「AWSの資格を取れば転職で有利になるのか」という問いは、ITエンジニアの学習計画でよく出てきます。
取得には時間も受験料もかかるため、効果を知ってから始めたいと考えるのは自然なことです。
ただし、この問いに数字で答えられる材料は限られています。
ここでは、確認できていないことを確認できていないと明示したうえで、代わりに何を見れば判断できるのかを整理します。

資格の評価について、出典のある調査は確認できていない

「有利になる」と断定できる根拠が見つからない

当サイトで調べた範囲では、ITエンジニアの資格が採用の場面でどう評価されるかを示す、出典の確認できる調査データは見つかっていません。
資格保有者の内定率や年収差を示した数字を掲げている記事は存在しますが、調査の実施主体や対象人数が明示されていないものが多く、根拠として使える状態ではありませんでした。

そのため、この記事では「資格があれば有利」「資格は意味がない」のどちらの立場も取りません。
根拠のない数字を並べるより、確認できる事実だけを示すほうが判断の役に立つと考えています。
以下では、出典が確認できるデータと、自分で確かめられる方法に絞って整理します。

代わりに確認できるのは需給の偏りと求人票

数字として確認できるのは、どの技術領域の人材が不足しているかという需給の状況です。
また、個々の企業が何を求めているかは、公開されている求人票の応募要件から直接読み取れます。
この2つは、資格の効果を推測するよりもはるかに具体的な材料になります。

クラウド領域の需要には出典がある

不足しているのは先端領域の人材

経済産業省の試算では、IT人材の需要が中位から高位で伸びた場合、2030年に最大約79万人が不足するとされています(出典: 日本経済新聞)。
ここで重要なのは総量ではなく、その内訳です。

不足しているのはAI・クラウド・セキュリティといった先端領域に対応できる人材で、基礎的なプログラミングができる人材はむしろ供給が増えています(出典: コエテコキャンパス)。
クラウドはこの不足している側に含まれる領域です。
AWSはクラウドサービスの一つであり、その意味では需要の厚い領域を扱っていると言えます。

資格そのものではなく、領域の需要を見る

ここで区別しておきたいのは、「クラウド領域の人材が不足している」ことと「クラウドの資格が評価される」ことは同じではないという点です。
前者には出典がありますが、後者には確認できる根拠がありません。

したがって、資格を取るかどうかを考えるときは、資格の効果を推測するのではなく、その資格が対応する技術領域に需要があるかどうかを判断基準にするほうが確実です。
需要のある領域に取り組むこと自体は、資格の有無にかかわらず意味を持ちます。
市場全体の状況はIT人材は不足している?にまとめています。

資格が実際にどう扱われるかを確かめる方法

必須要件と歓迎要件を分けて読む

求人票の応募要件は、多くの場合「必須」と「歓迎」に分かれています。
資格名がどちらに書かれているかで、その企業における位置づけが分かります。
必須要件に入っていれば選考に進む条件ですが、歓迎要件であれば加点材料という扱いです。

自分が応募したい地域と技術領域で求人を20件ほど集め、資格名が必須要件に何件、歓迎要件に何件、まったく記載がないものが何件あるかを数えてみます。
この作業で得られる数字は、どこかの記事に書かれた一般論より、自分にとって正確な判断材料になります。
数え方は技術領域ごとに結果が変わるため、一般的な条件ではなく自分の希望条件で行います。

資格手当の記載を確認する

募集要項の待遇欄に、特定の資格に対する手当が記載されている場合があります。
金額まで明記されていれば、その企業がその資格をどう位置づけているかが直接読み取れます。
記載がない企業も多いため、あるかないかを含めて確認する価値があります。

手当の有無は企業ごとに大きく違うため、「業界としてこう」とまとめることはできません。
応募を検討している企業について個別に見るという前提で確認します。

面談型のサービスで直接聞く

面談を伴うサービスであれば、担当者に「この領域の求人で、この資格が要件に入っていることはあるか」と直接尋ねることができます。
求人を日常的に扱っている相手から得られる回答は、一般論より具体的です。

当サイトのデータでは、メイテックネクスト、エンワールド・ジャパン、ウズカレエージェントはいずれも面談実施型で、対応地域は全国です。
ユニゾンキャリアも面談実施型ですが、対象年齢が20〜39歳、希望勤務地が一都三県と大阪府に限られています。
面談型は時間の確保が必要になる一方で、求人票に書かれていない部分を聞ける点が利点になります。

資格を学習の設計に使うという考え方

学習の順序が決まっているという利点

資格には出題範囲が定められています。
何を学ぶかを自分で組み立てる必要がなく、順序に沿って進められるという点は、独学の途中で迷いにくくなるという実務的な利点です。
これは採用での評価とは別の話ですが、学習を進めるうえでは意味があります。

特に未経験や別領域からの移行では、何から手をつけるかで時間を消費しがちです。
範囲が定義されているものを一つの軸に据えると、進捗が測れるようになります。
未経験から目指す場合の進め方は文系・未経験からITエンジニアになれる?で整理しています。

AWSに絞った講座型のサービスがある

当サイトで整理しているデータでは、ウズウズカレッジAWSコースが申込型のサービスとして掲載されています。
無料のオンライン説明会から利用が始まる形で、対象はAWSコースに限定され、対象年齢は35歳以下と定められています。

特定の領域に絞った講座型のサービスは、学習の順序があらかじめ設計されているという点で、独学とは進み方が異なります。
ただし対象条件があるため、自分が当てはまるかどうかを先に確認しておく必要があります。

資格を取る前に決めておくこと

何のために取るのかを一つに絞る

「転職で有利になるかもしれないから」という理由だけで始めると、途中で優先度が下がりやすくなります。
学習の順序を作るためなのか、業務で使う技術を体系的に整理するためなのか、目的を一つに定めておくほうが最後まで進みます。

前述のとおり、転職での評価については確認できる根拠がありません。
評価されるかどうかが不確かな目的を、学習の唯一の理由に置かないほうが安全です。

実務での使用歴と並べて書けるか

書類に資格名だけを書くより、その技術を実際にどこで使ったかを並べて書けるほうが、読み手に伝わる情報量は増えます。
資格を取る過程で作ったものや、業務で触れた構成を一緒に説明できる状態を目指すと、資格そのものの評価に依存しない材料が手元に残ります。

AIの普及によって求められる技術がどう変わっているかはAIでエンジニアの仕事は減る?で扱っています。
学習する領域を選ぶ段階で、あわせて確認しておくと判断材料が増えます。

まとめ

  • ITエンジニアの資格が採用でどう評価されるかを示す、出典の確認できる調査は見つかっていない
  • 確認できるのは、AI・クラウド・セキュリティといった先端領域の人材が不足しているという事実
  • 資格の効果を推測するより、求人票の必須要件と歓迎要件を数えるほうが具体的に判断できる
  • 面談型のサービスでは、求人票に書かれていない扱われ方を直接尋ねられる
  • 資格は学習の順序を作る道具として使い、評価されるかどうかを唯一の目的にしない