生を対象としています。
就活会議は2026年卒から2029年卒までの学生、Matcherは学生が対象です。
登録型と面談型で関わり方が違う
サービスは、会員登録の時点から使い始められる登録型と、面談やイベントへの参加を前提とする型に分かれます。
登録型は自分の時間で進められる一方、面談型は日程を合わせる必要があります。
当サイトのデータでは、エノサポ就活とMeets Companyが面談実施型、みん就と上京塾が申込型です。
上京塾は就活予定または就活中の大学生と、大学卒業後3年以内の人を対象に含めています。
人と話す形のサービスほど、関わりが深くなる分だけ勧められる度合いも強くなりやすいという点は、前提として知っておくと判断しやすくなります。
合わないと感じたら使うのをやめてよい
サービスは途中で入れ替えられます。
担当者との関係が続くと辞めにくく感じますが、利用を続ける義務はありません。
登録先だけ増えて中身が薄い状態も結果につながらないため、まず2〜3社に絞り、それぞれの登録内容を埋めきってから追加を検討する形が実務的です。
サービスの分類と全体像は新卒・第二新卒の就活市場はいま?、動き出す時期の考え方は就活・転職はいつ動けばよいかにまとめています。
まとめ
- オワハラと呼ばれる行為に共通するのは、判断する時間と選択肢を狭めるという点
- 期限を切ること自体ではなく、他社を検討する余地が残っているかが確認と圧力を分ける
- 就職エージェントが主体になる事例が報道されており、紹介する側にも決めてほしい力が働きうる
- 内定は労働契約として扱われるのが一般的な整理で、民法627条1項が解約の申入れについて定めている
- 労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めることを禁じている
- その場で署名も確約もせず、期限を日付で確認し、やり取りを記録に残す
- 相談先は大学のキャリアセンター、新卒応援ハローワーク、総合労働相談コーナー、法テラスなど



